表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EN~RIN  作者: 不動坊多喜
第1部 第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/121

(63)対戦③

 一方、門へ向かったヴィミのチームは、ロッシュと別れた後、特に障害も無く門にたどり着いた。



 サラナーンは、太古の干ばつで多くの人が死に絶えたため、どこの街も人口が少ない。しかも、大陸のあちこちに散らばって住んでいるので、交流も少なく、争いもなかった。

 そのため、街の外郭は、盗賊やオオカミの襲撃から人々を守るためのもので、戦に備えたものではなかったし、門番もどちらかと言うとのん気に構えていた。


 外郭の門は生活の門、日の出とともに開き、日の入り時に閉じる。

 出入りには、村の長が発行した通行証が必要で、門番の仕事は、そのチェックだった。

 ロッシュは、入る時は兵士と一緒で、出る時は門を通らなかったので、通行証のことは知らなかった。

 そのため。ビパルも知らなかったが、上手に賄賂を渡して入れてもらったと言う。


 作戦会議では、昼間、ばらばらに門から入り城に集まる、という案も出されたが、通行証が無いので無理だと分かった。それに、日中に戦闘が起これば、街の人を巻きこみ、彼らを敵に回してしまう恐れがあった。そうなった場合、たとえ皇太后を打ち取っても、その後を考えると得策ではないと判断された。

 そういう訳で、日の出前、街がまだ眠っている時間帯に門を開け、攻め入ることに決まった。



 木製の大きな門は、太く長い角材を閂とし、錠がぶら下がっている。


「鍵がいるな」

「番小屋にあるんじゃないか」

「あいつが持っているとか」


 そのあいつは、不寝番と思われたが、門の前に座り込み、眠っていた。

 寝込みを襲うのは気が引けたが、頭をぶん殴り気絶させる。物陰に引きずり込み、衣服を改めたが鍵らしきものはなかった。仕方なく、縛り上げて転がしておく。


 番小屋の扉をそっと引く。かぎは掛かっていなかった。中はしんとして、起きている者はなさそうだ。

 居眠り不寝番もそうだが、あまりの不用心さが、かえって気味悪かった。


 足音を忍ばせて入り込むと、さっと様子を伺う。

 真ん中にテーブル、壁際に流し台、奥の仕切りの向こうは寝室か。扉のない入り口から、壁に設えた三段ベッドの端が見える。振り返って、入口には盾が五枚並んでいる。一枚分空きスペースがあるのは、不寝番の分だろう。

(敵はあと五人。で、肝心の鍵は?)


 探し物は、すぐ目の前の壁にかかっていた。忍び寄り、それをフックから外す。

 途端に、警報音が鳴り響いた。

 門番たちが飛び起きる。


 ヴィミは、鍵をすぐ後ろにいたビパルに渡すと、剣を抜いて立ち向かった。

「四人残れ! 他は門を開けろ」

 ビパルは表に飛び出すと、ヴィミの言葉を仲間に伝え、自分は門に走った。腕自慢の四人が番小屋に急ぐ。

 既に、ヴィミは剣を交えていた。入口に仁王立ちし、敵を室内に閉じ込めようとしている。狭い室内では四方から攻めることができない。ここさえ守ればと、ヴィミは奮闘した。

 ところが、側面から、急に敵が現れた。裏口から出たのだ。

 待機していた味方が反応する。


 ヴィミも外に出ると、相手を誘い出した。広い場所の方が思い切れると考えたからだ。

 腕前は、ヴィミの方が上だった。それは、合わせてすぐ分かった。しかし、これは稽古とは違う。稽古では、刃に粘土を被せて使っていた。今、むき出しの刃で同じように振るえば、確実に相手を傷つけてしまう。それが怖かった。どうしても躊躇してしまう。


 幸いだったのは、相手も同じだったことだ。

 これまで、皇太后を相手に反乱を起こすような者はいなかった。レーザーの脅威に、民衆の不満は押しつぶされていた。そのため、兵たちはのほほんと暮らし、剣の訓練を怠っていた。

 結果、どちらも決められない、だらだらとした打ち合いが続けられた。


 それを破ったのは、やはり、レーザーだった。


 その頃ビパルは、鍵を開け、閂を外し、皆と一緒に門を押し開こうとしていた。その右肩を、敵兵の一人がレーザーで撃ち抜いた。

 悲鳴とざわめきに振り返ったヴィミが見たのは、崩れ落ちるビパルの姿だった。


「パル」

 湧き上がる怒りが、振り下ろされる剣を弾き飛ばし、相手の脇腹を切り裂いた。返り血を浴びながら向かったのは、レーザーを持つ男だ。


 男がヴィミに向けて銃を構える。人差し指がトリガーを引く、それを見逃さず右に飛ぶ。銃口がそれを追う。ヴィミは、着地した右足で地面を蹴ると、左前方に低く飛び出した。地面に倒れ込むように一回転すると、立ち上がりざま今度は上に飛んだ。

