第千二百九話 本当の激突
「ほう~お前まだ寝る前にミルク飲んでんのか?ガキだな」
デルキアが悪魔的な笑みを湛えながらカリンに対して噛みついた。
すると当然のようにカリンが反発したのだった。
「普段は飲んでないわよ!この時間だから言っただけじゃない!」
「本当か~?今の言い方は慣れている言い方だったぞ?実は普段も寝る前にミルク飲んでるんじゃないのか~?」
デルキアがとても嫌みったらしく、カリンの顔を下から覗き込むようにして言った。
するとカリンが顔を真っ赤にして怒鳴った。
「飲んでないって言っているじゃない!」
だがこの激怒に対して、デルキアがさらに笑みを強くした。
「怪しいな~?普通そんなに怒るか~?いや~怒らないよな~。本当は飲んでないんだったら、もっと冷静に『飲まないわよ』っていつものように冷たく言い捨てるんじゃないかな~?なのに『飲んでないって言っているじゃない!』だってさ。プププ」
デルキアが勝ち誇った様に、含み笑いをしながら言い放った。
するとカリンの怒りが頂点に達した。
「ぶち殺す!」
カリンはノーモーションで自身最大級の攻撃魔法をデルキアに対して繰り出した。
だが対するデルキアも、カリンとの付き合いが長いせいか完全に予測していたようで、すぐさま反撃に転じた。
「食らえっ!」
両者の最大級の攻撃魔法は至近距離で激しく衝突し、さながら小型の爆弾が破裂したかのような衝撃を辺りに発した。
「まじかよっ!?」
ガイウスは、突如始まった超強力な姉妹喧嘩に対して驚くと同時に自らの安全を危ぶみ、咄嗟に横っ飛びに跳ねると、すぐさま魔法を発動して凄まじい勢いで飛んで部屋の隅に避難した。
カルラも同様にすばやく飛んで避難を開始すると同時に、二人に対して大音声でもって声を掛けた。
「やめんか!二人とも!」
だが当然両者に聞く耳があるはずもなかった。
そのためこの両者の激突はさらにヒートアップするのであった。
「死ねーーーーーーー!」
カリンが怒り心頭に発したと言わんばかりに、凄まじい面相でもって叫んだ。
すると対するデルキアも、鬼の形相でもってこれに応じた。
「お前が死ねーーーーーーー!」
二人の激突はこれまでとは異なり相当に大規模なものとなり、広大なアスタロト邸のもっとも大きなこの大広間でさえ狭く感じるほどであった。
そして次第にその激突規模はさらに拡大し、両者の放つオーラや魔法の威力でもって部屋の内壁や天井に亀裂が入っていった。
そして……
「……やばいって……」
ガイウスが部屋の隅で呟くと同時に、大広間の大屋根が凄まじい勢いでもって吹き飛んだのであった。




