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第千五十二話 相席

 すると美女はまたもニッコリと愛想良く笑い、ガイウスの顔を覗き込むように少し前のめりになって答えたのだった。


「いいえ。観光客よ。あなたは?」


 美女に問われ、ガイウスはドギマギしつつ答えた。


「……観光客です……」


「そう。ならわたしと同じね。一人旅かしら?」


「……え~と、まあそんなところかな……」


「あらそう。なら丁度いいわね。どうかしら一緒に観光しない?」


 突然の美女の誘いに、ガイウスは思わず面食らうも、悪い話しでもないためゆっくり大きくうなずいたのだった。


「……ああ、別にいいけど……この辺ってどこか見るところあるのかな?」


 するとその時、店員が美女の注文したお茶をお盆の上に載せて運んできた。


「お待たせ致しました。マルバ茶にございます」


 店員は手慣れた手つきで音もなくお茶を美女の前へと素早く置いた。


「ありがとう」


 美女はそう一言呟くと、優雅な動作でもってお茶に手を伸ばした。


 そしてゆっくりとティーカップを口元に運び、音を立てずにそっと静かに少量のお茶を口に含んだ。


「美味しいわ」


 美女はニッコリと店員に向かって微笑んだ。


 店員は満足げな笑みを浮かべると、深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。ではどうぞごゆっくり……」


 店員は先程同様キビキビとした動作でくるっと踵を返すと、するすると足を滑らすようにして店の奥へと去って行った。


「あら?そう言えば何か言ったかしら?」


 美女は可愛らしく首を傾げてガイウスへ尋ねた。


「……ああ、いや、この辺ってどこか観光するようなところがあるのかな?って言っただけだよ……」


「ああ、そうだったわね。ええ、あるわよ。例えばイグレチオ渓谷ね。少し遠いらしいけど、風光明媚なところらしいわよ」


「渓谷……この町の外れってこと?」


「そうね。さっき聞いたのだけれど、ここから大体一時間くらいで行けるらしいわよ?」


「ふ~ん。まあ悪くはないか……」


「そう。なら是非行きましょうよ。一人でちょっと退屈していたところなのよ」


「ああ、まあそういうことなら……」


 すると美女が両手を自らの顔の前で合わせてパンと叩いた。


「決まりね。では早速行きましょうよ」


 美女はそう言うと、やおら静かに立ち上がった。


「あっ!そうだわ。まだ自己紹介もしてなかったわね。わたしはディアーナ・セイレス。ディアーナと呼んでくれていいわ。貴方は?」


 ガイウスは立ち上がりざま、右手を差し出しながら言ったのだった。


「俺はガイウス・シュナイダー。ガイウスと呼んでくれ」





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