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kurokuro 短編小説集

宇宙から佐藤が降ってきた

作者: kurokuro

SFっぽいの

【#1】



 星空を見ていた。只、何と無く公園のベンチから見ていた。何と無く、右手を星に差し出す静寂の時間。音一つと無い時間。深夜二時半、高校生の俺にとって補導対象の時間でもあった。


 「あ~あ」


 何もねぇ。何も起きない。退屈な日々に飽きた俺は、謎の反抗精神と共に外に来たのにも関わらず、何も起きなかった。


 「・・・んぁ? 流れ星か?」


 創作物ではよく見る流れ星。現実では意外と見れない流れ星を、淡々と観ていた。ゆっくりと進むその姿に見惚れていた。


 「何か、違くね?」


 こちらに、向かって来ていた。流れ星ではなく、隕石なのではないかと頭によぎる。咄嗟にベンチから立ち上がり、逃げる体勢をとる。だが、流れ星は目前で消えてしまった。


 「・・・・・・帰るか」


 何事もなかったかのように、俺は家へと足を運んだ。




【#2】




 昨夜、正確には本日の午前二時半に起きたアレは夢だったんじゃないかと、午後十二時五十分から始まる昼休みにて、ふと思う。根拠はある。まず、余りにも変化がないことだ。アレは普通じゃない。日常をブチ壊す何かだ。しかし、学校では何の噂もされない。どれだけ耳を傾けても、聞こえてくるのは昨日のドラマの話のみ。俺だけの体験かと思ったが、そうなってくると、只の俺の夢になる。だってそうだろう? 俺以外に証言する者が居なければ、それは只の妄言である。故に俺は、最低限の自尊心を守るために夢にしておく。ああ、アレは夢だ。そう、自分に言い聞かせる。

 さて、そろそろ教室には居れれないな。理由は簡単である。俺はぼっちだ。ぼっちの俺は、昼休みと言う絶好の友人との休息の時間に置いて、邪魔なのである。では、俺は何処に行くのか。図書室? あそこは前学期までは使えたのだが、今学期からは飲食が禁止になった。姉の手作り弁当が食べられないのはまずい。以前、持久走の後で食欲がなく、食べずに持って帰ったことがある。その際に姉は、俺が虐められているのではないかと疑い、学校に連絡したのだ。俺の姉は、少々ブラコン気味な所がある。故に、手作り弁当を食べない訳にはいかない。ならば、何処に行くのか。

 それは━━━


 「君ィ最近ここで昼食を採っているだろうォ」


 屋上へと繋がる階段。最近の俺の昼食スペースに、一人の女子生徒が座っていた。フム。無言で去るか。勿体無いが仕方あるまい。俺に女性耐性が無いのもあるが、そもそも、先に来ていきなり話しかけてくるのが怖い。意味が分からん。理由を話されても理解できない自信がある。


 「流れ星を視たろ? 教えてやる。アレについて」


 足が止まる。心臓が高鳴る。無限の興味が湧き出る。


 「フハッ、取引だ。教えてやる代わりに、私に手を貸せ」


 「何をするかによるな。それが犯罪なのであれば、残念だが今回の話しは無しだ。警察のお世話になる訳にはいかない」


 「補導の対象時間に出歩いて居たのにか?」


 「何故、それを?」


 「教える義理はない」


 「あなたは、俺から信頼を勝ち取らなくてはならない。じゃなきゃ、さっきも言ったが今回の話しは━━━」


 「観ていたからな」


 「何処で?」


 「意外と星の明かりで、遠くから視えるんだ」


 ・・・一応納得しておくか。


 「・・・何をすれば良い?」


 「目を開けていろ。閉じるなよ?」


 そう言うと彼女はグイッと距離を近づけ、手を伸ばす。左眼に向かって。


 「痛ッッたぁ!」


 あまりの痛さに腰が抜け、涙も溢れ出す。


 「なッ何をしたァ?」


 「カメラを入れた。ちなみに、ソレを再生するには、私の脳に挿れなくてはならない」


 ・・・待て待て待て、何一つ理解できないぞ。俺の眼にカメラを入れた? 何を言っているんだコイツは? 頭が沸いているのか?


