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異世界吸血鬼は余命1ヶ月の吸血姫を諦めない。  作者: 棘 瑞貴
第二部 異世界吸血鬼は花嫁聖女を壊したい。

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第22話 初恋


「ハハッ……やったぞシーエル……!」


 ユウが到着し、聖国の戦艦のほとんどを撃ち落とすまで、アデラートはクイーンのいる艦内で復讐を遂げていた。


 クイーンは顔の形を留めず、内臓は引き摺り出され、四肢は関節の数を越える程に折れ曲がっている。


「……ァッ……コロ……シテ……」

「なんだ、まだ息があったのか?本当、お前らはゴキブリみたいな奴らだよ」


 僅かに動くクイーンの頭を踏み潰し、血を飛び散らせた。


「……ククク……ハッハッハ!!ユウが殺した奴らも合わせて、残るはトップに居座るただ一人だ……もうすぐだ。もうすぐ終わらせてやるぞ!!」


 アデラートの復讐の炎は今最高潮に燃えている──



「先輩……全部終わりましたよ」


 俺は今、王国内の潮風が当たる海辺の墓地に訪れている。

 メリア先輩が眠る場所だ。


 戦争は襲ってきた聖国を押し返し、王国の勝利で幕を閉じた。


 戦後処理にアデラートやレインさんが奔走していたが、間違ってもエキナが聖国へ行くことには

ならないだろう。


 あの戦争から1週間が過ぎ、犠牲者達の葬儀もしめやかに執り行われ、王国内は復旧で大忙しだ。 


「先輩、怒るかも知れませんけど……俺はもう一度先輩に会いたいです」


 エキナの聖女としての力を覚醒させればそれも叶うかも知れない。

 望みはかなり薄いけれども。


 事実、試してはみた。

 エキナに真祖の力を絶妙な加減で注ぎ、覚醒を促したのだが、上手くはいかなかった。

 セレントに聞いても、「条件は満たしてるのに、何でだろう……」との事だったのだ。


「何かが足りないんだ。やっぱり聖国へ行くしかないのか……?」


 アデラートの話では、"聖職者達"の幹部ももう居ないらしい。

 今なら乗り込んでもいいんじゃないだろうか。

 奴らのトップがどれ程強いのか、それだけが不安な所だけどな。


 そこまで考えた時だ。

 俺の背後に人の気配を感じた。


「滝川……久しぶりね」


 懐かしい声。

 最後に聞いたのはもう何年も前。

 そう、まだこの世界に来る前だ。

 名前だってすぐに思い出せる。

 だからこそ、俺は疑問に思う。


「高坂……どうしてお前がここに居るんだ……?」



 高坂遥(こうさかはるか)それは初恋相手の名前。

 死んでしまったはずの彼女が、この異世界で俺の目の前に現れたのだ。

 俺が疑問に思うのも当然だろう。

 でも、何故だろうか、驚きはしなかった。


「久しぶりなのに野暮ね。わざわざ会いにきてあげたのに」

「当然だろ?お前は──」

「──死んだはずなのに?」

「……俺があれだけ止めたのに……」


 高坂は俺に一歩近付き、あの頃と同じ距離感を作る。

 限りなく体が当たりそうな近さ、だけれど決して触れ合う事はない絶妙な距離。


「どうして私が滝川の言うことを聞かなきゃいけないの?」

「お、俺はずっとお前を……!!」

「好き、だったんでしょ」

「分かってたならどうして……!?」


 彼女は少し俯いてぼそっと答えた。


「……滝川にずっと私を覚えていて貰う為」

「え……?」

「私もね、滝川の事好きだった。でも滝川にあれ以上迷惑を掛けたく無かったから、だったら一生私を覚えていて貰う方法……あれしか無かった」

「迷惑だなんて思った事は無い!お前が生きていてくれたら俺はそれだけで良かったのに!!」


 あの頃、俺は高坂をいじめから守る為に、思い付くあらゆる手段を行使していた。

 当然、やがていじめは俺の方に向き始めたけどな。

