第3章:大学校受験までの陰鬱な日々(2)
・・・例の「三社面談」から数日後のこと。
職員室付近の廊下で、ぼくは藤田先生に出くわした。
彼が、そんなぼくに向かって放った言葉が、コレだ。
「・・・よかったね、行くところが見つかって。」
文言のみを読む限り、
ぼくに素直にエールを送ってくれているような感じがするだろう。
でも、そうじゃない。
・・・そうじゃないんだよ。
言葉のイントネーション、
そして、先生のゆがんだような笑み・・・
ああ、そうとも。
先生はぼくに、「皮肉」を言ったんだよ。
彼なりの、「精一杯のアイロニー」のつもりだったのさ。
内心、きっと、
「この落ちこぼれのできそこないめが! 俺に恥をかかせやがって・・・。」
と思っていたにちがいない。
でも、
先生のいいなりになって、
興味も関心もない公立大学を受けるつもりも、
アホづら下げて、まじめに通うつもりもなかった。
まぁ、
学費の安い「行き先」が見つかったこと自体は、
けっして悪いことじゃないさ。
厳しい社会にオールを漕ぎだす前に・・・いったん、
「モラトリアム(= 猶予)期間」を設けることができたんだからね♪
あながち、あなたのおっしゃることは、
まちがっちゃいない。
・・・残念ながら、そのときのぼくは、経済同様、
農業にも、まったく関心なかったけどね・・・。