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ルナベルク王国の王宮物語。

敵に回すべからず。

作者: 池中織奈

※『私は王妃』の主人公のいる王宮に新たな側妃がやってきた!というお話。王宮の事はよくわからないので矛盾点とかおかしな点があったらごめんなさい。

 私、ノア・ヒロアルナは公爵家の長女だ。称賛されて育ってきたため、自分が美人な自覚ぐらいある。そして、先日行われた夜会で私は見事陛下であるウェオス様に見染められたのだ。

 陛下の妃になれるなんて何て言う幸せだろうか。この方以上に地位も権力もあり、顔もよい方などいないのだ。

 それに加えて、王妃であるリナーシャ・ルナベルクは陛下に愛想を尽かされているというのだ。それならば、王妃を廃して私を王妃にしてくださるかもしれない。

 夢は王妃になること。

 愛想を尽かされた王妃。陛下の寵愛を受けるためにみじめに縋っている王妃からその座を奪ってやるの!

 そんな野望を元に、侍女を引きつれて私は後宮に入ることとなった。












 「ノア・ヒロアルナ様ですね。私は女官長を務めているメリッサと申します。お部屋にご案内させていただきます」

 女官長である女がそういって、私に向かって礼儀正しく礼をし、案内のために動き出す。

 私は家より連れてきた沢山の侍女を連れて、その後をついていく。後宮は権力争いが激しい世界だと聞いている。先代の陛下の側妃としてこの後宮に住まっていた叔母様がそんな事をいっていた。

 王妃の座を奪ってやるんだから!!

 そんな思いを胸に私は後宮の中を歩く。

 赤い絨毯の引かれた廊下を歩く。そして案内された先は広さで言えばこの後宮の中で王妃の間の次の次ぐらいに広いと言える部屋である。私が公爵家の長女だからこそ、この部屋を宛がわれたのだろう。

 その後、メリッサは私に後宮の事をさらっと説明をしてくれる。後宮勤めの侍女も連れてきてもらって紹介をしてもらった。

 その後、私よりも後宮内で権力を持っているであろう、王妃と隣国の王女、そして宰相の娘に挨拶に行くことにした。王妃の座を奪う気満々だといっても、今は私は側妃の一人にすぎないのだ。

 王妃は20年前、隣国の王女は15年前、宰相の娘は20年前に連れてこられたはずである。沢山居る妃の中で、数多くの国内より後宮に入った妃が下賜されたり家に帰されたりする中で生き残っている三人である。何せ妃が多すぎるため、数年に一度でも御渡りがあれば家に帰される事はないらしい。