 でもそれで良かったんだ。高坂を守れるならそれで。


「あの時言えなかった事を言わせて。滝川、私を守ってくれてありがとう。本当に嬉しかった」

「守れて……ないだろう……!!お前は……!」

「私が死んだのは私が弱かったから。でもね、今は違う」

「高坂……?」


 俺は手を差し出してきた高坂に疑問を返すので頭が精一杯だった。


「私と一緒に来て。私なら貴方の望む全てを叶えてあげられる。例えば、そこに眠る滝川の大事な人を生き返らせたりね」

「お前……何でそんな事を知ってるんだ……!?」

「私は滝川の事なら何だって知ってるよ。何故なら──」


 唐突に現れた高坂の言葉に、俺の頭はショート寸前になっている。

 さらに、最後の追い討ちは衝撃だった。


「──"聖職者達"のトップ、女皇が今の私だから」


 そこからの高坂の話に俺は──



「ユウお帰り~」

「あぁ……ただいま」


 俺は海辺の墓地で再開した死んだ筈の初恋の相手、高坂遥との話を終えアデラート学園の寮に帰って来ていた。


 出迎えてくれたルークに、少し元気無く挨拶してしまった為、心配の言葉を掛けられる。


「ユウ……大丈夫?辛かったんじゃ……」

「大丈夫だよ、先輩にはちゃんと全部終わったって伝えられたから」

「ならいいケド……」


 今日の夕飯を作りながら、俺を心配そうに見ているルークは、気分を変える為だろうか話題を変えてくれた。


「そうだ、今日ねエキナも一緒にご飯食べるってさ!」

「そうなのか?それはいいけどお前ら俺の布団に入ってくんなよ?」


 俺がそう言った時だった。


「そうはいきません!!」

「うぉ!エキナ、いきなり入ってくるな!」

「すみません、でも許容出来ないお話が聞こえたので」


 もう既に寝巻きのパジャマで俺の部屋に入って来たエキナ。

 お泊まりする気満々じゃねぇか……


「あのね、許容出来る出来ないじゃないの」

「いえ、いい加減ユウ君には私に手を出して貰わないといけませんから」

「ちょっとエキナ!ずるいよ、あたしが先だって!」


 あの、どっちにも出さないからね?

 たぶん。きっと。俺の理性が持つ間は。


 ルークが「あ、でも」と言った。


「今日はね、ちょっとそーゆーの待って欲しいの」

「別に今日じゃなくてもしないけど、どうしたんだ?」

「じゃあ明日にしましょうか。どうしたんですかルーク?」

「いや、明日もしないって……」


 ルークが出来た料理を運びながら、俺達に説明を始める。


「あたし、ユウに大事な話があるって言ったよネ?」

「あぁ、そう言えば……」

「エキナにも聞いて貰いたい事だから丁度いいと思ってネ」

「え、私にもですか?」


 てっきり恋の話をするのだと思っていた。

 恐らくエキナも同じように思っていたのだろう。

 ルークは続ける。


「うん、あたしが聞いて欲しいのは過去の話」

「それって……」

「200年前……あいつ──マーネとあたしの話」


 ずっと聞きたかった事だが、どうして今それを……

 ルークに聞いてみた。


「どうして今それを?」

「エキナの聖女としての力の覚醒に繋がるヒントがあるかもじゃん?」

「そ、そうなんですか?」

「あたし達の仲間にも先代の聖女が居たからネ。きっと参考になると思う」


 もし、もしもだ。

 この話が本当にきっかけとなるならメリア先輩を……

 いや、変に期待するのはよそう。


「少し長くなるかもだけど、いいカナ?」

「あぁ、聞かせてくれ」

「はい!」


 そしてルークは語り始めた。

 太古の英雄との出会い、そして別れの話を── 

お読みくださりありがとうございます!

少し予定を変更して今回を第二部最終回とさせて頂きます!

次回からは過去編となります。

あまり長くなりすぎないようにまとめるつもりですのでまたよろしくお願い致します!

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