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異世界吸血鬼は余命1ヶ月の吸血姫を諦めない。  作者: 棘 瑞貴
異世界吸血鬼は世界欺く初恋少女を紡ぎたい。

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第14話 セフィラの痕跡


「せふぃら……」


 光の粒子となって消えていったセフィラの痕跡を、この部屋に見出だそうとしているのか、ルークはキョロキョロとしている。


「あった……!」

「ルーク、何を探してるんだ?」


 丁度、セフィラが座っていた位置に近付き、ルークの視線を追い椅子を見た。


「これは……苗木……?」

「そうだよ!せいれいってね、しぬとしょくぶつのめをのこすんだよ!」


 植物の芽……だよな。

 相変わらず何を言ってるの分かりづらいったらありゃしない。


 まぁそれはいいとして、精霊にそんな性質があったとは……


 ルークは、セフィラが遺した小さな苗木を、優しくテーブルの上に置いた。

 

「せれんとがしんだときになにもなかったのは、たましいをせふぃらがもってたからか……」

「え、セレントが死んだ!?」

「せふぃらが──でもだいじょうぶだよ。ここにいるからさ」


 俺が来るまでに一体何があったんだよ……?

 しかし、今のルークからは説明を聞いても分かりにくいからな……


 一先ずルークを元の姿に戻す事から始めようか。


「ルーク、お前の体を元に戻すにはどうしたらいい?」

「え?あたしのからだ?うーん、ゆうのちをいーっぱいのめばもどるかも?」

「い、いっぱいか……しょうがねぇ。ほら」

「!! いいの!?」

「あんま噛み付くなよ?お前の痛いんだから」

「ひひ、だいじょー……あー……でもちょっとまって」


 ルークは待ったを掛け、椅子の上に「うんしょ……」と立った。

 俺がきょとんと、その様子を眺めていると、腰に両手を当てて、ぷりぷりと怒りだした。


「ゆう。どうしてだまってでていったの!」

「い、今それを聞くのか……」


 いずれ聞かれる事だとは思っていたが……

 はてさて、どう答えたものか。


「……やりたい事があったんだ」

「めりあをいきかえらせるんでしょ」

「やっぱり気付いてたか……」

「……でもそれだけじゃないんでしょ」

「!」


 セフィラが最期に余計な事を言うから……!

 いや……ルークは──エキナもだろうな、俺が隠したい事に薄々気付いてるのかもな。


「……さすがにゆうがなにをしたいかまではわからないよ。でも、なにかをかくしたいのはわかる」

「あぁ……そうだろうな……」

「……ぜんぶおしえてとはいわない。でもせめてあたしたちをおいていかないで」


 あたし達、か。

 ルークはすっかりエキナを認めているようだな。

 そんな事、今更確認しなくても分かってるけどさ。

 何故かそれがとても嬉しかった。


 涙を滲ませて置いて行かないで、と言われてしまっては、聖国へ来た理由を黙ってる訳にはいかないか。


「ルーク……俺がここに来たのは──」

「そこまでよ」

「高坂!?」


 家のドアを開け、ふらふらと入って来たのは眠っていた高坂だった。

 

 か、完全に忘れてた…ははは。


「……滝川、この私を放置とはいい度胸じゃない」

「あんた、きやすくゆうにはなしかけないで!」

「何?この変な生物は」

「あー……説明すると少々面倒なんだが──」


 セフィラの放った青い月は、無事にどうにかした事、ルークが何か無茶をして体が縮んでしまった事、そしてセフィラを殺した事、その全てを高坂に教えた。


 高坂は、「そう、あの大精霊を……」と、少々複雑そうな顔をした後、ルークを見て口元を手で覆った。


「ぷぷ……これが始まりの魔族?今始まった所です、みたいな見た目で?」

「ゆう、こいつころしていいよね?」

「駄目に決まってんだろ」


 ほんっと相性悪いなこいつら。

 遊園地に行った時のルークとエキナ以上だよ。


 そう言えば、エキナは大丈夫なのだろうか?

