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本の紹介49 『ムーミン谷の十一月』 トーべ・ヤンソン/著

作者: ムクダム
掲載日:2026/03/21

ムーミン一家不在のムーミン谷を舞台に描かれるオムニバス

 小説シリーズのムーミンの最終作ですが、コミックや絵本もあるのでムーミンの物語としての最終作かどうかは意見が別れるところかと。

 本作の大きな特徴はムーミン一家が本編に登場しないところですね。ムーミン一家に会いに、スナフキンをはじめとする6人のキャラクターがムーミン屋敷を訪れるのですが、生憎と一家は遠くに出かけていて留守。6人は家主不在のムーミン屋敷で不思議な共同生活を始めるというストーリーです。

 留守にしていたムーミン一家が船でムーミン谷に帰ってくるところで幕が下りるのですが、シリーズの一つの幕引きとなる作品でこういった構成を選択するのは非常に挑戦的だと感じるとともに、非常にしっくりくる感触があったのも事実です。

 11月というのは夏と冬の間に挟まれた、穏やかでありながらどこか寂寥感のある季節だと思っています(日本にいる場合の感覚なので、フィンランドやムーミン谷も同じような季節感かは不明ですが)。そのような季節に訪れた場所で、尋ね人が不在にしているという状況。そして、それぞれに屈託を抱えて集まった人々が思い思いの生活を送るというシチュエーションはシリーズの終わりを迎える読者あるいは作者の心情に近しいものがあると感じるのです。


 本作で描かれるのは6人のキャラクターの共同生活ですが、その中で彼らは自身が抱えている屈託、悩みと向き合っていきます。何か大きなイベントや困難が起きてそれに立ち向かうというニュアンスではなく、日々の生活で気にかかっていた事を普段とは違う生活環境の中で見つめ直すというもので、大袈裟に描かないところが上品です。

 一人であれこれ考えて悩みを晴らす(あるいは心の中で落とし所を見つける)場合もあれば、これまで一緒に暮らしたことのなかった他人(他の共同生活者)と触れ合うことで納得を得る場合もあります。いずれの場合も共通しているのは、その後ろにムーミン一家の気配が感じられるということですね。

 確かに、本編でムーミン一家が物理的な意味で姿を現すことはないのですが、それぞれのキャラクターがこれまでムーミン一家と過ごした時間、その中で得た気付きのようなものが彼らを優しく見守っているように感じます。

 たとえ目の前にいなくても、ムーミン一家から得たものはいつも変わらずにそこにある。たとえ姿を消しても無くならないものがある。これはムーミンという架空の存在と読者との関係に留まらず、私たちが現実の生活において経験し、または今後経験するであろうお別れに向けたメッセージでもあるようにも感じました。終わり

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