第千三十二話 沈思黙考
するとアジオが、メルバの言葉を引き取るような形で声を発した。
「まったくですね……偶然どこかを掘ったら出てきたなんてことはないでしょうから、何らかの文献なり何なりを見つけて捜し出したと考えるべきでしょう……しかし、また厄介なモノを掘り当ててくれたものですね……」
するとシェスターが、それを受けて苦笑交じりに応じた。
「確かにな……これ以上に厄介な代物など、まず考えられまい。それにしても何故こんなモノを掘り出したのかについては、アジオの言う通り、何らかの文献を見つけたためと考えるべきだろうな」
するとガイウスが大きくうなずいた。
「だね。となると問題は二つ。一つはその文献が一体どんなものであって、今現在何処にあるのかということ。今ひとつは、この棺を今後どうしていくのかということだけど……どうする?」
ガイウスに振られ、四兄弟は互いの顔を見合わせた。
そして四人を代表する形で、エルバが仕方なさそうに答えたのだった。
「……それは……とりあえず棺はこれまで通り、この地下に隠しておきましょうよ。それと文献だけど……そんなの知らないし、今となってはどうでもいいんじゃないかしら?」
「いや、ここに置いておいたら必ず教皇の手の者に奪われるよ?」
ガイウスがすかさず反駁した。
だがエルバは少し考えた後、ガイウスの予想外のことを口にしたのであった。
「それでもいいじゃない。教皇にくれてやれば?だってとてもじゃないけど、神の棺なんて持っていたって仕方ないものね」
するとアジオもそれに同調した。
「そうですねえ~正直僕もこれは持て余しますねえ~なので、もし教皇が欲しいの言うのならば、別段くれてやってもいいような……。コメットはどう思う?」
するとコメットが困り顔で答えた。
「……あ、はい。僕も正直……これについては姉様やアジオたちの判断に任せたいと思います」
コメットの回答に、エルバが満足そうにうなずいた。
「メルバはどうなの?貴方がこれを欲しいって言うなら、あげないこともないわよ?」
するとメルバが沈思黙考した。
エルバは少々苛ついた表情を見せ、メルバを急かした。
「ちょっと!どうなのよ?欲しいの?欲しくないの?どっちなのよ!」
するとようやくメルバが静かに口を開いた。
「……そうだな。確かに判断が難しいところだが、教皇に渡すのは、わたしは反対だ。何故ならばわたしは彼を信用していないからだ」
するとエルバが少し考え込んでからおもむろに口を開いた。
「……教皇が油断のならない人物だって点は賛同するけど、こんなモノ手に入れたところでどうにもならないのじゃなくって?」




