表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1275/2853

第千二百七十三話 後背に立つ男

 サタンの眼前の揺らめきが、直径二十M程の大きさとなった時、周囲の空間との軋轢からか、雷のようなものが幾条も走り出した。


 そしてその数がやがて、同時に数十条ほども走り出した頃、ついに揺らめきの中心部に亀裂が走った。


 そしてその亀裂は、大きな地響きを立てつつ大きくなったかと思うと、その内側から純白の優雅なローブを身に纏った男が現われたのだった。


「久し振りだな……ルキフェル……」


 サタンが苦々しげに呟いた。


 するとルキフェルと呼ばれた男が、実にさわやかに返答した。


「やあサタン、久し振りだね」


 両者のあまりにも対照的な声色に、カルラは驚きを禁じ得なかった。


(……勝者と敗者の差というわけか……それにしても神とはなんと……美しいことか……)


 カルラはルキフェルのあまりにも美しい姿形に思わず息を呑んだ。


 だがさすがは百戦錬磨のカルラだけあって、すぐに気を取り直してルキフェルに言ったのだった。


「すまないが!ガイウスの様子がおかしい!なんとかしてもらえないだろうか!?」


 足下からの叫びに、ルキフェルが柔和な表情を浮かべながら応じた。


「ああ、そうだったね。すまない。すぐにやろう」


 ルキフェルはそう言うと、柔和な笑顔を浮かべたまま、静かに下降し始めたのだった。


 そして苦しそうに横たわるガイウスの横にスックと降り立つと、右手をガイウスの顔に向けてかざした。


 すると、途端にガイウスの痙攣がピタリと止まった。


 ガイウスはキョトンとした表情を浮かべ、しばしの間ジッと一点を見つめていたものの、すぐに痙攣が治まったことを理解して、ようやく身体を起こしたのだった。


「……おろ?治った?……」


 ガイウスの少々間の抜けた物言いに、カルラが苦笑混じりに言った。


「……緊張感のかけらもないな……まったく……」


 するとガイウスは心外とばかりに返答をした。


「いや、そんなこと言われてもさあ……なんか突然身体が震え出しちゃって、ちょっとパニックになっちゃったんだよ……」


「それは判っている。見ていたのでな」


「いや~焦ったよ。でもまあ、何にしても助かった。カルラが治してくれたの?」


 カルラは大きくかぶりを振った。


「いや、わたしではない。後ろの御仁だ」


 カルラが、ガイウスのすぐ後ろを顎で指し示した。


 ガイウスは怪訝な表情を浮かべ、ブツブツと呟きながら後ろを振り返った。


「え?カルラじゃないのか……てことは、サタンが?…………!!!」


 ガイウスは自らの後背に立つ男の顔を見て、ギョッとした表情となるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=46484825&si
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