 「フム。理解できていない様だな。だが、理解する必要はない。君ィは私を撮影していれば良い。そうしたら、約束通り教えてやる」


 「アンタからすれば理解できていなくても良いかも知れないが、俺からすれば必要な事なんだ」


 「つまり?」


 「本当にカメラを入れたのか?」


 「ああ」


 「どうやって?」


 「私が宇宙人だからだ」


 「ウチュ、宇宙人ッ・・・何のために?」


 「思い出作りの為に」


 ・・・駄目だ。思考を巡らせ続けろ。決して止めるな。駄目だ。理解できなくても、今は情報を引き落とせ。駄目だ。冷静に確実に処理していけ。駄目だ━━━


 「━━━駄目だ。オーバーヒートした」


 「地球人の脳では限界だったか」


 「・・・あなたは、思い出作りと言った。転校でもするのか?」


 「ああ。明日の日の出と共に、地球はこの世から去る事になる。長い付き合いなんだ、地球とは。だから、この世から失くなっても覚えていたい。その為に手っ取り早くするには、物にして残すことだろ?」


 この答えは優しさでも何でもない。只、何と無く━━━


 「分かった、手伝おう」


 「良いのか? 地球が滅びるんだぞ? 止めたりとか・・・いや、よろしく」


 こうして、昼休み終了五分前をお知らせするチャイムと共に俺たちの取引は成立した。


 「遅刻決定だな。ここから走っても間に合わない」


 「ああ、そうだ。撮影だが、放課後ここに集合な」


 「ん? 良いけど何を撮影するんだ?」


 「遅刻決定なんだろ? 気にしてる場合か?」


 大事な所ばかり外してくる。聞けば教えてくれるんだろうが━━━


 「アンタ嫌なヤツだな」


 「・・・さっきから私の呼び方がコロコロ変わっているぞ? 統一しないか?」


 確かに、そうだが。


 「名前を教えてくれよ」


 「 “佐藤” だ」


 「偉く素直に教えてくれたな、佐藤」


 「不便だからな。ほら、教えてやったろ、さっさと行け」


 埃を払うかの様に手を振られた俺は、教室へと潔く帰った。




【#3】




 佐藤と別れてからは、何事もなく日常を送れた。黒板に書かれた事を、淡々とノートに書き写す。本題から脱線した雑談は聞き流し、また書き写す。この作業の繰り返し。故にだろうか? 気付けば六限目が終わり、帰りのSHR(ショートホームルーム)が始まっていた。まぁかといって、コレもまた聞き流すのだが。仕方ないだろう? 優等生の俺にとっては、聞くに値しない話なのだから。とまぁこんなことを考えている内に、SHRが終了し下校の挨拶をするための号令が出された。


 『さようなら』


 小声で挨拶した俺はすぐさま教師を出、約束の地へと向かう。廊下なので走らず、しかし一歩一歩のスピードは速く。あの場所に近づけば近づく程、心が踊る。高揚する。早く、一秒でも早く、本の一瞬でも早く到達したかった。


 「息が上がっているぞ? 走ったのか?」


 「早歩きだ」


 「ふ~ん。まぁいい。てれ~ん、コレな~んだ」


 胸ポケットから、鍵を取り出し見せつけてくる。


 「鍵だな」


 「馬鹿でも分かる。何の鍵だって、聞いてんだ」


 ・・・ん? そうか? そう言ったか? 今のそう言う意味で言ったのか?


 「知らん。分からん。どうでもいい。さっさ答えを言え」


 俺は名探偵でも何でもないんだ。鍵を見せられてどこの鍵だなんて分かるはずがない。


 「屋上の鍵だ」


 屋上の? 良く先生が貸してくれたな。いや、まさかな━━━


 「奪ったのか?」


 「それに近いな」


 冗談のつもりだったのに。ああ、優等生故に色々許されていたのに。俺の高校生活もここまでか。


 「で、本当はどうやったんだ?」


 「この小石でな。ちゃちゃと」


 胸ポケットから緑色の小石を取り出す。何でも入ってるのか、その胸ポケットは。


 「何の変哲もない小石。実はこれが~?」


 「命令できるんだ。何でも何回でも」


 ・・・・・・は? 何言ッは? 命れッ何でも!? んな、最高のアイテムがあるのか? あっていいのか? 色々不味いんじゃないのか!? それに何回でも使えるのか!