 「今の時間だとリナーシャ様、ヒナサ様、チカ様並びその他の側妃の方々、並び王子殿下、王女殿下は庭園にて交流を深めているはずです」

 「……殿下達も含めての交流ですの?」

 そもそも側妃達の交流といえば、お茶会などで寵愛争いではないのかと疑問に思った。そんな場所に自らの子供たちを招いているのはどうしてなのだろうか。

 王位継承権はルシア殿下にあるものの、殺傷沙汰がないとも限らないと思うのだが。

 「はい。その場に行くというならばご案内いたしますが、いかがいたしますか?」

 「お願いするわ」

 真相を確認するべきだろうと私は思う。後宮の勢力に関しても重要だ。どれだけ私の味方につける事ができるか、そして王妃になるにはどうするべきかだ。













 「ようこそ、ノア様。私はルナベルク王国王妃リナーシャ・ルナベルクですの。どうぞ、おかけになってください」

 庭園にてリナーシャ・ルナベルクを視界にいれて私は思わず感嘆の息が漏れた。

 美しい金色の髪に、透き通るような碧眼。優しさに満ちた瞳で笑いかける姿は、もう33歳だというのに未だに若々しい。

 美しさでは負けてるかもしれないと、思ってしまうほどだった。

 机を囲う王妃と側妃達。そして庭園の中で仲良さそうに遊びまわる王子殿下や王女殿下達。第一王子であるルシア殿下は流石に居ないがそれ以外の幼い子供たちが沢山居る。

 側妃には居ないものもいるが、殿下や妃殿下はほとんどいるかもしれない。これはどういう状況なのだろうか。王子殿下や王女殿下までこの場に居るなんて。

 不思議に思いながらも、リナーシャ様の言葉に従って席に着く。

 「ふふ、今日はただのお茶会のつもりでしたけど、折角ノア様が来てくださっているのですから歓迎会にしましょう」

 「それはいいですね、リナーシャ様」

 「側妃は沢山いますからまずは自己紹介からするべきかしらね」

 「それに殿下達の事も紹介しましょう。ノア様はお若いし綺麗ですから陛下は通いになられるでしょうし、新たな王子殿下か王女殿下かが生まれるかもしれないですものね」

 「そういえば、ユリア様もご懐妊なさったのでしょう?」

 「あの方もお優しい方ですよね。リナーシャ様を差し置いて陛下の寵愛を受けているからって、此処にやってくることに躊躇っていらっしゃることですし」

 「そうよね。別に気にしなくていいというのに。ユリア様は優しい方ですし、私は仲良くしたいのに」

 「リナーシャ様、それならばどうせユリア様への寵愛も長くは続かないでしょうし次の寵妃が出来たら誘ったらいかが?」

 もはや目の前で10人近くの正妃と側妃の告げる言葉にわけがわからない。というか、殿下と妃殿下の中にはその母親である側妃が居ない者までいる。

 後宮勤めの侍女は驚いてはいないが、家からついてきた侍女は私同様に驚きに目を見開いている。

 「おっと、すいません、ノア様。つい話しこんでしまいましたわ」

 「いえ、それはいいのですが…」

 私に屈託のない笑顔を向けてくるリナーシャ様に唖然とする。

 陛下の寵愛を受けられない可哀相な王妃。それが噂されているのが彼女だったのでは、と疑問に思う。寵愛を受けてないからと必死に王妃の仕事をこなしてる王妃だと聞いていたのに。そういえば、お父様は私の王妃になるって宣言を聞いて苦笑いを浮かべて聞いても、『王宮にいったらわかるさ』といっていたけれど…。

 「ふふ、リナーシャ様。彼女はきっと噂とのギャップに驚いているのだと思われますわよ。ヒロアルナ公爵様ったら面白がってリナーシャ様の真実を伝えなかったらしいのですもの」

 そういって微笑むのは、隣国アルファード王国の王女であるヒナサ様だ。

 リナーシャ様とは正反対の銀色の髪に、そして深紅の赤い目を持つ。腰まで伸びたその髪は光に反射して輝いている。

 「お父様が…?」

 もう何が何だかわからず、首をかしげてしまう。

 「そうですよ。ヒロアルナ公爵様ったらリナーシャ様の信者の筆頭ですのに教えないんですもの」

 現、宰相であるカイト様の娘であるチカ様が笑う。

 こちらは茶髪の髪を肩まで伸ばした、黒い瞳を持つ綺麗というより可愛らしいという印象を受ける方だ。というか、信者ってなんですの。

 「チカ様ったら信者って言い方したら失礼ですよ?」

 「ふふ、別にいいじゃない、リナーシャ様。リナーシャ様はそれだけわたくしたちも含めた大勢の方に慕われているのですもの」

 にこにこと微笑むヒナサ様に何だか頭がついていかない。

 ふふふと笑い合う彼女たちは、何だか信頼感みたいなのに満ちていてギスギスしたような感じは一切ない。というより、側妃達はリナーシャ様と親しげに会話を交わしている。

 「ど、どういう事ですの?」

 「ふふ、じゃあ今日はまず自己紹介をさらっとしたら王宮情勢とかリナーシャ様の事について教えてあげましょうか」

 「あ、ヒナサ様。私自分の事話されるの恥ずかしいからちょっと子供たちと話してるわ」

 「まぁ、子供たちも喜びますわ。リナーシャ様に懐いていますからね」

 上から私、ヒナサ様、リナーシャ様、チカ様である。

 リナーシャ様は口にした通り席に立つと遊んでいる殿下達に話しかけ始めた。…もう何が何だかわからない。側妃の子供が憎くないのかとか、側妃の事を疎ましく思わないのかとか疑問は多い。