 男はそのスピードについて行けなかった。銃口が下を向いた時、ヴィミはもう空中にいた。そのまま、刃が振り下ろされる。男の手首が、銃を持ったまま転がった。それを、ビパルの方に蹴飛ばす。

「パル。これ使え」


 ビパルは、何とか体を持ち上げ、地面を滑って来る銃をキャッチした。手首を外すと、レーザーを左手に持ち、敵に向けて撃つ。胸を狙ったつもりが腕にあたり、敵は剣を落とした。

「うわぅ」

 その威力と、狙いの難しさに、撃ったビパルが慌てた。


「パル。無理するな。味方に当たると大変だから、身を守るだけにしとけ」

 敵に止めを刺したヴィミが、ビパルを助け起こしながら言う。

「もうすぐジャイたちが入ってくる。巻き込まれない位置で待機しておけ」

 ビパルを壁際まで連れて行き、また戦闘に戻る。


 戦っていない者は、力を込めて門を押す。重い扉が、音を立てて開く。


 大きく開かれた門から、ジャイたちがなだれ込んで来た。

「お疲れ様。上手くやったようですね」

「全然うまくない。ビパルがやられた。救護班を向けてくれ」

 ジャイの指示に、救急カバンを持った少年が走る。


 空は白み始めている。街の風景に色が蘇る。その中を、城に向かって走る。

 騒ぎは既に知れ渡り、街のあちこちに野次馬が顔を出す。

「死にたくなかったら道を開けろ!」

 ヴィミの怒鳴り声に、皆、後ろに下がる。


 城門が見えてきた。

「止まれ」

 突然ヴィミが叫ぶ。

 勢いづいていた一行は、何事と、足を止めた。


 目の前に、十段の階段、その上に門が見える。そして、閉じられた門の前には、レーザーを構えた近衛兵が並んでいた。


「盾!」

 ヴィミが叫び、盾を構えるのと同時にレーザーが光った。


 ヴィミの盾が、レーザーを弾く。

「盾を持って横に並べ」

 すぐに味方が反応する。盾でバリケードを築き、その後ろに身を隠す。


 敵もすぐ反応した。右と左と正面と、三手に分かれ、別方向から攻撃してきた。更に、門柱上部の物見からも攻撃が降って来た。


 対レーザー訓練を積んで来たが、撃ち手はロッシュ一人。こんな対戦は想像もしていなかった。


 全員固まったまま、じりじり後退していく。盾の金属は薄い。そのうち溶けてしまうだろう。


 その頭越しに、今度は何か投げ込まれた。瞬間的に危険物と判断したヴィミは、それを蹴り返した。空中で、手榴弾が爆発した。破裂した破片が降って来る。盾を思わず上向ける。地面との隙間に、レーザーが侵入してくる。足を撃たれた仲間が転がる。バリケードに穴が開く。別の味方が代わりに前に出る。


 皆、死力を尽くしている。連携も取れている。

 しかし、見たこともない兵器の出現に動揺していた。


 ロッシュは、まだか? 何を手間取っているのだ?

 これ以上新たな兵器が繰り出されたら、耐えられないかもしれない。

 味方の士気が下がり始めた。あとどれくらい持つだろうか。


 悪い考えばかりが頭をよぎる。


 そして、それは現実となる。


 虫の羽ばたきのような奇妙な音が響いて来た。

 空を見る。大きな虫が三匹、人を二人ずつ乗せて飛んできた。その一人が体を乗り出す。

「上だ!」

 ヴィミが盾をかざし、レーザーを防ぐ。


「前と上と、分担しろ」

 ジャイの声に、後ろにいた味方が盾を持ち上げ、空からの攻撃を塞ごうとする。しかし、盾をかざせば敵が見えない。動き回る相手に、味方は混乱した。


(もうダメかもしれない)

 ヴィミが諦めかけた時だった。


 城門の内側から、大きな音が聞こえてきた。

 敵も味方も、一斉に振り返った。

 誰かが叫んだ。

「見ろ。塔が崩れていく」


「やったぞ」

「ロッシュ万歳」

 味方は勢いを取り戻した。反して、敵は慌てだした。


 ところが、喜びに沸いている間に、今度は塔が下から組み上がって来た。タケノコのようにぐいぐい伸びて、あっという間に元通りになった。


「皇太后さまの魔法だ」

「さすがだ」

 今度は敵が飛び上がり、味方は意気消沈した。


 敵の総攻撃が始まった。

 味方は道の真ん中に固まり、防戦一方。そして、とうとう盾に穴が開き始めた。


(ここまでか)


 ため息交じりに見上げた空で、飛行艇が一機、突然火を噴いた。

 その爆音に、みんな一斉に顔を上げた。


 昇り始めた太陽が、城門の上に立つ人影を照らし出す。その人は、両手を大きく振っている。そのたび、銀の髪が輝く。


 ヴィミも大きく手を振り返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