ラメ色のふしぎ
ママ、なんかやってるよ?!
冬の夕暮れは駆け足でやってきます。5時にもなるともう宵闇が夜に連れて行かれそう。
5才の由幸くんは、ママと二人遊園地の帰りに駅の広場で、遊園地にいそうでいなかった存在に出くわしました。
それは、赤と白の縞々でダボッとしたお洋服を着、顔を真っ白にしたピエロです。
お鼻は赤く真ん丸です。きっとポンポンのような物で出来ているのでしょう。
金髪のモジャモジャヘアーがお帽子から覗いています。
『駅の広場』と言っても2月の寒空の下です。
長い風船をプーとふくらませてはいろんな形にし、オーバージェスチャーで道行く人にアピールしています。
でも、みんなたいして見向きもしない。
由幸くんは、ママとつないだ手にギュッと力を入れました。
「どうしたの? 由幸?」
優しくママが問いかけます。
「ピエロさんがいるよ、ママ」
ママは由幸くんに合わせ立ち止まりました。
「あら、ほんとうね!」
「ママ、ピエロさんが面白いことしている! 僕、みたい!」
「うん、わかった」
ママと手をつないだまま、ピエロのコミカルな動きに夢中になる由幸くん。
「すごいね! どうして、あの風船割れないの? ママ」
「うーん、ママにはわかんない! ピエロさんに訊いてみる?」
嬉しそうにママが微笑みました。
「うん!」
元気いっぱい由幸くんはお返事を。
……でも、なんだか恥ずかしくて訊けない。
いつの間にか、最初いた場所よりもピエロさんに近づいていた由幸くんとママ。
そういえば……ピエロさん、ずっとおしゃべりしないぞ?
「ねぇ、ママ、ピエロさんはなんで声を出さないの?!」
「それはね、言葉を使わなくても素晴らしいことができるからだよ」
「……」由幸くんは思いました。
(でも、お客さんは僕とママだけじゃないか……)
由幸くんがなんだか複雑な気持ちになりながらピエロの芸を見ていると、ピエロが左腕を後ろにピンと少し高く伸ばし、右足を前へ、そしてちょっぴり前かがみになり……まるで捧げるように右手で風船で出来たカラフルな花束を由幸くんへ渡そうとしてきました。
その時、由幸くんがピエロの目を見ると……キラキラとした涙の雫のお化粧が左瞼の下に施されているのに気付きました。
でもピエロさんは満面の笑みです。
「ありがとう」
ボソッと由幸くんは言い、プレゼントを受けとりました。
隣のママのお顔を見上げると、ニコニコしています。
由幸くんは、キラキラしたお化粧の涙が綺麗でなぜだか悲しい気持ちになりました。
ママは笑顔。
(もしかしたら……大人になったら、僕は『言葉を使わなくても出来る素晴らしいこと』が理解できるのかなぁ)
「寒いね! 行きましょう、由幸」
「うん」
ママに連れられお家へ帰って行く由幸くん。
50メートルぐらい行った後、1度だけ振り返りました。
するとピエロさんが右手の指を順番に素早く動かしながら「バイバイ」をしてくれました。
それでも、あの……ラメで出来た、涙の形を消してあげたくなる由幸くんなのでした。
僕……ピエロさんとおしゃべりしたいな。




