第千三十四話 エルバの教皇評
するとメルバがさらにイラッとした表情で言った。
「そんなことは判っている。だが何かしら方法はあるはずだ。でなければフラン元大司教がここへ運び込んだ際にも、何らかの噂が立っているはずだからな」
すると、シェスターが腕を組み、小難しい顔をしながら口を開いた。
「ふむ、確かにな……これ程のものとなれば噂になっていても不思議ではないが……実際はどうだったのであろうな?……」
だがこのシェスターの問いに答えられる者はなかった。
しかししばらくすると、ガイウスがやおら口を開いたのだった。
「……確か、この辺りって別荘だらけなんだよね?だったらオフシーズンなんて誰もいないんじゃないのかな?」
するとこれには皆があっという表情となった。
中でもエルバは喜色満面といった感じとなって思わず叫んだ。
「それだわ!きっとそうよ!そうに違いないわ!貴方、中々やるわね?」
するとガイウスが得意げな表情となって言った。
「まあね。こう見えて俺、結構やるのよ」
「あら、ずいぶんとすぐに調子に乗ったわね?まあ、嫌いじゃないけど」
エルバが笑みを湛えながら冗談めかして言った。
するとガイウスもニヤリと微笑み、エルバに調子を合わせた。
「俺も嫌いじゃないよ。俺たち結構気が合うんじゃないの?」
するとエルバが軽くフンと鼻を鳴らした。
「ちょっと調子に乗りすぎよ」
ガイウスは肩をすくめ、仕方なく話しをシェスターへと振った。
「残念。ところでシェスターさん、オフシーズンを狙ったとして、さすがに長距離移動はしてないと思うんだよね。となると、こいつが埋まっていたのはここからそう遠くないところだと思うんだけど、どう思う?」
シェスターはうなずき、ガイウスに同意した。
「うむ。わたしもそう思う。だが現時点ではそれが何処かは判らない。それに、目下の課題はこれをどうするかだよ。ガイウス君」
「ああ、そうだったね……何処かへ運び出すか、それともこのままここに置いておくか……」
するとすかさずエルバが声を上げた。
「ここに置いておいたら教皇が来るわ」
先程と異なり真剣な表情のエルバに、ガイウスも表情を引き締めた。
「教皇か……そもそも教皇ってどんな奴なの?あんたたちの先程までの口ぶりを聞いていると、あまり好ましい人物ではないようだけど?」
この問いにエルバが苦虫を噛みつぶしたような顔となった。
「好ましい訳ないわよ。はっきりいってわたしは嫌いね」
「どんな風に嫌いなのさ?そこのところがよくわからないんだけど?」
「まず何と言っても顔が嫌いね。あの脂ぎった顔を思い浮かべるだけで気持ちが悪くなるわ」
ガイウスはあまりのエルバの口ぶりに、思わず苦笑いを浮かべるのであった。




