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かけがえのない人だから

オレはおはぎ。

上から見ても下から見ても

猫なんだよ。

どうよ?


オレがネコだって気づいてから

早くも二週間。

もうね、オレは大分受け入れた。

だって、意外と快適。


何故なら、飯は出てくる。

体は洗って貰える。

たまに、キャットタワーに登りドヤ顔して。

ほぼ寝るという生活。

いやはや、最高。


だが、何故か夜になるとちょっと暴れたくなるんだよ。

それが、厄介。

何故ならここはマンションだし、

夜に騒ぐのはNGだろ?

我慢なんだよ。


あ!忘れちゃいけない困ったこと。

オレは、嬉しくても感情を表すのが苦手なタイプなんだよ。

照れるじゃん?喜んでるってしられたくないんだ

だけど、この体じゃ隠せないんだよ。困ったことにね。

何故かというとさ、解るだろ?ネコだけにね?



「♪~♪~ん~♪~ん~」


話は変わって、このキッチンでなにやら鼻歌を歌ってるのが

死にかけてたオレを保護して治療までしてくれた女。


一応、オレの飼い主。

名前はまだ知らない。

いつもご飯をくれる。

今なんて…今なんて…


魚焼いてくれてる。

神!

マヂでこの匂いだけで、あの白い粒の…

白い粒の…

何か、大事な。

忘れちゃいけないアレ。。

なんだったかな?


多分。オレは元が人間なんだ。

感覚が全部人間の時の感じなんだよ。

でも、ほとんど覚えてないんだ。

不思議なんだよ。


結構、漫画とかで転生とかするやつって

記憶ガッツリ残ってるじゃん!


なのに、なんでオレには記憶がないんだ!


それよりも漂っている

この、魚の焼ける匂いだけで

あの、輝かしい熱々の白い粒粒の。。


ん?んん?


くっさ…


焦げ臭っ



あ、もしかして


オレの魚。。死んだわ


「♪~♪~ん~♪~♪」


しかも、気づいてないわ。

この女は本当に手がかかる。


「みゃーみゃーみゃー」

(こげてるぞーオレの魚ーどーすんだよ?)


「ん?おはぎー早く食べたいんだね?もう少しだよ。」

と言いながら女はグリルを開けた。


「あー!?こげてるよー

もーなんでよー!?ごめんおはぎ~

食べれるかな?ダメだ~、おはぎが死んじゃう

私の魚にしよ。おはぎは、キャットフードにしよね?」


女はオレの頭を撫でながら残酷なことを言う。

「ね?」


ね?じゃねーよ!

ありえん!魚を焦がすなんて

最近のグリルはピピピピ言うはずじゃ!

ネコのオレから魚を取り上げるなんて。。

ヒドイ!!人じゃない!


もーしらん。

この女になに言っても無駄だ


オレはプイとうずくまってふて寝した。

「もーおはぎ~」

甘えた声を出しながら、オレを抱き抱えてきた。


「怒ったの?ごめんね?」

鼻の頭にチュッとされた。


「許してね?大好き」

ぎゅっとだかれる。

悪い気はしないよな?

こんなに可愛い女の子にこんな風にされたらね。

まぁ、良いでしょ。


全然。魚ごとき。構いませんけどね。


ゴロゴロゴロゴロ

ゴロゴロゴロゴロ


「あーおはぎ!許してくれてるねー

可愛いー!イイコイイコ!」


はしゃぎ始めたこの女は、

オレの頭やら喉やらを撫で回してきた。


そう!これ、この喉ね。

どーなってんの?マヂで

オレの感情このゴロゴロでバレバレ!


はずっ!

もう、やだ!

はー。。猫って。


「ハイハイおはぎ~キャットフードお食べー」

女にキャットフードを貰い。

オレは大人しく食べる。

全く。本当に。なんで旨いんだよ

こんなの猫の食いもんだろーが。

ちくしょう。オレの魚。


モッシャモッシャ

食べおわり、口元を手で擦り

汚れをチェック。そして、頭と体をぶるぶるとして


「みゃー」

(ごちそうさん)


オレがキャットフードに夢中になっている間に、

この女はオレの魚を食べている。

仕方ないけどね。

なんか、憎めないんだよな。


とりあえず食後の運動でキャットタワーに昇る。

オレは、この一番上から

見渡すのが堪らなくすきだ。

これは、猫の本能何だろうか。

元々のオレの感情なのかは解らないけどさ。


ここで寝たりもするよ。

落ちないと思うんだよ。不思議とさ。


PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi


うるさっ

スマホだ

猫の耳凄いよく聞こえんのね。

ほんとに早く止めてほしい。


PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi



また、とんちんかんなとこ探してやがる。


「あれー?スマホがないよー」


ったく、しょうがねーな。

キャットタワーを華麗に降りて。

スマートにスマホを探し当てるオレ。


スマホを咥えて、女の前におく。

コト。

「みゃー」(ここだよ)


PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi


「あ!おはぎ~!ありがとう」

Pi…

やっと、止まったよ。

はー。うるせ。



急な浮遊感。

ぎゅっと抱き締められる。

「おはぎ~大好き。

おはぎのお陰で、私は生きていけるよ!」


はいはい。

そうだね。


もう少し、しっかりしろよ。

片付けろ。オレは片付けはしてやれねーよ。


この、女の私生活はこんな感じで凄く残念な感じだ。

家のなかでもだけど、外でもそうらしく。


仕事中もしょっちゅうミスをしては、怒られて残業。

オレは飯がなかなか貰えない日もあるんだ。


それだけじゃなくてさ、

友達も居ない。てか、同僚にも

あんまり相手にして貰えてないみたいでさ

一人ぼっちなんだと。

いつも、寝る前にオレに愚痴るんだよ。


オレは、聞いても何にも言ってやれないしさ。

守ってやることもできないからさ。

じっとしながら、喉をゴロゴロ鳴らしてやる。


知れば知るほど残念なこの女が、

今のオレにはかけがえのない人なんだと思うから。

オレにできることはしてやりたい。


オレは、チラッと目覚まし時計を見た。

あ、こいつ出勤の時間じゃねーの?

今日も遅刻じゃ不味いだろ。

女の腕から抜け出して

時計を咥えてきて、置いてやる。


コト。


「あー!?ヤバい!遅刻

ありがとう!おはぎ!行くね!」


バタバタバタバタバタバタ


朝から大変だよ。本当に。

どうやって育ってきたらあーなるんだよ。

全く。


あれ?何か。

こんな風にいつか思ったときもあったような気がする。


思い出したいことが思い出せないけど。

この女といると何か引っ掛かる事が

たまにあるんだよ。


何だろ。。考えてもわからん。


しかもね。

オレは猫なんだよ。

すぐに、眠くなる。今も眠い。

しかも、多分この体。老体だよな。


何となく解る。

オレのこの猫の体がそんなに長く持たないこと。


この体が死んだらオレも死ぬのかな。

オレが死んだら、あの女は一人で生きていけるのかな?


次に目が覚めたとき。

オレの前にあの女は居るのか。

オレは人間に戻れているのか。


そんなことを考えながら、オレは寝ちまったんだ。














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