 「俺にもお一つくれないか?」


 決して下心がある訳ではない。決して。


 「くだらん事を考えているんだろうが、地球人では一つが限界だぞ?」


 回数はに関しては、裏技的な物を発見するだけだ。


 「それでもいいから、な?」


 「・・・気が向いたらな」


 シヤァァア! 心の中でガッツポーズを決める俺が居た。


 「さて。雑談はここまでにして行くぞ、屋上に」


 そう言うと佐藤は屋上へと足を運び出す。俺も続いて動き出す。


 「なぁ佐藤。屋上で何を・・・・・・思い出作りをするって言っても、何かこう、特別なことでもするのか?」


 誰かが “撮影” をしなくてはならない何か。


 「私を撮るだけで良い。いつもと何ら変わりのない、代えることもできない、そんな日常を撮れば良い」


 屋上に行くことが “日常” か。生きている世界がとことん違うな。だがまぁ、ソレを言うのは野暮ってモンか。


 「俺は視るだけで良いのか?」


 「ああ。視るだけで良い。君の視点、君が見えている世界その物が、映像として出力される」


 「・・・一つ、良いか?」


 屋上へと続く階段を登り切った先にある、扉の前で、聞く。


 「カメラは取れるんだろうな?」


 「ん? ああ、撮れるぞ。心配するな」


 「・・・そうじゃなくて、取り外せるんだよな?」


 「そっちも心配するな、ちゃあ~んと取れる」


 なら良いか。


 「悪い、先へ行こう」


 俺がそう言うと佐藤は扉を開けた。その瞬間、突風が吹き荒れる。その突風の中を平然と佐藤は進む。そして、クルリと振り向き、手を差し出す。


 「手を握ってやろうか?」


 「いらねぇよ」


 誘いを断り、足にへばり付く服を退けながら、屋上へと出る。


 「不思議だよな。出てしまえば、風なんか吹いちゃいない」


 「重力でも働いているんだろう」


 「んな適当な」


 「宇宙人が言っているんだ、信じろ」


 滅茶苦茶だ。


 「んで、どう撮るんだ? ポーズでもするか?」


 「ん~そうだな。ピースでもするか?」


 「ハートはどうだ? ラヴ&ピースってな」


 「ハートぉ? ハートはなぁ」


 「良いじゃねぇか。どうせ明日には地球は滅んでんだろ? だったら最後の記念として、な?」


 恥を捨て、ハッチャケるのも良いだろ?


 「不思議に思っていた事があるんだが、良いか?」


 「突風の話か?」


 「違う。お前の事でだ」


 俺は佐藤の方が不思議で不思議で仕方ないけどな。


 「君は明日、地球が滅ぶと知って置きながらソレを止めようとしない。それが不思議だ。普通止めるだろ?」


 「・・・どうせ無理だろ。俺はスーパーヒーローでも何でもないんだ。それに・・・現実を変えようともしない、変えれると分かっているのにも関わらず、変わらない。けれど、夢は観ちまう只の高校生。そんな高校生は、地球が滅ぶと知っちまっても、目の前の事しかできねぇの」


 「つまり?」


 「佐藤のカメラマンだ」


 俺はスーパーヒーローじゃなくて、佐藤の、宇宙人のカメラマンだ。


 「・・・そうか。ん、なら撮ろうか」


 「で結局ポーズするのか?」


 するならするで、拘りたいし。


 「いいやしない。自然体で頼む」


 「本当に良いのか?」


 「ほんと」


 まぁ当の本人が言うなら、良いか。


 「・・・・・・なぁどうやって撮るんだ?」


 カメラならどこかに起動するボタンがあるはずだ。


 「入れた時から常に撮影されている」


 脳が理解を拒もうとする。しかし、思考は張り巡らされる。なるほど。


 「俺は捕まるのか」


 「やましい物を撮っていなければ捕まらないだろうが。この阿呆。それに、再生するには私の脳に挿れなくちゃならんと、言っただろう?」


 それもそうでしたね。


 「あっそれともう一つ。君の視界が映像として出力されるんだ。君が視界を動かせばブレるからな」


 「視力が悪かったらどうするんだ」


 「ぼやけて視えるのか?」


 「あいにく美人には眼がなくてな」


 「それじゃあ困るな」


 「本当、困った色眼鏡だよ」


 「メガネを掛けていないのに?」


 「色眼球ってな」


 「只の色もぅ」


 「今の時代アウトだぞ、ソレ」


 「言われたくなけりゃ、しっかり撮れ」

 