 リナーシャ様が話しかけると、殿下達は嬉しそうに声をあげてリナーシャ様に群がる。あんなに側妃の子供にさえ懐かれているのが信じられない。

 それから疑問に答える前に軽く自己紹介ね、と言われ次々に自己紹介された。今回のお茶会は10人の側妃だけど、多い時はもっと来るらしい。

 その後に聞いた言葉に私は開いた口がふさがらなかった。側妃達は次々に言う。

 「リナーシャ様はお優しい方なのですよ。私たちにも優しくしてくださいますし、子供たちにも優しくしてくれているんですの。王宮は自分の家だから此処に住まう子供たちは自分の子供のようだっていってるんですのよ」

 「王妃の仕事の処理能力も申し分のない方で、民にも慕われているのはもちろんですけれども、その人柄ゆえに王宮勤めの侍女たちも騎士も、文官も例外は居ますけど多くの方がリナーシャ様を慕っておられるの」

 「もちろん、私たちもそうよ。陛下の愛情がなくなって傷心な私たちに元気出してってお茶会に誘ってくれて、最初は疑ったけどあの方ってば本当に私たちを元気づけるためだけにやってるんですもの。何でも下賜された側妃の方々とも未だに交友関係があるっていうのだからリナーシャ様は流石よね」

 「側妃の中でも数人はリナーシャ様を目の敵にしてる方がいるけれども、あの方と張り合えると思ってるのが大間違いですの。後宮の勢力をざっと説明すると20人近くが私と同じ『リナーシャ様を慕う会』の会員ですもの。あとの数人は個別に存在しているだけですわ。ああ、あなたに最初からこんなお話をするのはあなたのお父様であるヒロアルナ公爵様も会員なのですよ。しかもその会の会員№7ですもの。一ケタの位に居るあたり流石ですよね。私何て№10ですのに」

 次々と話される会話。私と家からついてきた侍女はその事実に驚く。そもそもあのクールなお父様が『リナーシャ様を慕う会』なんてものに入ってたことが信じられない。衝撃的で仕方がない。ちなみにヒナサ様がその会の会長らしい。ついでにいうとリナーシャ様はその会の存在は知らないんだとか。

 そういて一番驚いたのは、

 「ちなみに言うとリナーシャ様って割り切った方ですもの。陛下の愛はなければないでいいって言い切りましたから、私ってば最初何か企んでるんじゃないかと疑ってしまいましたもの」

 「そうですよね。リナーシャ様ってば城下町では陛下の寵愛を欲しがってるって言われてますけど、そんな事ないですものね。そもそもリナーシャ様が執務に取り組んでいるのってやりがいがある仕事が好きってだけですし」

 「リナーシャ様は今の生活が割と充実してて楽しいっていってましたものね。仕事をしながら子供たちと遊んで、私たちと交流を深めて暮らす日々を楽しんでおられますもの」

 「まったく、陛下が可哀相になってくるわね」

 それらの言葉である。それに陛下が可哀相とはどういう事なのだろうか。というか、リナーシャ様は寵愛はなければないでいいと思っているらしい。何だか信じがたい考え方である。

 「陛下が、可哀相とは?」

 思わず零した声に、彼女たちはリナーシャ様が離れた位置で子供と話しこんでいてこちらの声が聞こえていないのを確認して言葉を放つ。

 「陛下は女好きですけれどもリナーシャ様を一番愛しておられますもの。そもそもあの陛下があんなに長い期間一人の妃に夢中だった事が異例でしたもの。陛下の寵妃としてリナーシャ様が存在していたのは実に10年以上にも渡りますの」

 「そうね、リナーシャ様が14の時から25までぐらいだからそのくらいね。確かにリナーシャ様を寵愛していた時も側妃の所には時々通ってたらしいですけどあんなに夢中になってたのはリナーシャ様だけらしいですもの」

 「陛下ってば、リナーシャ様の嫉妬を見たかったらしいのよ。私にそう言っていたもの」

 側妃が言葉を放つ中で、ヒナサ様がくすくすと笑いながらそんな真実を告げる。16歳の時に王となった陛下。その陛下が10年以上寵愛していた妃。それがリナーシャ様…。

 「しばらく通わなくなったらリナーシャ様が縋ってくるかなって嫉妬してくれるかなって期待してたらしいのよ」

 「それなのに侍女に偵察させても悲しむどころか意気揚々と仕事したり遊んだりして楽しんでるから陛下ってば意地になっちゃってるみたいで。それにリナーシャ様ってば公務でも陛下に対して普通の態度ですものね」