 確か教会へ飛ばしたってセフィラが言ってたが……


「高坂、お前エキナに頼まれて来たんだろう?あいつは無事なのか?」

「えぇ、大丈夫よ。それより私の前で他の女の心配をするとは……躾が必要かしら?」

「こら!ゆうのかおにさわるなーー!!」


 妖艶な微笑で俺の頬に触れた高坂を、ルークが短い手足をバタバタさせて間を割った。


「もう、あんたほんとにゆうにちかづかないで。あんたからはいやなけはいがする──」


 キッと高坂を睨むルーク。

 嫌な気配、ね……

 そう言えば、セフィラも言ってたな。

 ──高坂は何か変だと。


 いい加減、そろそろ高坂の素性を詳しく知りたい所だ。

 これもいい機会だな──

 

「高坂、俺もお前の事をそろそろ知りたい。教えてくれないか?」

「教えろって何を……?」


 こいつ……分かってるくせに。


「お前のそーゆー察してるのに言わない所、昔からの悪い癖だぞ」

「あら、そもそも察しの悪い貴方に言われたくないわね」

「バカ言え。俺は、鈍感どころか敏感だぞ」

「……そうだったわね……本当に大事な事は全部分かってくれてる。貴方のそういう所好きだったわ」

「……ねぇ、はなすならさっさとしてくんない?」


 腕を組んで指をトントン、とイラつきを表現しているルーク。

 おぉ……これはストレスメーターで言うと、80%って所か!?


「こ、高坂。俺からも頼む、ルークが爆発する前に──」


 ぐぅぅぅう~~~~……


 ……は、腹の虫が……

 だって激闘の後なんだもん……


「ゆう……」

「滝川、お腹空いたの?また私の血を飲む?」

「おぉ!?」


 高坂はロングコートのボタンを外し、中のシャツを谷間が見えるまで引っ張った。

 こ、こりゃたまら──


「こら!むねがみえてるでしょ!!ゆうもみるな!!!」


 ルークが慌てて高坂のコートを閉じ、白目を向いて俺を睨んだ。


 今のは不可抗力だろ……


「はぁ……おなかすいたならちょっとまってて。いまつくるから」

「貴女は引っ込んでおきなさい。私が作るから」

「あぁん!?」

「なによ……!」


 またかよ!!

 こいつらどれだけ相性悪いんだよ!?


 2人はバチバチと視線でやり合った後、同じタイミングで俺の方を見た。


 ま、まさか2人の料理を──


「ゆう」

「どちらの料理が」

「おいしいか」

「沢山作るから」

「かったほうと──」


『今日は寝るわよ(きょうはねるよ)!!』


 何だこいつら。出会った頃のルークとエキナを彷彿とさせるなぁ。

 まぁお互いの殺意はあれの何倍もあるが。


 結論から言えば、2人の料理は甲乙つけ難い程に旨かった。

 

 セフィラの家の冷蔵庫にある限られた食材から、2人は見事な腕前を見せてくれたのだ。


 高坂の作る日本料理は、懐かしいあの世界を思い出させる。俺の好物である海苔のおすましをチョイスしてくる辺り、さすが初恋の女だ。

 

 ルークの方は、食べ慣れたいつもの味だ。

 それにしても肉じゃがはずるくないか?

 お前の一番の得意料理じゃないか。不味い訳がない。

 

 当然、俺が下した勝者は──


「うん、引き分けで。て言うかお前らも食えよ。明日エキナを迎えに行くんだし栄養付けろよ」

「はぁ。さすがへたれだね」

「本当、貴方の悪い所よ」

「へいへい……」


 2人が席に着き、まず始めに相手の料理に手を付けた。

 ……力量を測るとか、どんだけだよ。


「むっ、や……やるね……」

「あざといだけのチョイスかと思ったら……意外と……!」


 再びお互いに睨み合った2人を表現するなら、川原でやり合った不良の「ふ、やるな……」「お前もな……」みたいな感じだろうか?


 いや、違うか、違うな。だって、殺気が凄いもん。全然爽やかじゃない。


「お前らいい加減にしろって……ほら、食ったら寝る準備するぞ」

「なんだかせふぃらにわるいね……」

「それは俺も思ったけど……」


 あまつさえ、殺した相手の家でゆっくりしていく何て、正気じゃないかも知れん……

 高坂がいるし、移動しようと思えば移動出来るしなぁ……


 高坂の方を見ると、黙々と食事を進めている。

 ……こいつ、教会に戻る気ないな。


「いいじゃない。きっと大精霊も喜んでるわ」

「……テキトー言いやがって……」

「それに、今は戻らない方がいいわ」

「え?なんで?」


 俺の疑問に、高坂は箸を止めた。

 ちなみに高坂のマイ箸だ。

 俺達はフォークで飯を食っている。さすが女皇。

 

「知りたい?」

「あ、あぁ……」

「それはね──」


 高坂は口元を布巾で拭い、温度の感じられない微笑みで俺を見た。


「絶賛聖女が覚醒の儀式の最中よ。邪魔をすれば聖女が死んでしまうわよ」

お読み下さりありがとうございます!


興が乗って、また短編を書きました笑

タイトルが、

かつて一世を風靡した《ツンデレ》という属性は、現在北川さんという天使のような甘々ヒロインによってその生存を確認されている。

です!


もしお時間あればこちらも読んで頂ければ幸いです!

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