 確かに冗談が続きすぎたな。ああ、だがこれだけはハッキリさせないと。


 「佐藤が美人なのは、本当だ」


 「ほう “美人か” 」


 何だよ、思った事を言っただけだろ。


 「そんな顔をするなよ。ただ “人” かと思ってな」


 「・・・さぁ知らね」


 「誰も聞いてない」


 「いいから、続けるぞ~」


 それから夕日が出るまで、俺は佐藤を観続けた。




【#4】




 「十分だ。それに、日も暮れる・・・最後の夜だ。これ以上付き合わせれない」


 佐藤は夕日を眺めながら、そう告げる。


 「佐藤が言うなら、終わろう・・・カメラは入れた時みたいに取り出すのか? だったら優しく頼むぜ。痛いのはイヤだからな」


 本当に優しく頼む。あの痛みは二度と味わいたくない。


 「こっちを視ろ。私の眼を視ろ」


 「痛くないか?」


 「痛くない」


 そうか。なら、視させて貰うよ。


 「・・・終わったぞ。インストール完了だ」


 「視つめ合うだけでいいのか、ハイテクだな」


 「はい終わり、帰れ帰れ」


 「るせぇ帰るわ」


 ・・・ん。名残惜しさとかはない。でも、うん。眼、キレイだったな~


 「オイ! 餞別だ! 受け取れ!」


 うおっいきなり投げんな・・・よっと、取れたから良かったけど・・・


 「良いのか?」


 「一回キリだからな! 使うときに ❰我が望みを叶えよ❱ って言うんだぞ!」


 「ありがと! 大切に使うよ」


 そうお礼を言って俺は校内へと続く階段を降りた。小石を右手に握りながら。

 一回キリか。明日の朝には地球は滅亡している。だとしたら使うなら今夜、それか日の出前。何と言うか、欲しいと思っている物を手に入れたら途端にどうでもよくなるのは、何でなのだろうか。考えても無駄だろう・・・どれだけ考えても明日には死んでるんだ。と、なれば犯罪的行為か? どうせ皆知らない間に死ぬんだから、最後くらい良いんじゃないか・・・いや、流石にダメか。きっと佐藤は俺がそんなことに使わないと見て渡してくれたんだ。そう言う事にして、蓋をしよう。

 それに・・・最後くらいカッコよく死にたいしな。




【#5】




 屋上から真っ直ぐに学校の玄関から出た俺は、その足で家に帰っていた。何も変わらない。いつも通り帰っていた。今日の晩ごはんを楽しみにしながら帰る、そんな毎日と同じ帰り道だった。


 「鍵、閉まってんじゃん。メンドクセ~」


 学校と家までの距離はさほど遠くなく、あっという間である。


 「帰ってんだか帰ってないんだか」


 日が沈みかけているので、姉が帰っているかと思ったが予想は外れたな。俺はそう思いながら玄関の扉を開ける・・・どうやら予想通りらしい。靴が置いてあった。姉の。


 「ただいま」


 聞こえるか聞こえないか位の声で放つ。大丈夫。姉は反応する。


 「帰ってきたか。遅かったな」


 「色々あってな」


 「色々って?」


 「ん~友達と、思い出作り」


 思い出作りなのは間違いではない。問題は地球最後のって所だが、ところで何だその顔は? 


 「何でそんなに驚いてる?」


 「いや、お前が “友達” って言うから」


 ・・・確かに、今までそう言う話ははぐらかしてたな。いや、居ないだけなのだが。


 「   そっか。友達か   大事にしろよ」


 珍しく、姉がまともに視えた。


 「分かったよ(あね)さま」




【#6】




 それから風呂に入り姉のご飯を食べネットで四時間ほど暇潰しをした後、俺は自室で就寝をするために布団に入っていた。

 目を閉じれば今日一日のことを思い出す。頭の中がごちゃごちゃになって行く。そして、もっと別のことを話せば良かっただとか、こんな動きをしとけば良かっただとかの妄想に浸る。脳内反省会はせずに、妄想に浸る。一種の現実逃避的な物なのだろうが、幼稚園に通っていた時にはもうしていたので癖みたいなものなんだ。コレをすると自然と落ち着くし、コレをするから寝れるのだ。

 そう、だからいつもと変わらない。変わらないはずなのに、より一層綺麗に構築されて行く。イメージされる。妄想が明確な物へと変わって行く。鮮明に “死” の恐怖が描かれる。