 「リナーシャ様はなんだかんだで陛下の事愛してますのに、愛されてないのかとか思ってるらしいのですよ。子供でもないってのに陛下は」

 「陛下がリナーシャ様にお通いになられると、リナーシャ様と私達の交流の機会が減るかもしれないのが嫌で陛下に言ったことなかったのですけれども、流石に可哀相ですわね。素直にリナーシャ様が好きなら通えばいいのに。意地張って我慢して夜のお通いの時も陛下ってば不機嫌ですもの」

 「わたくし、最中にリナーシャ様の名前呼ばれましたわ。そんなに好きなら意地張らなきゃいいのですのにねぇ。今度陛下に不安ならリナーシャ様にお聞きなさいとでも言いましょうか」

 まったく仕方がないとでも言うチカ様の目には嫉妬は微塵も感じられない。

 陛下はリナーシャ様を愛してるというのは彼女らの間では公然の秘密らしい。意地張っているのも皆結構知ってるらしい。が、本人は陛下は飽きたんだろうと気にしていないらしい。

 そんな話まで聞いて、ヒナサ様にしっかりと『リナーシャ様害すなら後宮やあなたのお父様も敵に回すことになるからね? あと私の国も!』としっかり脅さ……いや、お話を受けすっかり王妃になろうって気持ちなんて失せてしまった。

 その後もリナーシャ様が殿下達と遊んでいる間、リナーシャ様の事や今流行っているお菓子などの事が話題に上る。結構リナーシャ様に対する事をこの人達はしていて、本当にリナーシャ様を慕っている事が見てとれた。

 後から聞いた話だが、王宮に勤めるほとんどの人々は『リナーシャ様を慕う会』の会員らしい。




 そしてチカ様がリナーシャ様に聞くようにいったからなのかは知らないが、リナーシャ様に寵愛が戻るのは別のお話である。

 とりあえず、私の言える事はただ一つだ。リナーシャ様を敵に回してはいけないと。何分、リナーシャ様の交友関係が半端ないのだ。それに加え、下手したら陛下よりも情報を集めた限り慕われているのだ。





 ―――敵に回すべからず。

 (後宮で暮らすうちに、王妃になれるっていうのはただの幻想だったのだと自覚した。私は彼女には勝てない) 

陛下より王妃の方が慕われている王宮事情(笑)。

もしリナーシャを廃したら王宮は荒れまくります。周りが廃すなんていったらとめます。

リナーシャに酷い仕打ちをしたら慕っている側妃+文官+騎士+貴族+子供たちとかその辺が全部敵にまわります。


陛下はリナーシャの事好きだけど女好きだし、側妃は増えたり減ったりします。

でもこんなに増えたのは8年位前からです。


ノア

公爵家の娘。クールだと思っていた父親がリナーシャ様を慕う会なんてものに入ってて驚愕。

王妃を目指そうと思ったけど初日から心が折れた。父親やヒナサやチカを敵に回してまで狙う気はない。


ヒナサ

隣国の王女。歳はリナーシャの二つ上。

リナーシャとは普通にお友達。リナーシャ様を慕う会の創設者。会員はどんどん増えてる。一人の姫が居る。



チカ。

宰相の娘。そして宰相もリナーシャ様を慕う会の一員。というか、№3。ちなみにチカは№2。親子そろってリナーシャと仲良し。

リナーシャより6歳年下。一人の王子が居る。


ちなみにリナーシャを慕ってる側妃達は、陛下の事好きだから来てほしいけど一番愛してるのがリナーシャな事に寧ろ納得してる。

「リナーシャ様なら別にいい」と思っている。寧ろリナーシャを慕う会の面々はリナーシャ以外王妃嫌だって思ってる。



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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。 楽しく読ませていただきました。 陛下のヘタれ加減がとても楽しいです。 陰謀渦巻く後宮物語もそれはそれで面白いですが、こちらのようなホッとできるお話のほうが好きです。 ひとつ…
[一言] 面白かったです。 王と王妃という関係上王妃を誰かに取られる心配が無いのも意地を張ってしまう原因な気もします。 出来ればある意味かわいそうな王様視点の話も読んでみたいです。
[気になる点] うまく言葉に出来ないので文にしてこんな感じ、としますが、そのまま書いてくれって言っているわけではありませんので、図々しくても御容赦ください。 > 自分 が美人な自覚ぐらい、称賛されて…
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