第千四十二話 休息
するとようやくガイウスが我に返った。
「……あ……シェスターさん……いや、すまない……ちょっとその……」
ガイウスは何か必死に言い訳を探すかのように目をキョロキョロとさせた。
「……ああ、そう……立ちくらみがしたものだから……」
シェスターはとてもいぶかしみ、疑いの眼差しをガイウスへと送った。
「立ちくらみ?本当に今のは立ちくらみによるものなのか?」
「ああ、多分魔法を使い過ぎたんだと思う。ちょっと視界がブラックアウトしてしまって驚いたんだけど、大丈夫。もう見えてるから……」
「そうか……では少し休んだ方がいいな。隣の部屋でも使ってくれたまえ」
シェスターの指示に、ガイウスが首をコクンと垂らして、素直に従った。
「そうさせてもらうよ。大丈夫、ちょっと寝ればすぐに回復するよ」
ガイウスはそう言うと素早く踵を返した。
そしてゆったりとした足取りでもって静かに部屋を出て行ったのであった。
するとエルバが心配そうな顔はそのままに言った。
「本当に大丈夫かしら?ちょっと寝たくらいで治るとは思えないんだけど……ていうかあいつ、資料一冊持って行っちゃったんだけどいいの?」
するとシェスターが厳しい表情はそのままに言った。
「ああ、構わないさ。あの資料があった場所は、把握しているのでな。後でそこへ戻せばいいだけの話しだ」
するとエルバが納得の表情となった。
「そうね。場所が判っていれば問題ないわね。しっかしそれにしてもこの資料どうするの?グレン、貴方なら読めるのかしら?」
だがグレンは難しい顔をして首を横に振ったのだった。
「いえ、残念ながら見たことない文字です……」
するとエルバが口をとんがらがせて不満げな表情を見せたものの、すぐに口を元に戻して静かにうなずいた。
「ふ~ん、まあ確かにこうして見ると結構古そうだけど、古文書って程ではないから、古代文字ってことではなさそうね?……」
するとシェスターが何か思うところでもあったのか、サッパリとした表情となって言ったのだった。
「中身のことは後回しにしよう。とりあえずこれらの資料をいつでも運び出せるようまとめておこうではないか」
するとエルバが仕方なさそうに肩をすくめた。
「判ったわ。解読するのはルーボスへ行ってからってことね?」
「そういうことだ。ガイウス君が回復次第、移動しようと思う。皆、この資料を紐などで括ってまとめておいてくれ」
するとシェスターの号令に皆がうなずいた。
そしてシェスターに言われた通り、皆静かに資料を運び出す準備に取りかかるのであった。