 今まで寝る前に妄想に浸らなければ必ず描かれる “死” への恐怖。何故かは分からないが怖くなる。死ぬことも、この先のことも恐くなる。

 明日の朝。日が出れば俺は死ぬ。地球が滅亡するんだ。俺も共に死ぬ。それがどうしようもなく、嫌だ。でも、何も変えられない。俺には何もできないんだ。だから、忘れようとする。別の事を考えようとする。 “もしかしたら” を見つけようとする。妄想して楽しくなろうとする。そうすればきっと、寝れるから。だから、だから早く寝かせてくれ。

 寝てる間に死んで・・・駄目だ。また意識した。


どうする?


どうもしない。このままで良い。


でも、俺だけが佐藤を知っている。


だからなんだよ。


妄想するだかじゃつまらないだろ?


 ほんの少しの期待。自分への信頼。ずっと昔から、色んな妄想をして来た。その妄想が現実になろうとしている。なら━━━


━━━なんとなくで良い。理由なんて、あってもなくても事実は変わらない。


 俺は自室を出て姉の部屋へとそっと入る。きっと姉なら持っているから。何でも持っているから。きっとある。


 「何してんの?」


 「拡声器とあと、学校の鍵とか持ってる?」


 「拡声器はベッドの下。学校の鍵、学校のマスターキーなら棚の下から二つ目」


 在るのか。いや在るだろうなとは思ってたけど。在るんかい。


 「で? 何すんの? 学校で立て籠り?」


 「友達ともう一回だけ、話そうかなって」


 「ふ~ん。そっ   送ろうか?   」


 「いや良いよ。   最後かもだから   」


 「最後はヤだな。まだ、お前のこと愛し足りないから」


 「毎日時間掛けて詰め込んでるじゃん」


 「たくさん話せよ」


 「姉さまはもう寝ろ」


 「冷たいな~」


 姉との会話を終えた俺は、拡声器と小石を手に持ち、マスターキーと家の鍵を腰に巻き付けて家から出た。外は暗いが、見えない程ではない。ちゃんと見えてる。

 さぁ行こうか。屋上へ。




【#ファイナル】




 学校の玄関の鍵を開け侵入する。本当に開いて驚いた。何でこんな物を持っているんだ? まぁいいか。考えても無駄だな。持ってるから持っているんだ。その事実だけで良いや。

 問題は屋上も使えるかどうかだ。仮に駄目なら職員室に行って探さなきゃならん。あまり不法侵入した証拠を残したくない。カメラにバッチリ残ってるだろうけど。姉に頼むか。何とかしてくれそうだ。

