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第千百七十三話 弱い者の要求

「よし!いいだろう」


 デルキアは全く躊躇する暇もなく、同意した。


 すると同じくカリンも、すぐさま大きくうなずいたのだった。


「いいぞ。どうせ暇だしな。で、いつやる?」


 すると今度は間髪を入れずにカルラが言ったのだった。


「今だ!善は急げと言うからな」


 ガイウスは青ざめた顔で大いに驚いた。


「ちょっと!今!?そんな、だって俺たちはこれから……」


 だがそんなガイウスの言葉を遮って、デルキアが愉快そうに言った。


「今か!それは面白い。それならもう少し先まで行こう。そうすればかなり広い空間がある。そこなら特訓にはもってこいだ」


 するとカリンが思い出すように言った。


「ああ、あそこか。それなら五分も歩けば着くな。よし、そうしよう」


 ガイウスは大慌てで三人の勢いを止めようと必死になった。


「ちょっ!ちょっと待って!特訓なんてしている暇ないじゃないか!だって俺たちはこれからサタンのところへ行くんだよ!?こんなところで道草食っている場合じゃないでしょ!?」


 するとカルラが口元に皮肉な笑みを浮かべながら、静かな口調で言ったのだった。


「ふん、何故道草食っている場合じゃないんだ?別段急ぐ用事はないぞ?」


「何を言っているんだよ!サタンのところへ行くんじゃないのか?」


「行くさ。特訓の後でな」


「何で特訓の後なんだよ。急がないとダメだろ?」


「何でだ?」


「何でだって……だってサタンのところへ……」


 するとカルラが嘲るように笑ったのだった。


「急ぐ必要はないさ。別にサタンと時間の約束をしているわけでもないしな。別段特訓の後で構わん」


 するとガイウスがこれ以上ないというくらい悲壮な表情を浮かべた。


「……いや、そんな……そうだ!カリン!アスタロトを復活させるんじゃなかったのか?一刻も早く回復させた方がいいんじゃないのか?」


 するとカリンが可愛らしく小首をコクンと傾けて考え出した。


「……ん~、まあそうなんだけど……このままこの六人で行ってもダメな気がするのよね。実際正直な話し、わたしとデルキアじゃあサタンには到底適わないし、カルラは相当な実力者のようだけど……だからってそれでサタンに勝てるとは思えないのよね~」


「いや、ちょっと待ってって。サタンに勝つ必要はないんだよ。話し合いに行くんだからさ」


 だがそんなガイウスの言葉に、カリンはキッパリと首を横に振るのだった。


「いや、そうはいかないわよ。弱い者の要求をサタンが聞くわけないもの。つまり、戦って勝てないまでも良い勝負をしなければ、サタンはわたしたちの望みは叶えてくれないんじゃないかしら……」

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