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第千二百三十話 瓦礫の下

「くっ!やり過ぎたか!」


 『三人目』は自らの力の暴走による結果を目の当たりにし、ほんのわずか反省した。


 だが反省するのもほんの一瞬のことであり、まずは自らの身の安全を図ろうとオーラを全開にして跳んだ。


 すると瞬く間に『三人目』は建物の外へと飛び出し、難を逃れた。


 館が崩落するのはそのわずか数秒後のことであった。


 大黒柱を失った館は、まずは大ホールの天井が落下し、次にその衝撃によって柱という柱に亀裂が走り、連鎖的に様々な部屋の屋根が崩落していった。


 そして壁という壁も屋根の落下によって紙くずのように崩れ去り、館の半分ほどが瞬く間に完全崩落したのであった。


「……ふん。半分残ったか。結構頑丈な作りの家だな」


 『三人目』はこの館が地獄の大公爵アスタロトの館であることなど露知らず、のたまった。


 すると崩落した屋根の下から地獄の亡者の如き声がこだました。


「なにをしやがるんだ、こらーーーーーー!!!」


 声の主はデルキアであった。


 デルキアは自らの身体の上に乗っかった瓦礫の山を一瞬の内に吹き飛ばすと、顔面に血を滴らせながらゆっくりと立ち上がったのだった。


 そして『三人目』の姿をその視線で捉えると、鬼の形相もかくやという顔でもって唸り声をあげるのであった。


「ぐおらああああああああ!!!!てめえがやったのかぐおらあああああああああ!!!」


 するとその横の瓦礫が途端に吹き飛んだ。


 そしてその下から、デルキアとそっくりな可愛らしい顔を真っ赤な鮮血で濡らしたカリンが現われたのであった。


「……へえ……あいつ?……あいつがわたしの顔を血で染めたってわけね?……」


 カリンはこれ以上ないというくらいに目を据わらせた状態で『三人目』を睨み付けた。


「ああ。どうやらそのようだぜカリン」


 デルキアがカリンを見ずに、『三人目』だけを視線に捉えながら言った。


 するとカリンも傍らのデルキアに一瞥もくれずに『三人目』を睨み据えながら答えた。


「そう……そうなの。わかったわ……デルキア。手を組みましょうよ。いいでしょう?」


「ああ、いいだろう。わたしたちの顔を血で染めるなんて……よくもやってくれたものだ。おかけでお前、珍しいものが見られるぜ?」


「そうね。わたしたちが本当に手を組んで戦うなんて中々ないものね……ありがたく思って欲しいわね」


「そうだな。わたしとお前が手を組むのは……そういえばつい最近あったような……」


 するとカリンがデルキアの言葉を瞬時に遮った。


「細かいことはいいのよデルキア。ともかく……やるわよ」


「ああそうだな。こまかいことなんてどうでもいいな。よし……やろうぜ」


 二人は言うや獣の如く腰を落とし、すぐさま戦闘態勢に入るのであった。

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