表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

甘味の誘惑と、人の姿をした「トカゲ」

エンマ城の最上階。そこは今や、異世界中の珍味が集まる「ぐうたら神の聖域」と化していた。


「……ん、これ。ドワーフの作った『爆裂蜂蜜のタルト』? 悪くないわね。地獄の亡者から搾り取った油より、よっぽど価値があるわ」


エンマは寝間着のまま、フォークを口に運んでいた。彼女がこの町で唯一気に入ったもの。それは、かつて地獄には存在しなかった「甘味」だった。


「おいエンマ、あんまり食べ過ぎると、衣装のサイズ直しが大変になるぞ」


「衣装? 何の話よ。……それより健二、この『トカゲ』が邪魔。尻尾が長すぎて、私のプリンを倒しそうになったわ」


エンマが指差したのは、部屋の隅で小さくなっていた暗黒竜だ。


かつて砦の主だったランクAの魔物だが、今はエンマのプレッシャーに怯え、大型犬のように丸まっている。だが、いかんせん図体がデカすぎる。


「……あー、もう。鬱陶しいわね。『身の程を知りなさい』」


エンマが気怠げに指を弾いた。

【権能:形態の強制執行】

黒い霧が竜を包み込み、凄まじい魔力の奔流が吹き荒れる。霧が晴れたあと、そこにいたのは……。


「……え? 嘘だろ」


健二は目を見開いた。


漆黒の鱗を模したようなドレスを纏い、頭に小さな黒い角を生やした、冷徹な美貌を持つ「人間の少女」がそこに立っていたのだ。


「……ガッ、ガア……? 」


「いい? その姿なら場所も取らないし、掃除も捗るでしょ。今日からあんたの名前は……そうね、『リュカ』よ。私の身の回りの世話をしなさい。あと、プリンは絶対に倒さないこと。わかった?」


「……ガッガガがァ!」


「もう、めんどくさいわね。言葉くらい喋れるようになりなさいよ」


さらに指を弾くとリュカの顔を黒い霧が包み込む。するとリュカは言葉を発した。


「……は、はい! エンマ様! この命、捧げます!」


最強の竜が、最強の「メイド兼・ボディーガード」へと変貌した瞬間だった。


「(……いける。これはいけるぞ!)」


健二の脳内では、プロデューサーとしての計算が火を噴いていた。


**【固有スキル:プロデューサー・アイ】**が、リュカのステータスを弾き出す。

対象:リュカ(種族:人化暗黒竜)

ビジュアル: SS(クール系・褐色美少女)

歌唱力: C(声量がデカすぎる)

ダンス: B(格闘技に近いキレ)

特記事項: エンマへの忠誠心が1000%を超えている。


(……最強のセンター・エンマ。そして、それを支えるクールなバックダンサー・リュカ。……ユニットの構想が見えてきた!)


「健二、あんた何ニヤニヤしてるの? 気持ち悪いわよ」


「……いや、いい素材が手に入ったと思ってな。……リュカ! お前、エンマ様を輝かせるためなら何でもやるか?」


「もちろんです! エンマ様のためなら、この世界の半分を焼き払うことも厭いません!」


「よし。ならまずは、その『物騒な忠誠心』を、『キレのあるダンス』に変える特訓からだ」


「……ダンス? 剣術の新しい流派ですか?」


こうして、嫌々ながらもスイーツのために動くエンマと、盲目的な忠誠心を持つ元竜の少女リュカ。


異世界最強の「ユニット」の原型が、おやつの時間に誕生した。

城下町では、聖教国のスパイたちが「暗黒竜が消えた」という報告を本国へ送ろうとしていたが、彼らもまた、町の露店で売られる「エンマ様まんじゅう」のあまりの美味さに、任務を忘れかけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