第千二百五十二話 喧嘩を売る
「さて……ではお前は先程の出来事を、ほとんど全て見ていたというわけだな?」
カルラはゆったりとした口調でもってガイウスに尋ねた。
ガイウスはうなずき、すぐさま返答をした。
「そうだよ。一番初めのクリードの冒頭以外はね」
「そうだったな。では……お前がそのポテンシャルをまったく活かしていないと、アウグロスが言ったところは、当然聞いていたのだな?」
するとガイウスが途端に頬をピクピクと引き攣らせた。
「……ま、まあね……」
するとカルラが、意外にもやさしげに話しかけた。
「まあ、そう緊張するな。どうやら荒療治ではポテンシャルを充分に引き出すことは出来ないようなのでな」
するとガイウスの顔が途端にパーッと明るく晴れやかになった。
「ほんと!?それは素晴らしい!!うん。実に素敵な決断だね!」
実にわかりやすく喜ぶガイウスに、横合いからデルキアが突っ込みを入れた。
「浮かれすぎだぞ貴様!いつもいつも楽をすることばかり考えるな!」
デルキアの叱咤に、ガイウスがすぐさま縮み上がった。
「……いや、別に浮かれたわけじゃ……」
「何を言うか!完全に浮かれきっていたじゃないか!」
「……そうかなあ?……そんなでもなかったような気が……」
「お前、このわたしに喧嘩を売っているのか!?」
この期に及んで、ガイウスがついに全面的に降伏をした。
「……喧嘩を売る気なんて滅相もない……申し訳ありませんでした……」
するとようやく機嫌を直したのか、デルキアがふんぞり返って言った。
「最初から素直にそう言っていればいいんだ!だがまあいい、ゆるしてやる!」
デルキアの独りよがりな赦しを得て、ガイウスは頬を引き攣らせたままうなずいた。
「……ああ、どうもありがとうございます……」
すると再びカルラが話しを本題に戻そうとした。
「まあいいだろう。とにかくどうやら特訓ではお前のポテンシャルは引き出せないようだ」
カルラはそう言うと、ガイウスを改めてじっくりと見た。
ガイウスはその視線を浴びてソワソワし始めた。
「……うん?……な、なに?……」
「いや、やはり当初の目的通り、サタンの元に赴くのがいいのだろうと思ってな」
すると傍らのカリンが同意した。
「そうね。そうしましょう。じゃあそうとなったら早速出発しましょ?」
かなり話が早いカリンに対して、デルキアが反論した。
「おい、ちょっと待て。本当にそれでいいのか?」
「いいに決まっているじゃない。サタンだったらガイウスに対して手加減なんてするわけないしね」
カリンはそう言うと、ニヤリと悪魔的な微笑を口元に湛えるのであった。




