エピローグ
夏が終わった。
遊園地のステージも、今は静かだ。
直哉は、大学の図書館で卒論の資料をめくりながら、ふとあの7日間を思い出していた。
着ぐるみの重さ。
汗の匂い。
腰の痛み。
子どもたちの声。
スタッフの気遣い。
悪役との連携。
そして、最後の日のあの言葉――
「また来てね。ずっと待ってるから」
あの瞬間、確かに自分は“ヒーロー”だった。
誰かの記憶の中に、立ち続ける存在になれた。
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図書館の窓から、秋の風が吹き込む。
直哉は、ノートの隅に小さく書き込んだ。
「ヒーローは、誰かのために立ち続けた人の記憶に残る」
それは、7日間のすべてを表す言葉だった。
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彼はもうすぐ社会人になる。
スーツを着て、会議に出て、書類をまとめる日々が始まる。
でも、あの夏の7日間は、ずっと胸の奥に残り続けるだろう。
汗と痛みと、誇りでできた時間。
誰にも見えない場所で、誰かのために立ち続けた日々。
それは、直哉にとっての“最後の変身”だった。
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そして、遊園地のステージでは、今日も新しいヒーローが立っている。
子どもたちの声に応えながら、誰かの記憶に残るために。
直哉は、そっと目を閉じた。
あの着ぐるみの重さを、今でも身体が覚えている。
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ヒーローは、誰かの記憶の中で生き続ける。
それが、直哉が得た“最後の夏”の答えだった。




