第千二百十三話 圧力
「まあとりあえず飛び込め。そうすればおそらく一石二鳥となるだろうさ」
カルラが軽めに言った。
ガイウスは頬を引き攣らせながらも、一応反駁を試みた。
「とりあえずとか、おそらくとかで飛び込めないって言ってんだよ。もっと根拠というか、そういうのを示してくれないと……それに一石二鳥ってなんのことだよ?」
「相変わらずごちゃごちゃとうるさい奴だな」
「いや、ごちゃごちゃと言いたくもなるさ。冗談じゃないよまったく、とんだ自殺行為なんだぜ?判ってんの?」
「大丈夫だ。お前はそう簡単には死なんよ」
「……いや、だから根拠をね……」
「そんなものはない。だがお前が全力で防御壁を築けば、おそらくあのエネルギー波と相殺になるだろうさ」
「……本当に?……」
「ああ、そしておそらくは……お前も気を失うだろうさ」
ガイウスはここでようやくカルラの言う一石二鳥の意味を悟った。
「……そういうこと……つまりエネルギー波を相殺した挙げ句に俺が気絶して、アウグロスたちを呼び出そうって魂胆か?」
するとカルラが口角を上げてニヤリと笑った。
「その通りだ。よく判ったな?」
ガイウスは思わず天を見上げた。
「そんな都合良く行くと思ってんの?」
するとカルラがさらに口角を上げた。
「ああ。丁度いいくらいだと思うぞ?」
するとガイウスが眼下の凄まじい熱量のエネルギー波を見下ろし、考えた。
「……まあ、確かに……そんな気がしないでもないけど……」
「そうだろ?ならとっとと飛び込め。いい加減そろそろ二人ともエネルギーが尽きる頃だろうからな」
ガイウスはハッとした顔付きとなった。
「えっ!?じゃあこのまま放って置いたら自然に止むの?だったら……」
「いいからやれ。本来の目的はアウグロスたちを呼び出すことなのだからな。ほら、とっとと行かんか」
カルラがガイウスを急かすように顎で指示した。
ガイウスは心底嫌そうな顔をして再び眼下を眺めた。
「……まじであの中に飛び込むのかよ……本当に大丈夫なんだろうなあ……」
「いつまでもグジグジと言ってんじゃない!とっとと行け!」
カルラがついにイライラを募らせ怒り始めた。
ガイウスは嫌そうな顔の上に深く大きな影を射して、これ以上ないというくらいのどんよりとした表情となった。
だが時間が経つにつれカルラの圧力はどんどんと大きくなっていった。
「……お前、いつになったら飛び込むつもりだ?わたしが早くしろと言っているのが聞こえないのかい?」
そのためついにガイウスは覚悟を決めて、凄まじいエネルギー波の渦の中に飛び込む決心を固めるのであった。




