第千百五十九話 由々しき事態
1
カルラの提案にデルキアが不気味に笑った。
「それは面白そうだな。いいぞ、協力してやろう」
するとガイウスが膝から崩れ落ちた。
「……いや、それは……ちょっと……カルラ、約束が……」
するとカルラがニヤリと笑いながら言った。
「ふん、まあ話しの流れだ。ま、そういうことなんでな。気構えだけはしておきな」
膝から落ちて正座の姿勢となっていたガイウスは、そのまま前に倒れ込み、べたーっと床に寝そべるような格好となった。
「……ああ、最悪だ。最悪のコンビが誕生してしまった……これだけは……これだけは防ごうと思っていたのに~……」
ガイウスの力なき言葉が、乾いた部屋に鳴り響くのであった。
2
「……おい、カリン。アスタロトはどうだ?」
デルキアは、部屋に入るなりカリンの背中に問いかけた。
するとカリンは振り向きもせずに答えた。
「……おかしい。アスタロト様が……」
通常ならばデルキアの問いに反論しまくるカリンが、静かに呟くように言った。
そのことでガイウスたちもアスタロトの異変に気付いた。
「えっ?どういうこと?アスタロトがどうかした?」
ガイウスの問いに、アスタロトの傍らに佇むラップが答えた。
「……再び深い眠りについてしまわれたようで……」
ガイウスは驚き、ベッドに横たわるアスタロトに近づき、その脇で心配そうに見守るカリンの頭の上から覗き込んだ。
「……アスタロト……」
ガイウスは、アスタロトが先程眠りについていたときとほとんど同じ様子なのを見て驚いた。
「……息はしているのか?……」
「はい。微かにではございますが……」
「起こしてもダメか?」
「はい。まったく反応がございません」
「ならさっきと同じか……」
するとカルラが目を細めて厳しい表情で言った。
「カリン、それにデルキア。二人は大丈夫なのか?」
するとまずデルキアが答えた。
「……ああ。特に何も無いな。極めて快調と言って良い」
続いてカリンも答えた。
「……わたしもだ。体調は問題ないし、眠気もまるでない……なのに、アスタロト様は……」
するとカルラの目がさらにスーッと細くなった。
「これは由々しき事態だな。まさかこの様なことになるとは……」
するとガイウスも硬い表情で皆に問いかけた。
「誰か、この事象について思い当たる者は?何でも良い、何か思いつくことはないか?」
だがこの問いに答えられる者はいなかった。
そのため、部屋の中に重苦しい沈黙が襲った。
ガイウスはこれまで見せたことがないくらいの厳しい表情となって呟いたのだった。
「……なんてことだ……せっかく復活したってのに……これじゃあ話しも出来ないじゃないか……」




