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48. 爆誕! 巨大人造インク


とある国にて。

秘密裏に進行していた研究があった。

その名も――人造魔力生成プロジェクト。


この世界には、“魔”という特異なエネルギーが存在する。

現代における電力のように、生活を支える便利な力でありながら、魔物を祓う浄化作用も併せ持つ、不思議なエネルギーである。


だが、この“魔”は一部の人間にしか宿らない。

魔力がもっと普遍的になれば、社会はさらに発展するだろう。

では、魔は増やせるのか? 研究者たちはその命題に挑んだ。



まず、魔とは何なのか。


魔は、“インク”と呼ばれる蛇型の魔物を祓う力を持つ。

インクを討伐すると、“蛇玉”と呼ばれる魔の器が残る。

この蛇玉に魔力資質の高い者が力を注げば、“水晶”が形成される。

水晶は兵器や機械の動力源として利用可能――つまり、魔はエネルギー資源でもあるのだ。


だが、ここで一つの疑問が生じる。

インクもまた、魔を糧にして動いているはずなのに、なぜ人の魔で討伐できるのか?


ここに仮説が立てられた。

「人に宿るのは正の魔、インクに宿るのは負の魔ではないか」


正の魔は、裕福な家庭に生まれた子供に多く宿る傾向があるという。

一部の宗教団体では、子供たちを集めて幸福な生活を与え、魔力の増幅を図っているそうだ。

しかし、個人レベルで生成できる魔の量には限界がある。


それならば、逆に負の魔を利用すればいいのではないか?


古くから、“人心の不安がインクを生む”という説がある。

ならば、意図的にストレスを与え、負の魔を人から生み出せば――。


だが、実験の初期結果は芳しくなかった。

負の魔は生まれても、人の内にとどまらず、霧散してしまうのだ。


そこで“器”が必要とされた。

負の魔を蓄積する装置として、砕いた蛇玉を用いることが提案された。


初回の実験は失敗に終わる。

蛇玉の欠片が置かれた場所に、小さなインクが発生してしまったのだ。


「うわっ、来たっ、来たあっ! あっち行けー!」

足元に絡みつく黒蛇に悲鳴を上げる若い研究員。

その様子を見た研究長は、ため息まじりに言った。


「ほら、さっさと正魔力銃(低出力)で撃ちなさい」

同僚たちが白光のビームを照射すると、小さな黒蛇は音もなく蒸発した。


腰を抜かして座り込む研究員を尻目に、研究長は唇を歪めた。

――無作為に現れるはずのインクが、蛇玉を起点に発生した。

これは失敗ではない。制御の第一歩だ。


以後、改良が重ねられた。

不純物を徹底的に排除した環境下で、蛇玉は黒い輝きを放ち始める。

負の魔が、ついに蓄積されたのだ。


「インクを生まず、魔だけを蓄えるには――絶対的な清浄空間が必要です」

研究発表は喝采を浴び、研究長は栄光のポストに迎えられた。


かくして、“人造魔力生成プロジェクト”は本格始動する。

囚人や債務者など、素性の怪しい者たちを集め、劣悪な環境で強制労働に従事させる。

隣接する魔力プラントでは、蛇玉を内蔵した発魔機が稼働していた。


膨大な魔力が、ついに安定して生産されようとしていた――その矢先、事件は起きた。


原因は、些細なミスだった。

蛇玉を収めたクリーンボックスには、一粒の塵も許されない。

だが、現場には焦りが漂っていた。


「おいこら、作業が遅れてるぞ!」

「……ったく、毎日掃除してんだろ。今日くらいサボったって――」

積み重なる気の緩み。積もる塵。そして――負の魔。


突如、プラント内に異常が発生する。

蛇玉から発生したインクは、常軌を逸していた。


爆音。振動。破壊。


爆散した発魔機の中から現れたのは――

そびえ立つ、巨大な黒い蛇。

濃密な闇に包まれたその身からは、もうもうと黒煙が噴き出していた。


「急げ! 正魔力砲を持ってこい!」

正魔力銃(高出力)が白いビームを発射する。だが、黒煙に阻まれインクには届かない。


「砲台、セット完了です!」

「起動、出力安定――撃て!」


――ごおおっ!


どぉーんっ!

真っ白な光が巨大インクを直撃する。


「やったか!」


(研究長、それは言っちゃダメだってば!)


研究員たちの心の悲鳴をあざ笑うかのように、黒煙の中から姿を現す蛇。

無傷だった。

巨大蛇は、手当たり次第に建物をなぎ倒し、破壊を始める。


「退避! 全員退避――!!」


研究員たちは逃げ出した。

プラントは崩壊し、黒蛇はさらなる獲物を求めて進む。


仮に、この国がもう少し幸せに満ちていたら、事態はここまで悪化しなかっただろう。


貧困、過酷労働、差別、重税……人々の日常から生まれる恨みつらみ苦しみを糧に、人造インクは成長する。



遂にビルほどに成長した怪物は、大きく吠えた。

それはまるで、この国に虐げられた全ての人々の怨嗟の声のようだった……



伝令「巨大インク、ドゥルミー街へ直進中。現在も成長を続けており――到着は、最速で七日後」

フーラ「……七日。あまりに短いわね」


ドゥルミー街、滅亡まで──残り7日。

果たして垂たちは、“滅びのカウントダウン”を止められるのか……!?


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