表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EN~RIN  作者: 不動坊多喜
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/106

(70)再会⑤

 フォンは感動していた。


 この世界は、何と美しいことか。そして、力強いことか。


 以前、ミーナを追って来た時には気づかなかったが、あの時は必死だったから仕方がない。


 今、こうして見回すと、サラナーンがいかに病んでいる世界だったか、思い知らされる。

 円使いが、エナジーを乱用したからかもしれない。いや、それはターマも同じことか。


 沙漠は、何一つ生き物がいないように静かだった。しかし、砂の中に多くの生き物が潜んでいるのが分かる。筋となってエナジーが溢れているのは、そこに地下水脈があるからだ。


 以前、この水脈を歪めて泉を作った。その影響はなかったようだ。いや、あったにしても、微々たるものだったのだろう。そのはずだ。何しろ、この世界は大きくて広い。


 そうだ。この世界はサラナーンよりずっと大きい。だから、活力に満ちているんだ。


 思わずため息が出る。こんな世界があったのだ、と。


 空を見上げる。鷹が飛んでいる。


 ふっと気づくと、自分も一緒に飛んでいた。

 砂の上に自分の体が転がっているのが見えて、思わず笑う。

 そして気づく。今まで生きてきて、こんな風に笑ったことなどなかったと。


 鷹に話しかける。


『彼は君の友達かい』

『ああ。私の友人だ』

『どういう人かな?』

『鷹のように賢い。空は飛べないがな』


 それから、フォンを見て不思議そうに首を傾げた。


『君は人なのに飛べるんだね』

『形は人だが、中身は大気と同じだよ』

『ああ。それなら分かる』


『遠くに見える緑が、彼らの目的地かな』

『そうだろう。あれはオアシスだ。人が大勢住んでいる』

『君もあそこに行くのかい』

『どうだろう。彼からネズミを託されるかもしれないし、そうなったらあそこには行かないな』

『ネズミ?』

『ああ、彼の兄に届けるのが私の役目だ』

『忠実なんだね』

『友達だからな』

『彼は、信頼できる人かい?』

『もちろん。だが、心配はある』

『心配?』

『彼は信頼できるが、そうでないものが彼の周りにいる。そして、なぜか、彼はそいつを信頼している。とりあえず息子に見張らせているが……』

『そんなに信用できないんだ』

『ああ。いつか悪いことが起きそうな気がする』


 その時、指笛が鳴った。

『おっと、行かなくては』

 方向を変え、急降下していく。


 残った若い一羽に話しかける。

『君は行かなくていいのかい?』

『今のは父さんの合図だからね』

『合図が決まってるんだ』

『そう。名前と同じさ』


 父親が戻って来た。足に、灰色の袋が縛り付けられている。

『あそこには行けないようだね』

『ああ。もっと遠くの国まで飛ぶよ』

『気を付けて』


 羽ばたきでそれに応え、父親はぐんぐん遠ざかる。


 また、指笛が鳴る。さっきより、やや細く高い響きだ。

『じゃあね』

 息子が舞い降りて行く。

 リシュが、腕を伸ばして彼を受け止めている。

 近くで、ロッシュが背を丸めて何かしている。どうやら食事の支度をしているようだ。


 息子は戻って来なかった。

 父親とは反対の方角に向けて飛んで行く。

 彼らは友人のために力を尽くしている。


『力は人々のために使わねばならぬ』


 老師はそうおっしゃった。

 私も、この新しい世界で、人々のために自分の力を使うようにしよう。


 さあ、そろそろ戻るとするか。


 ふっと、砂の上で目覚める。

 立ち上がると砂を払い、歩き出す。

 シチューの匂いが漂って来る。

 ロッシュは料理上手だ。私は食べなくても平気だが、彼女の作る料理は好きだから残さず頂くことにしている。


 匂いがだんだん近づいて来る。

 姿が見えてきた頃、向こうもこちらに気づいたようだ。

 ロッシュが立ち上がって手を振っている。

 リシュは座ったまま、一度こちらに向けた顔を、今は伏せている。周囲の大気が、負の感情で澱んでいる。

 何か悩んでいるのだろう。


『鷹よ。私が気を付けておくから、安心して手紙を届けなさい』


 そう念じ、風に託して後を追わせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