第千二十七話 癇癪
「まったくだ。神の棺を開けるなどと……いくら伝説の大魔導師とはいえ、相手は神なのですよ?その神の災厄を貴方の魔法で打ち払えるとでも思っているのですか?だとしたらそれは傲慢の極みというもの。到底我々は付き合いきれませんよ」
すると集中砲火を浴びたガイウスが、不機嫌を顔に浮かべて言った。
「じゃあどうすんのさ?このままここへただ置いておくつもりなの?」
すると四兄弟が、皆それぞれに困った様子で互いの顔色をうかがい始めた。
そしてしばらくすると、しびれを切らしてエルバが口を開いた。
「どうすんのよメルバ?ずっとここへ置いておくつもり?」
するとメルバが眉根を寄せつつ、エルバに応じた。
「それより他にあるまい。無論本当にこれがイリスの棺であるかの検証は行わねばならないが、その結果、本当にこれがそうだとするなら……再び封印するしかあるまいよ」
「……あんたはどうなのよアジオ?」
「……メルバ兄の言う通り……かな。まずは調べて、で、やっぱり本物だってなったらここに置いておくしかないでしょ?だって棺だから土に埋めようったってどこへ埋めれば適切なのかわからないでしょ?何せ神だからね……」
するとエルバの癇癪が爆発した。
「何よあんたたち!せっかくここまでわざわざ来たっていうのに、指をくわえてそのまま放置ってわけ?冗談じゃないわよ!」
するとガイウスが皮肉な笑みを浮かべながら、からかい口調で言った。
「じゃあ開けちゃえばいいじゃん。そもそも本物かどうかの判断だって、外側だけ見てじゃ、わかんないよ。ちゃっちゃと開けて、中を確かめなきゃ……ね?」
するとエルバがさらに怒りを爆発させた。
「そんなこと出来るわけないでしょうが!!あんたやっぱり馬鹿でしょ!?でなければメルバの言う通り、傲慢の極みよ!!」
「傲慢ね……それほどでもないと思うんだけどなあ~。だって棺っていっても、見たところただの巨大な石柱にしか見えないし、普通の棺と違って継ぎ目も全く見えないわけだから、棺というのはあくまで名目的なもので、実際はモニュメント的なものに過ぎないかもしれないじゃん」
「だったら棺を開けるも何もないじゃない!」
するとガイウスが再び両手を打ってパンと大きな音を立てた。
「そう!そうなんだよ。かもしれないからそういうケースも含めて、この石柱を調べようって意味で俺は言ったんだよ」
するとエルバが懐疑的な眼差しをガイウスへと向けた。
「本当に~?あんたその場の流れで適当なこと言ってんじゃないでしょうね?」
「そんなんじゃないって~。俺の真意は、とにかくこいつをちゃんと調べようってことさ」
ガイウスはそういうと、右目を軽く瞑って可愛らしくウインクをするのだった。




