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41. 悩めるシスター:アンジェ【前編】

布教に全力!だけどイビキが大問題!?

ちょっとお騒がせなシスター・アンの登場です。

【※アン視点です】


私、アンジェと申します。

教会のせいj……ごほんごほん、敬虔なるシスターですわ。


先日、ちょっとばかりのっぴきならない事情がありまして、修道院を抜け出してしまいましたけれど、それでも神の教えを信じる信徒に変わりはありませんのよ?


お聞きくださいな。教会の教えはとても素晴らしいものですの。

『健全なる心身』──それをすべての人々に行き渡らせること。

この崇高な使命のために、私たちシスターは選ばれ、日々努めておりますの。


シスターは、“魔”という力を多く持つ者から選ばれますのよ。

この“魔”は、世界に蔓延るインクという魔物を祓うために必要不可欠な力なのです。

貴族のご令嬢に多く現れるものなのですが、幸いにも、孤児だった私を教皇様が見出してくださったのですわ。


『健全なる心身には、大いなる魔が宿る』──

そう信じられているがゆえに、私たちは日々心身を鍛え、より大きな“魔”を宿すことが求められますの。


たくさんの高貴で素晴らしい女性が集う中で、なぜか私がいちばん“魔”を宿したことには、自分でも少し驚きましたわ。

中には、孤児出身の私を快く思わない方もいらっしゃいましたけれど……。


でもサラが、こんなふうに励ましてくれたんですの。


「神の前に出自など関係ありませんわ。力が与えられたのなら、ただ使命を果たすのみです」


ああ、サラは私のルームメイトで、本当に素敵な女性ですの。

空色のさらさらした長髪に、いつも凛とした佇まい。

まさに貴族女性の鑑のような方で、私の憧れであり、お手本ですわ。


……あら、少し話が逸れてしまいましたわね。


“魔”に秀でていることで、私はシスターの代表として重責を担うことも多いのです。

特に、インクが大量発生した地域から教会に応援要請が届いたときなどは、“勇者様”と共に戦地に赴き、魔を渡して祓いの儀を行いますの。


だからこそ、日頃からこの身に宿る“魔”をしっかり育んでおかねばならないのですが……。


「アンジェ、いい加減にしてください。あなたのイビキのせいで、私まったく眠れませんわ!」


いつも優しく落ち着いたサラが、空色の瞳を吊り上げて、私を睨んだのです。


「すー、すー……ふが、ふががごっ……!?」


夜中、ものすごい音に自分でも飛び起きてしまいました。

どうやら、私のイビキだったようですの。

そのせいで、私もサラもすっかり寝不足。


『健全なる心身』が寝不足で損なわれてしまい、前回の“魔の測定式”では、ふたりそろって随分と低い数値を出してしまいましたの……。


このまま次の測定までに魔力が戻らなければ、私もサラも今の地位から格下げになります。


なにより、人々のお役に立てないし、私を見出してくださった教皇様にも申し訳が立ちませんわ。


なんとか眠れるよう、神父様に相談してお薬をいただいたり……枢機卿のお部屋にあったお酒を、ほんのちょっぴり拝借してみたりもしましたの。

最初はそれで少し眠れるようになったのですが、効果は長く続かず、イビキはどんどん悪化してしまって。


(うう……頭が痛くてぼんやりしますわ……)


“魔”は戻らないし、お勤めにも身が入らず、どうにもこうにもなりません。


そんなとき、見習いのシスターから面白い話を聞きましたの。


「最近、ドゥルミーの商店街には“安眠グッズ”が溢れてるって」


“イル”と呼ばれるその子は、最近修道院に入ったばかりの見習いで、こっそり息抜きに街へ出ているのだとか。

しかも、高位のシスターすらも、そのプレッシャーに耐えかねて時折街に出ているそうなのですわ。


確かに、私たちも申請さえすれば外出できますけれど、そのたび神殿騎士の方々がついて回るものですから、ちっとも気が休まりませんものね。


とにかく私は、イルに協力してもらって、その“安眠グッズ”なるものを探しに街へ行こうと決意したのです。


そしてそこで──私はスイに出会ったのでした。


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