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第千百八十六話 後背の防御壁

「……勿体つけおって、そろそろ来い……」


 カルラがニヤリと口角を上げて笑った。


 すると全身の蒼とは対照的に、ガイウスの両腕が深紅に輝きだした。


 そしてその輝きは時間を得るごとにどんどん増していき、ついに目映さに目が眩まんばかりとなった。


「……凄まじいな……これがガイウスの本当の実力か?……それとも操っているものの力量が反映されているのだろうか?……」


 カルラは両足を地面にしっかりと付けて踏ん張った。


 そして今にも破裂せんばかりのガイウスの両腕の瞬きを睨み据えつつ、身構えた。


 するとついにその時は訪れた。


 ガイウスの両腕から、火山の噴火によって巻き起こった火砕流の如き、途轍もない破壊力を想像させる紅蓮の炎(バーフレイム)が放たれたのだ。


 紅蓮の炎(バーフレイム)は唸りを上げて辺りの空気を焼き尽くしながら進み、あっという間にカルラの目の前まで来た。


 カルラは自らを食らわんばかりに迫り来る紅蓮の炎(バーフレイム)をキッと睨み付けると、自身が展開している防御壁を支えるように両腕を前へと押し出した。


 そして耳を覆いたくなるような轟音と共に両者は激突した。


 始め、紅蓮の炎(バーフレイム)はカルラの防御壁によって次々に異次元へと飛ばされていった。


 だが次第に様相は変化していった。


 カルラの防御壁が軋むような音立てて悲鳴を上げ始めたのだ。


 それはやがて幾重にも重なり、さながら沢山の女達が恐怖に打ち震えて叫び声を上げているかのようであった。


 そしてついに、ピシッというガラスにヒビが入った時のような音を立てて、防御壁に裂け目が走った。


 それはやがて次から次へと連鎖的に発生し、裂け目が増えていくと同時に、その一つ一つが段々と大きくなっていった。


 そして……


「……これまでか……」


 カルラがそう呟くと同時に防御壁が音を立てて砕け散った。


 だがそんなことにはお構いなしに紅蓮の炎(バーフレイム)は容赦なく防御壁に襲いかかり、周囲の空気と共に跡形もなく焼き尽くそうとした。


 その様子をデルキアたちは息を呑んで見た。


 だが二人とも、特に驚き慌てる様子は見せなかった。


「……ふん、うまいこと逃げたな……」


 デルキアがニヤリと笑いながら言った。


 すると傍らのカリンも同じ様に微笑んだ。


「そうね。間一髪だったけどね」


「あれは……後背に展開していた防御壁の中に入って異次元に逃げ失せたと考えていいな?」


「ええ、中々の早業だったわね。バックステップして防御壁の中に入り、と同時に防御壁をすぐに閉じて紅蓮の炎(バーフレイム)の攻撃を防いだわ」


「やるねえ……とはいえこの後はどうするつもりなんだ?カルラの奴」


 デルキアはとりあえずカルラが逃げ失せたことに安堵したものの、この後の展開が読めずに眉をひそめるのであった。






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