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若く未熟な神ですが、久しぶりに下界に降りたら俺を崇める宗教が「独裁宗教都市」を作ってたんだが  作者: エタメタノール


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第16話 イラナミ神の本領発揮

 俺は1000人分の祈りの力を手に入れた。

 全身が発光し、力がみなぎる。みなぎりまくる。祈りの力を束ねると、ここまで凄まじいものになるとは。

 相手は3000人。だが、相手にはならないだろう。


 “神”だった頃はこれ以上の力を当たり前のように宿していたが、“人”になったからこそ分かる。

 力というものの恐ろしさと、神というものの恐ろしさを。


 シーヴが俺にそっと告げる。


「直接は殴らない方がいい。殺してしまう」


 俺もそれは感覚的に分かっていたので、黙ってうなずく。

 たとえ俺の宗教を乗っ取った連中であろうと、俺の手で殺生してしまうのは避けたい。

 それに、そんなことをしなくても十分なほどの戦力差になっていた。


「かあっ!!!」


 俺が気合を発する。

 それだけで数十人が吹っ飛んだ。

 吹っ飛んだ連中はもれなく気絶しただろう。


 右手を振るえば、凄まじい風が起こり、ゼーゲル一派を吹っ飛ばす。

 左手を振るえば、光が迸り、ゼーゲル一派をなぎ倒す。


 これだけ派手な攻撃をしておきながら、スラム住民には怪我一つ負わせていない。

 攻撃が勝手に彼らを避けてくれているのだ。

 全くとんでもない力だ。


 ひとまず目の前の敵を全員吹き飛ばすと、俺は後ろを振り返る。


「全員無事か?」


 倒れている者はいるが、息はある。どうやら死人は出ていないようだ。


 ディゴスは呆然とした顔で、俺を見つめている。


「ラナイ……お前は一体、なんなんだ……」


 驚くのも無理はない。ちょっと前に自分と激しい殴り合いをした奴が、数百人を軽々と倒してしまったのだから。


「後でちゃんと教える」


 俺はそう言うと、ゼーゲル一派への攻撃を再開した。

 右手を振るい、左手を振るい、さらには両手を押し出す。

 それだけで風やら光やら衝撃波やらで、奴らはどさどさと倒れていく。


 相手が残り僅かとなり、ついにドラゲノフが俺の前に出てきた。

 鎧とマントをつけ、顎は二つに割れ、いかつい顔をしている。

 公開処刑の時はあれだけ強そうだったのに、今は小さく見える。


「お、おのれ……! 私はそう簡単にはやられんぞ!」


 切っ先を俺に向け、大剣を構える。

 これだけの俺の強さを見ながら、なおも戦おうとするのは大したものだと思う。

 まあ、目の前の光景を信じられず、ヤケクソになっている部分も大きいのだろうが。


「ぬああああっ!!!」


 ドラゲノフの剣を、俺は右腕で防ぐ。

 パキンと刃が折れた。

 ドラゲノフの顔もぐにゃりと歪んだ。

 そして、俺はその顔面に右ストレートを打ち込み――寸止めさせた。


「ぶはぁっ!」


 当てなくとも、とてつもない威力になってしまう。

 ドラゲノフはやはり他の兵士たちのように吹き飛び、そのまま地面に墜落。失神してしまった。


 立っている兵士たちも戦意喪失しており、残るはゼーゲルただ一人。

 貴族にして大神官らしく、威厳にあふれた顔立ちをしているが、すっかり怯え切っている。

 しかし、まだ諦めていないようだ。仮初にも一つの宗教の長としてのプライドがあるのだろう。


「私はイラナミ教の大神官だぞ! 大神官のゼーゲルだぞ!」


「で?」


 俺は歩み寄っていく。


「私にはイラナミ神がついているんだ!」


 ついているどころか敵に回してしまってるんだが、俺はあえてこう言ってやる。


「だったら、神に祈ってみたらどうだ? 助けて下さいって」


 ゼーゲルは大きく両手を上げた。


「おおっ、神よ! イラナミ神よ! 我を救いたまえ!」


 何も起こるわけがない。起こってもらっても困るが。


「イラナミ神よ、この悪しき輩に天罰を! ――かああっ!」


 俺に向かって勢いよく掌を突き出すが、何も起こらない。


「イラナミ神よ、我に力をぉ! 力をぉぉぉぉぉぉ!!!」


 泣きそうな声で叫ぶ。当然、何も起こらない。

 俺は一歩一歩距離を詰めていく。


「ゼーゲル、お前は領地を持たない貴族だったらしいな。だから自分が王様のように振る舞える土地と、人と、権力を欲した。それ自体は否定しない。俺だって、自分を高めたくて修行してる身だしな。だが、方法がよくなかった。細々とやっていたイラナミ教を乗っ取り、私物化し、自分がのし上がるための道具にした。そんなことをしたら、やはりどこかしっぺ返しを食らうもんだ」


 ゼーゲルがへたり込み、尻餅をつく。


「お前は……なんなんだ!? 一体何者なのだぁ!!?」


 またこの質問か。

 こいつは一応大神官だし、せっかくだから答えてやることにする。


「俺か? 俺はお前が崇めてくれている……イラナミ神だよ」


「……!」


 ゼーゲルはこれを聞いた瞬間、顔面が蒼白になり、泡を吹いて倒れてしまった。

 いったい何を思ったのやら。


 とにかく、これで決着がついた。


 俺は真っ先に後ろにいるレーアに向かって微笑んだ。

 すると、レーアも「お疲れ様でした」といった感じの笑みを返してくれた。

 彼女の笑顔を見たら、俺の中で達成感みたいなものがこみ上げてくる。


 未熟な神な俺だけど、どうにか悪い大神官を退治できたよ、と――

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― 新着の感想 ―
[一言] ラナイさん無双でしたね。 >「俺か? 俺はお前が崇めてくれている……イラナミ神だよ」 ラナイさんカッコいい.。.:*♡ よっ!神様!! 見習いだけど... みこと
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