第千二十八話 透かす
「どうも信用出来ないんだけど……あんたそんなこと言って無茶なことしたりしないでしょうね?」
「無茶なこと?それは例えばどういうこと?」
するとエルバが眉根を寄せてしばし考えた。
「……そうね。例えば……魔法でこの石柱を傷つけるとか……」
するとガイウスの顔が途端にパーッと明るくなった。
「なるほど!それは名案だね!早速やってみようか?」
するとエルバが驚き、目を大きく見張って抗議の声を上げた。
「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ!そういう無茶なことはするなって言ってんでしょうが!」
するとガイウスが大きく高笑いした。
「冗談だよ。冗談。でも魔法は使おうとは思っているけどね」
すると今度はシェスターが意外そうな顔をして、ガイウスへと問いかけた。
「これの中身を調べるような魔法があるのか?」
するとガイウスが大きくうなずいた。
「ああ。中を透かして見る魔法がある。それで見て、中に空洞があれば棺。なければモニュメントっていう答えを出せると思うよ」
「ほう。それは便利だな」
シェスターがほくそ笑むように言った。
だがエルバは逆に怒りの表情を露わにして吠えた。
「ちょっと!そんな魔法があるならとっとと使えばいいじゃない!それをなによ!わたしをからかうような真似をして!」
ガイウスは首を横に傾け、肩をすぼめるようにして言った。
「ああ、ごめんごめん。つい話しの流れでね。でも馬鹿にするつもりがあったわけじゃないよ。ちょっとしたユーモアのつもりだよ」
「何がユーモアよ!ふざけんじゃないわよ!」
「だからごめんって謝ってるじゃん。許してよ?」
ガイウスが両手を合わせて謝るポーズを見せた。
するとエルバが一つ大きく鼻を鳴らした。
「ふん!わかったわ。でも二度とあんな風なやり取りごめんだわ。いい?」
「ああ、以後気をつけるよ」
するとエルバはもう一度大きく鼻を鳴らして、プイッと横を向いたのだった。
ガイウスはやれやれといった感じで、肩をすくめてシェスターと目を合わせた。
するとシェスターが軽くガイウスの粗相をなじるような表情を浮かべたものの、ガイウスがそれに気付いて申し訳なさそうな顔を浮かべたため、軽くうなずき、表情を引き締めたのだった。
「ではガイウス君、早速その魔法でこの石柱を調べてくれるか?」
ガイウスは大きくうなずき、おもむろに一歩前へ出た。
そして両手を石柱に対してゆっくりと翳すと、そこから白い靄のようなものが少しずつ吹き出していったのだった。
「……これは……」
シェスターが思わず呟くと、すかさずガイウスが応じた。
「心配しなくていいよ。これで調べたいものを全体的に覆うんだ。そうするとゆっくりと中が透けて見えてくるって寸法さ」
ガイウスの言葉通り、白い靄は広がることなく石柱にまとわりつくような感じで徐々に全体を覆っていったのだった。




