番外編 異世界遊園地エスタードパーク再び!
これは、あたしが余命1ヶ月の運命から解き放たれてから、1ヶ月半くらい経った頃の話ダヨ。
「エキナ、準備出来たー?」
「ちょ、ちょっと待って下さいね!」
今日はあたしとエキナ、2人でお出掛けする日なの。目的地はエスタードパーク!
以前一緒に行こうって約束してたからネ。
エキナはあたしの命の恩人、ユウを譲る訳にはいかないけど……まぁ、この子とは長い付き合いになると直感が告げている。
だから、たまには……こういうのもいいカナ。
「お待たせしました!」
「ほら、早く行くよ!」
「ル、ルーク、歩くの早いですぅ!」
エキナは、ワクワクして足早なあたしの後ろを必死に付いてくる。
「ルーク、そんなに楽しみだったんですか?」
「ヒヒ、だって前はあのジェットコースターに乗れなかったからネ」
「うっ……あれですか……」
汗を拭いながら、あたしの目的を聞くと、青い顔をされた。
エキナってば怖がりなんだから~
「大丈夫だって!今回はユウ居ないし、普通のコースターだって!」
「ほ、本当ですか?なら何でそんなに楽しみなんですか……?」
「い、意外と疑り深い子だネ……」
事実、以前とは違った楽しみがあるんだよネェ……
「まぁ乗って見れば分かるって!」
「信じますよ~……ルークゥ……」
「任せてヨ!!」
ま、いいよネ。死にはしないし。
そんなこんなでパークに着き、またあの行列をエキナと2人で並んだ。
以前とは違い、1時間もせずにコースターに乗り込む事が出来た。
そして私の隣のエキナは、「ぼぶらぺっと……ぼぶらぺっと……ぼぶらぺっと……」と、意味の分からない呪文を唱えている。
「……エキナ、それなに?」
「我が家直伝の心を落ち着ける呪文です!!」
「あ、そう……」
キリっとした目で訴えられてもネ……
まぁいいや、エキナの事は放っておこう。
ようやくジェットコースターに乗れるんだし、楽しまなきゃ!!
一頻り心が落ち着いたのか、エキナがあたしに訊ねてきた。
「……ル、ルーク……何故そこまでこのコースターに拘るんですか?」
「もう逃げられないから言ってもいいか」
「……?」
あたしは、発進し始めたコースターの手すりに捕まり、エキナに満面の笑みを向けた。
「ユウのせいで、もういっそ重力魔法のエンチャントを取っ払う事になったんだって!だからこの新しく出来た手すりにしがみついて爆速を耐え抜くスタイルになったんダヨ!!」
「え……嘘……なら安全面はどうやって確保を……!?」
コースターはカタカタカタ、とゆっくり坂を登り出す。
「ん?だからこの手すりだって。ここに接着魔法が掛かってるんダヨ」
「あ、本当です。離れないですね……」
そして、コースターはレールの頂点へと辿り着く。
「だからエキナ頑張ってネ!」
「え……何をですか……?」
「そりゃ座席になんて座ってられないからネェ、脱臼しない様に空中に出ても頑張ってネって」
「空中!?まさか……体が吹き飛ぶのを手すりだけで支えろと!?」
「さぁ頑張ろうエキナ!!」
「ルークのばかぁぁぁあああーーー!!!!」
「ひゃっほーーーー!!!」
まるで、空を飛ぶかの様に急速に下降するあたし達。
数ある悲鳴の中でも、エキナの絶叫が一際輝いていた──
※
「……酷い目に遭いました……」
「あー楽しかった!!また乗ろうネ!!」
「……ふふ、次はありません」
「ひぇっ……笑顔が怖いよ、エキナ……」
何でそんな笑顔なのにここまで冷たい声が……!?
わ、話題を変えよう……
そうだ、エキナも休憩したがってるし、お願いするには丁度いいタイミングかも知れない。
「あ、あのさ。気分を変えてあっちの、人の居ない所に行かない?」
「え、あのお化け屋敷みたいな所ですか?」
「うん、入らないけどさ……ちょっとお願いがあるの……」
「? いいですよ?」
あたしは見事、お化け屋敷の隅の方にある、木陰へとエキナを連れ出した。
目的は至ってシンプル……人目の無いこの場所で血を頂きたくて……!
もー最近は全然ユウも吸わしてくれなくて、てっきりご無沙汰なの……
こないだなんか、寝込みを襲ったら反撃されちゃったし……
と、いうことで!
「エキナ……ちょーっと痛いカモだけど、我慢してネ……!!」
「え、ルーク?どうして私の首筋に顔を──」
「いっただっきまーす!!」
「嘘!ルーク、そんないきなり……!い、痛っ……!!」
「ん~~っ!!」
おぉ!!エキナの血は何て言うか、濃いめのカル○スみたいな味だネ……!
美味しい~~~~~~~!!!
「ルークッ……ちょ、吸いすぎですっ……!」
「ヒヒ……もーひょっとだへ(もーちょっとだけ)……!」
「嫌っ……おかしいです……何か段々気持ち……良く……!」
それは、あたしとエキナが段々と興奮してきたからだネ。
吸血鬼の吸血行為は、性的興奮によってその吸収率が上がったり、痛さがマシになったりする。
あたし達の牙にはそのような成分が含まれてる。
それにしても……
あたし、牙を深く押し込んで、割と激しくしてるんだけど……
エキナが喘ぐ度に、お……おっぱいが……あたしの控え目な胸を押し潰してるんだけど……
あぁ……何か段々萎えてきた……
「ル、ルーク……!?またちょっと痛いです!!」
ちょ、エキナ痛いのは分かるケド、声が大きい!
人が全く居ない訳じゃないんだし、誰かに──
「お姉さんら、なーにやってんの?」
『ふぇっ!?』
「女の子2人でイチャついて……私も混ぜてよ♡」
『ご、ごめんなさい~!!!』
「あ、ちょっと!」
すらっと手足の長い、毛先を遊ばせたギャルっぽい女に見付かっちゃった!!
しかも、何か視線を釘付けのされそうな不思議な魅力がある……危険だ!!!
エキナも一瞬視線を奪われてたケド、さすが聖女だネ、ちゃんと振り払ってる。
あたしとエキナは、慌ててその場を立ち去り、事なきを得た。
つ、次からは確実に人が居ない所でしないとネ……反省反省……
それから、2人で写真を撮ったり、観覧車に乗ったり……女の子のデートを満喫した。
やっぱりエスパは楽しいネ。
恋のライバルだけど、感謝の気持ちは伝えておこうか。
「エキナ、今日はありがとネ。すっごく楽しかった!」
「私もです!ちょっとハプニングはありましたけど……次から血を吸う時は言って下さいね……?断ったりしませんから……」
「ヒヒ、りょーかい!」
そうして、あたし達は最高の1日を過ごした。
背後であたし達を見つめる視線に気付かずに──
「──面白そうな子達だねぇ。私の魅了が効かないとは……いつか、友達になれたらいいな」
お読み下さりありがとうございます!
本日更新が遅れてすみませんm(_ _)m
次回は本編の更新ですので、またよろしくお願い致します!




