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第千百四十二話 三つの棺

「こちらにございます」


 ラップが正面の扉を左手で指し示すと、それと同時に扉が音を立てて左右に開いた。


 すると開かれた部屋の奥まったところに、三つの大変豪華な意匠の棺が目に入った。


「あれね……あの中にアスタロトたちが収められているってわけだ」


 ガイウスの言葉にラップが大きくうなずいた。


「左様です」


 ラップは深く頭を垂れて返答した。


 ガイウスは大きくうなずき、部屋の中へと一歩足を踏み入れた。


 それにカルラ、ドーブと続き、最後にラップが中へと入った。


 すると部屋の奥にある左右の扉が突如として開き、ゾロゾロと様々な姿の悪魔たちが現われた。


「あれが治癒魔法に長けた悪魔たちか?」


 ガイウスの問いにドーブが答えた。


「……そうだ。皆が手を貸してくれる。後はお前たち次第だ」


「了解。じゃあさっさと始めるとしますか」


 ガイウスはそう言うと、さらに大股で歩き始めてアスタロトたちの棺の前に辿り着いた。


「どう?カルラ、始められる?」


 するとカルラが三人の棺を見下ろしながら答えた。


「ああ、いつでもいいよ」


「よし、じゃあ始めよう……」


 ガイウスはそう言いつつも、そこで軽く小首を傾げた。


「……で、どうやんの?」


 カルラは呆れ顔となった。


「まったく、勇ましいこと言うかと思えば、なんて間抜けなんだい?お前という奴は」


 するとガイウスがポリポリと頭を掻いた。


「いやあ、よく考えたらやり方知らなかったよ。え~と~、まずはカルラが治癒魔法を発するんだったっけ?」


「そうさ。それに皆が続いてもらう。それをお前さんが無限の魔力総量でサポートするって寸法さ」


「ああ、そういうことね。てことは……俺が一番後ろで皆に魔力を送り続ければいいってことだ」


「そうだよ。わかったらさっさと所定の位置につきな」


 カルラの咎めるような物言いに、ガイウスは少々辟易した様子で後ろに下がった。


 するとカルラの説明を聞いていた悪魔たちが入れ替わるようにして前に出た。


「そう、それでいい。お前さんたちはそれぞれに治癒魔法を発してくれ。後はガイウスの馬鹿がそれを増幅するさ」


「……いや、馬鹿って……そんな言い方……」


「あん?何か言ったかい?」


「……いいえ……何も……」


 ガイウスは、カルラからの睨みを視線を外してかわした。


 カルラはしばらく顔を横に背けたままのガイウスを睨み続けるも、一向に視線をあわそうとしないため諦めた。


「ふん!まあいいさ。じゃあ始めよう。皆、準備はいいね?」


 カルラの呼び掛けに悪魔たちが大声で応じた。


「ふん、中々良い返事だね。ではいくよ」


 カルラは言うや、集中力を極限まで一気に高めるのであった。

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