 なんてこと思っていたら屋上の扉前に着いた。さて、結果は・・・開くんかい。そうだよな、マスターキーなんだし。開くよな。そんじゃ行きますか。

 夜風が耳を裂くように吹き荒れる。鍵がジャラジャラと音をたてる。でも何故か、心地良い。


 「 ❰我が望みを叶えよ❱ 」


 そう言うと小石が光りだす。俺の望みは、光ることだ。これで良い。きっと、来るから。


 「君ィ流れ星かと思って来たのに、騙したな?」


 ほら来た。俺は拡声器を付けて、話す。


 〔夜に光ってる物があったら一度は思うよな。分かるよ、その気持ち〕


 「良かったの? こんなことに使って?」


 〔佐藤が来たから良いんだよ〕


 「・・・嬉しいこと言ってくれるけど、無理だよ。地球滅亡は決定だ」


 そう言いながら宇宙(そら)から佐藤が降ってきた。


 「このままでは遅かれ早かれ地球人は地球を滅ぼす。ならば、宇宙人の都合が良いときに滅ぼしておきたい」


 なるほどね。結局結末は決まってるわけだ。


 〔でも、すぐに滅ぼさなかったのは何故だ?〕


 「ッッ!! うるさいな! ソレ止めろよ!」


 〔ん? あぁ悪い」


 遠くにいる佐藤に届くように使ってんだ。目の前に降ってきた今、使う必要はなかったな。


 「で、何ですぐに滅ぼさなかったんだ?」


 「滅ぼす前に “もしかしたら” を見つけたかっただけだ。その為に調査しに来たんだ」


 “もしかしたら” ね。俺も布団の中で探したよ。やっぱりそうだ。俺は、佐藤は前提を勘違いしている。


 「それで、結果は・・・なかったと?」


 「ああ、君ィ達を生かす理由が見つからなかった。これでも三百年は待ったんだぞ。なのに何も変わらなかった」


 そりゃ地球人のやることが三百年で変わるんなら、とっくの昔に滅んでるよ。変わらないから現在(いま)も続いているんだ。


 「   話は終わりだな。早く帰れ。姉が心配してるぞ」


 「何で姉さまのことを知ってんだよ」


 「カメラを入れる際に覗いたらな、脳を」


 佐藤はそう言いながら自身の頭をトントンと人差し指で押す。


 「プライバシーはどこ行ったんだ? てか、スゲェな、脳まで視えるのか」


 「そりゃ宇宙人だからな」


 ━━━まただ。また “宇宙人” と言った。佐藤は自分のことを “宇宙人” と言った。


 「なぁ佐藤。宇宙人ってのは何だと思う?」


 「地球外生命体の中でも人型の生命体だな」


 即答。当然かの様に答えた。勘違いしているな。


 「どうして “地球人” を軸にしているんだ? 佐藤が “宇宙人” なら “宇宙人” を軸にするはずだ。佐藤はずっと自分のことを宇宙人と言い続けた。ソレは自分もどこかで地球人だと思ってるからなんじゃないか?」


 佐藤からすれば俺が “宇宙人” だ。


 「・・・そうだな。今気づいたよ。だから? だから何だ? 親近感を持たせ庇って貰おうって魂胆か?」


 「佐藤、佐藤は居すぎたんだよ。三百年も地球に居たんだ。だから、勘違いをするし   思い出も残そうとする」


 「答えになっていないな」


 「そりゃ今から答えにするからな」


 「なら、さっさとしろ」


 「・・・三百年も生きたんだろ? 地球で。なら、ならさ」


 「なら?」


 「俺が死ぬまで一緒に生きてくれ。 “地球人” として。やりたいことはないし、将来の夢とかこれから先のことは分からない。でも、まだ死にたくないんだ。無性に死にたくないんだ。まだ生きていたいんだ。

だから、だから   俺が死ぬまで一緒に生きてくれ。俺が死んだ後はどうなっても知らん。滅びるんなら勝手に滅びれば良い」


 俺、嬉しかったんだ。 “死” への恐怖が在るってことは死にたくないってことだろ? それってつまり、まだ生きていたいってことだろ。だから、嬉しかったんだ。まだ生きていけるから。


 「      何だそれ。自分勝手すぎる!」


 「俺はヒーローじゃないただの高校生だ。ただの高校生に求めすぎだ」


 俺は俺のことだけを考える。その結果、俺が死んだ後に地球が滅んでも知らん。なんてったって、俺は俺だからな。


 「   分かった。分かった! 愛の告白も受けたからな! 全機に告ぐ、撤退!」


 よかった。これで明日も生きられる。


 「   ん? 愛の告白?」


 何だそれ?


 「 “俺が死ぬまで一緒に生きてくれ” これは告白だろキミ」


      アッ! そう言うことか。いやでも、これは言葉のあやなんだよ。熱くなりすぎた。


 「その言葉だけ撤回させてくれ」


 「・・・なら、実行させるまでだな。キミが死ぬまでにキミを堕とす」


 「待つかも知れないぞ?」


 「三百年の間一人だったんだ。仕事だったからな。でも、今は違う。だろ?」


 確かにそうだが。確かに俺が提案したが、面倒になった。


 「これからよろしく頼むよ、キミ」


      まっいいか。


 「こちらこそよろしく頼む、佐藤」


 人生はまだほんの少し長いんだから。










        宇

        宙

        か

        ら

        佐

        藤

        が

        降

        っ

        て

        き

        た










 「ところで俺が視た流れ星は何だったんだ?」


 「アレは超高次元光速突破型飛行船、通称高光突行(こうこうとっこう)だ。因みに、高光突行を使って地球を滅ぼそうとした」


 「んじゃあ俺は死んでいた可能性もあるのか。口封じで」


 「私もびっくりした。観られるとは思ってなかったんだもの。でも、そのお陰でキミに出会えた」


 「なら、少しばかり不良になるのも悪くないな」


 「まったくよ」

『Soony Boy』を観返しまして、ソレで書きてぇぇぇってなったので書きました。

時間がかかったのはヤル気がなかったから。

じゃあね

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