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第千百三話 もう一人の真打ち

「駄目だ。お手上げ。勿体ぶらずに教えてくれる?」


 するとグレンが満足げな笑顔でうなずいた。


「わかりました。ではお教えしましょう。そのもう一人の真打ちとは……」


 グレンはそこで一拍間を開けた。


 するとすかさずガイウスが急かすように合いの手を入れた。


「もう一人の真打ちとは?」


 グレンはさらに満足げに笑みを深くすると、ついにその者の名を発するのであった。


「その真打ちとは、地獄の大公爵アスタロトです!」


 グレンが力強くそう言い切ると、ガイウスが驚きのあまり大きく後ろにのけぞった。


 そのため湯船のお湯が大きく揺らぎ、大量に浴槽からこぼれ落ちた。


「アスタロト~!?アスタロトが何でオーガ神と?……大体その話しの中身はなんなのさ?一体どういう理由でアスタロトがオーガ神と会って話したんだよ?グレン、判ってるなら教えてよ?」


 ガイウスの拙速な求めに応じ、グレンがすかさず説明を始めた。


「なぜ出会ったのかは判りません。記述がありませんので。なので唐突に、そう唐突に寓話集の最後に両者が現れるのです」


「どういうシチュエーションで現れるんだ?」


「寓話集の最後を飾るエピソード。その冒頭にいきなり両者が登場しているのです」


「何の前触れもなく?その前のお話しとは繋がってないの?」


「繋がっていません。そもそも寓話集であるため、それぞれのエピソードは独立したものでして、まったく何の予兆もなく両者が出てきても、そんなにおかしくはないのですが……」


「おかしくはないが……何なんだ?」


 ガイウスが先を急かすように言った。


 グレンはうなずき、考えをまとめて答えた。


「繋がりがなくても寓話集ならば問題はありません。ですが、やはりこれは唐突な印象は否めません。というのも、オーガ神もアスタロトも、この最後のエピソードにしか登場しないからです。しかもこの最後のエピソードには、両者の他には誰も登場しないのです」


「二人だけか……いきなり二人が登場して、他は誰も出て来ない……寓話集の最後のエピソードとしては、確かに違和感があるなあ……」


「そうなんです。なので……」


 グレンはそこで再び考え込んだ。


 ガイウスはしばらくは待ったものの、やはりすぐに耐えきれなくなって話しを急かした。


「なので、何?」


 深く重い耽っていたグレンが、ハッと我に返った。


「……あっ、はい。すみません。……なので、このエピソードは後で付け足されたものなのではないかと……」

 

 するとガイウスは、グレンの推測を噛みしめるように何度も小刻みにうなずくのであった。

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