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第千三十三話 運搬方法

 するとメルバがゆっくりと大きくかぶりを振った。


「かもしれない。だがそうでないかもしれない。何せ相手は教皇だ。ローエングリン教皇国の最高権力者だ。彼の力は余りにも強大にして、多岐に渡る。そしてそれは情報においてもなのだ。つまり我々のあずかり知らぬ情報を駆使し、これを何かに利用せんとも限らんというわけだ」


「……神の棺を利用?……どうゆう風によ?」


「それはわからぬと言っている。だがその可能性があるのなら、やはりわたしはこれを教皇には渡したくはないと考える。エルバ、君はどうなんだ?教皇がこれを利用して彼の権力がさらに強化される可能性があると考えた時、君ならどうするね?」


 メルバの問いに、エルバがさらに深く考え込んだ。


「……それは、あまり嬉しくはないわね……」


 するとメルバが大いにうなずいた。


「そうだろう?ならばやはりこれは教皇に渡すべきではないのだ」


「でもどうするのよ?ここに置いておいたら、いずれ教皇の手の者に奪われるわよ?」


 メルバは深くうなずき、考えた。


「……やはりどこかへ運び出すしかあるまい……」


 するとエルバが反射的に大声で反駁した。


「何言ってんのよ!こんな馬鹿でかいもの、どうやって運ぶって言うのよ!?これどうみたって超重いわよ?だって巨大な石の塊ですもの!」


「確かにこれを運び出すのは困難な作業となろう。だがフラン元大司教も何処かでこれを掘り当て、そしてここまで運んだはずだ。ならば、我らとて同じことが出来よう」


「……本気なの?」


 エルバが懐疑的な眼差しをメルバに送った。


 だがメルバはその視線を真っ正面からしっかりと受け止めた。


「無論本気だ。人数さえ集めればなんとかなると思う」


「……それで、一体どこへ運ぶつもり?」


 メルバは再び深く思索の海に沈んでいった。


 そしてしばらくすると、厳しい表情でもって口を開いたのであった。


「……もっとも安全なのはルーボスだが……さすがに遠すぎるな……」


 するとエルバが高笑いを上げて、メルバを小馬鹿にするように言った。


「当ったり前よ!こんな馬鹿でかくて重いもの、ルーボスまで運べるわけがないじゃない。百歩譲って何ヶ月もかけてなんとか運べたとしたって、運んでいる途中で近隣住民の注目の的になるわよ。そうなれば当然教皇の耳に入るわ。それじゃ意味がないわよ!」


 すると珍しくメルバがイラッとした表情を見せた。


「だからさすがに遠すぎると言ったのだ。当然、今お前が言ったことを考えてな?」


 するとエルバが勝ち誇った顔で言い放った。


「あ~ら、そう。でも言って置くけど、ルーボスまでじゃなくたって、こんだけでかいもの運んだら大騒ぎになるわよ?そうしたらどうしたって教皇の耳に入るんじゃない?」

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