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第千百十七話 蜘蛛の巣

「だがそれにしても、お前の生まれたあちらの世界の国名を隠すというのは、確かに解せんな」


 カルラが伏し目がちに疑問を呈した。


「そうだよな……日本か……なぜそれを隠したのか……隠す理由はなんだ?それを隠すことで何か得があるのか、それとも……」


「ふむ……どうやらこの問題も、今考えて答えが出るようなものではないようだな?」


「そうだね。あ~あ、また一つ結論の出ない疑問を抱え込んじゃったな~」


「まあそう言うな。もしかしたらこれは、蜘蛛の巣のようなものなのかもしれないしな」


「蜘蛛の巣?」


 ガイウスの問いにカルラが軽く微笑んだ。


「そうだ。蜘蛛の巣だ。お前はあれを見て、なぜ蜘蛛は、自分が作った蛛の巣に絡まったりしないのか、疑問に思ったことはないか?」


「……確かに……言われてみれば確かに不思議かも……あれってもの凄い粘り気があって、色んな獲物を捕らえちゃうよね。でも確かに蜘蛛が自ら絡まっているのは見たことがないな……」


 するとカルラが満足げにうなずいた。


「そうだろう。あれはな、絡まらないように出来ているのさ」


「へえ……まあそうか。そうじゃなければおかしいもんな。でも……どうやって絡まらないように出来ているんだ?蜘蛛の身体が他の昆虫とは違って蜘蛛の糸にくっつかないとかかな?」


 するとカルラが笑顔で首を横に振った。


「そうではない。お前、少し蜘蛛の巣を頭の中で思い出してみろ」


「頭の中に?……ああ、思い浮かべたよ」


 ガイウスは素直にカルラの言うとおり頭の中に、記憶にある蜘蛛の巣を思い浮かべた。


「ではその形状をお前なりに説明してみろ」


「形状を?……ああ、そうだね。まずは全体的に丸いよね。中心があって、それを囲むように糸が張り巡らされている……ああ、あと、縦糸があるよね。中心から放射状に何本も外に向かって張ってある。中心を囲む糸は、その縦糸を横切るような形で張り巡らされているから、横糸って感じかな?」


 するとカルラが満足げにうなずいた。


「そうだな。蜘蛛の巣とは中心から放射状に伸びる縦糸と、それと交差する横糸でもって出来ている」


「うん。そうだね」


「そしてその縦糸と横糸の二つの糸こそが、蜘蛛が自分の蜘蛛の巣に絡まらない秘密なのだよ」


 カルラはそう言うと、ニヤリと微笑んだ。


「そうなの?でも二つの糸っていうけど、別の種類ってわけじゃないでしょ?」


 ガイウスの問いにカルラが笑顔のまま首を横に振った。


「別の種類さ。縦糸と横糸は別の特性をもっている。蜘蛛はそれを使い分けているというわけさ」


 カルラはそう言うと片眉を上げ、驚くガイウスの顔を満足げに見るのであった。

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