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33. 救援


ガタゴトと、激しい揺れで目が覚めた。


(痛ったぁー……)

煙を吸ったせいか、頭が割れるように痛む。顔をしかめつつも、なんとか周囲を見回した。


樽や木箱が積み重ねられ、ロープで固定されていた。

ついでとばかりに、自身も樽に縛り付けられている。


馬の蹄の音がすることから、馬車で運ばれる途中のようだ。


(どれだけ経ったんだろう)

時間経過がさっぱり分からず、不安になる。


それにしても酷い揺れだ。

体中が痛い。全身打撲になってそうだ。


だからだろうか……



『−430』



見たことのないマイナスの青数字が叩き出された。



「ぱりんっ」

どこかで何かが砕ける音。


俄に周囲が騒がしくなった。


「なんでバレた!?」

「おい、イルーシャの奴がいないぞ」

「あいつ、裏切りやがったな!」


怒声に悲鳴。


「落ち着け、全員武器を……はぁっ!?」

「そっちもか? 水晶が砕けてる!」

「誰だ……まさかこれもイルーシャの仕業か!?」


蹄と馬のいななき。

金属同士が打ち合う音。


「どおぉんっ!」

轟音と共に、すいの視界が回転した。

馬車が横倒しになったのだ。

縛られた樽ごと壁に叩きつけられ、息がつまる。

木箱同士に隙間ができて、潰されなかったのが幸いだ。


「撤退だ! 誰か荷台の目標を連れてけっ!」

荒々しい足音が近づき、垂は恐怖で縮こまった。


荷台の戸が開けられる。

あごひげの強面が顔を出した。

血のついたナイフにひっと叫ぶが、身動きが取れない。

無遠慮に伸ばされる手に、絶体絶命――



ぐらり、と強面が仰向けに倒れていった。


狭い荷台に、一筋の風が舞い込んだ。

現れたのは、懐かしい黄金色。


「……フミンさんっ!!」


普段表情の薄い狩人が、必死の形相で垂に駆け寄った。


「大丈夫か? すぐ解いてやる」

フミンは手早く垂を縛る縄を切った。


「フミンさん、俺……」

すぐに立ち上がろうとするが、力が入らない。

今にも泣き出しそうなすいを、フミンはさっと抱き上げた。


「もう大丈夫だ。安心していい」

そう言ってフミンは手近な布を垂に被せた。


何も見えないままに運ばれていく状況に、さすがの垂も困惑した。


「あ、あの、さすがに歩けるというか、なんで目隠しを……?」

「気にするな。疲れただろう。お前は少し寝た方が良い」

外の惨状を垂に見せるべきではない。

そう判断したフミンは、柄にもなく優しい声で語りかけた。


ガッシリとした両腕でお姫様抱っこ状態だ。

密着する体温に、恥ずかしさで頭が沸騰しそうだが、とんとんとリズミカルに背中を叩かれているうちに瞼は自然と閉じられていった。


しばらく眠った垂の背中を叩き続けるフミン。

「起こさないように頼む」

彼はそっと垂を衛兵に預けると、馬に飛び乗った。


「残党を処理する」

先ほど垂にかけたものとは異なる、凍てついた声。


"冷徹の狩人"の狩りは、これからだ。

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