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異世界吸血鬼は余命1ヶ月の吸血姫を諦めない。  作者: 棘 瑞貴
第二部 異世界吸血鬼は花嫁聖女を壊したい。

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34/90

第20話 私は貴方が大好きです。


「ユウ君……興奮してるんですか……?」


 エキナは着ていたシャツを地面に落とし、俺の顔に手を当てる。

 ひんやりとした感触が、火照った俺の顔にはとても気持ちいい。


 スカートを履いたまま、上半身ははち切れそうなブラジャーだけ。


 はっきり言ってエロ過ぎる!!

 と言うか……


「何で服を脱いだんだ!?」

「ルークから脱いだ方がやりやすいって言われてて……」

「え?さっきはそんな事言って無かったじゃん」

「いえ、少し前に──あ、いや何でも無いです。ほ……ほら、早く吸って下さい!」


 何だ?何を慌ててるんだ?

 まぁいいけど。


 しかしなぁ、何と言うかここまでお膳立てされていざどうぞ!ってなると何て言うかその……


「ユウ君、まさか萎えてきたとか言わないですよね?」


 ギクッ。


 それにその怖い笑顔を止めてくれ!

 大体何で分かったんだよ!?


「ここまでお膳立てされすぎて、興奮する要素が私の体だけというのは諦めて下さい」

「そこまで思ってねーよ!」

「へぇ……じゃあやっぱり萎えてるんですね……」

「い、いや血を吸うのに別に性的欲求は関係無いから大丈夫だって!」


 これは本当の事だ。

 ただし、全てではない。


「ユウ君、私知ってますよ?興奮してる時の方が吸収率が上がったりするって。あ、あと痛くなりにくいって……」

「詳しいな……」


 一体どこでそんな知識付けてきたんだ……

 俺も最近ようやく経験と共に知ってきたってのに。


「もう……しょうがない人ですね……」

「え?」


 エキナはスカートのポケットから、護身用であろうナイフを取り出し、左手首を薄く切った。

 そして流れ出た血を自分の口に含む。


 彼女は俺の頭に手を回し、甘く蕩ける様なキスをした。

 さらに、含んでいた血を俺に流し込みながら俺の顔を見ている。

 唇を離したエキナは、自分の口端から垂れた血を拭いもせずに妖しく笑う。


「……これだけで満足ですか……?」


 足りない。もっと血が──エキナが欲しい。


 チロっと舌先を出し俺を煽るかの様に誘惑するエキナ。

 普段の優しくて少し控えめな彼女からは、想像も付かない魅惑的な姿だ。

 

 こんなの我慢出来る訳がない──


「……痛かったら言えよ」

「乱暴にしてくれてもいいんですよ。物みたいに扱って下さい……私がユウ君の物だって教えて……!」

「後悔するなよ……!」


 エキナの体を抱き締め、狙いを定める。

 俺は牙を剥き出しにして、エキナの首筋を遠慮無く血で溢れさせた。

 吸い出し、喉を潤す。

 ただそれだけで俺の細胞一つ一つが喜んでいるのを感じる。


「ぁっ……ユウ君……もっと、んっ……は、激しくして下さい……こんなんじゃ足りません……!」


 そこまで言うなら、もっと戴いてや──


 ふと、エキナの首筋から胸の谷間に集まった血溜まりが視界に入った。

 

 血の記憶が頭を(よぎ)る。

 腹部を撃ち抜き、大量の血で濡れたメリア先輩の姿が。


 ──気が付くと俺の体は震え始めていた。


「……ハァ、ハァ……ユウ君……?」


 抱き締めたまま血を吸うのを中断した俺に、違和感を感じたのだろう。

 エキナは、ガタガタと震え始めた俺の顔を覗き込んだ。


「血が怖いですか?」

「……わ、分からないんだ……堪らなく血が欲しいのに、記憶が血を拒んでる気がして……」


 段々と震えが大きくなり、エキナを抱き締める事も出来なくなりそうになってくる。


 その時だ、エキナが俺の頭を血溜まりが出来た胸の谷間に押し付けた。


「ふぇひな!?(エキナ!?)」


 バタバタと抵抗をするが、その豊満で全てを包み込むような感触に呑まれていく。


「ユウ君って本当おっぱい好きですよね」

「お、男はみんな好きだぞ」

「震え、止まりましたか?」

「!」

 

 本当、敵わないよ。

 エキナは俺を安心させる為だろう、思い出話をしてくれる。


「ユウ君、初めて会った時の事覚えていますか?」

「あぁ、お前に踵落としを喰らったよ」

「私、すっごくびっくりしたんですからね。でも、あれが私達の出会いだったんですよ。私の初恋の人はとってもえっちな人でした」

「お前なぁ今言う事かそれ?」

「はい。あんまり時間が無いのは分かっていますけど、これは今言う事だから言わせて下さい」


 どうやら、エキナは思い出話がしたかった訳じゃないみたいだ。

 彼女が口にしたのは俺の不安や恐怖を吹き飛ばす言葉だった。


「ユウ君との出会いは私の人生を変えてくれました。そして、これからもきっと変わっていく。その思い出全てをユウ君と歩んで行きたいです」


 真っ直ぐに俺を見てちょん、と唇を触れ合わせた後、ぎゅっと抱き締めてくれた。


「さっきも言いましたが、ユウ君の重荷は全て私も一緒に背負います。だからどうか怖がらないで、怯えないで下さい。私の初恋の人はもっとカッコいい人ですから!」


 もう、エキナの首筋から流れ出た血を見ても、震えは無かった。

 一緒に背負ってくれる、ただそれだけでどれだけ救われるか。


「ユウ君、私は貴方が大好きです。愛しています。あの式場で私を連れ出してくれた、カッコいいユウ君をもう一度見せて下さい!」


 返事は返さなかった。


 言わなくても分かってるんだろ?

 返事の代わりに、俺は再びエキナの皮膚を貫いた。


「ぁっ……そうです……もっと強く……!」


 びくっと体を震わせて、俺の背中を掴むエキナ。


「ユウ君……私の血は美味しいですか……?」

「あぁ……もっと貰うぞ……!」

「ユウ君ばっかりずるいですね……」


 エキナは俺の耳を舐めてきた。

 這わせる舌は柔らかく、恐ろしく気持ち良かった。


「びくびくして……ふふっ……可愛いっ……ですよ……!」


 うるさい奴だ。

 少し大人しくしてて貰おうか。


「あっ!?ユウ君……そんなところ揉んじゃだめ……!」


 エキナは体を限界まで震わせて、悶絶している。


「私……もう、だめ……です……ごめんなさいっ……ぁっ……んんっ……!!」


 エキナはそのままぐったりと俺に全体重を預けた。

 

 いつの間にか、穴だらけだった俺の体の傷は塞がり、体は魔力で満ち溢れている。

 痙攣しながら、俺の体にしがみつくエキナの頭を撫でてお礼を言う。


「ありがとう、エキナ。行ってくる……!」

「……終わったらさっさと行っちゃうなんて、ひどい人ですね」

「ちょ、お前!分かってて言ってるだろ!?」

「ふふっ、ほーんと可愛いですよユウ君!」

「お前って奴は……」


 俺達を囲う結界に手をかざし、人が通れるくらいの穴を開ける。

 エキナを守る結界を壊さない様に、部分的に開けた穴を結界の外側から俺の魔力で塞いだ。


「エキナ、そこで見ててくれ。ルークを助けてやらないと」

「はい、後は頼みます。怪我をしたらすぐに戻ってきて下さい。また吸わせてあげますから」

「これ以上は駄目だっての。それじゃ、色々ありがとう。行ってくる!!」

「頑張っ下さい!!」


 俺は魔力を脚部に溜め、ルークの元まで跳んだ。


 ──今行くぞ、ルーク!!



「ルークちゃん、これやばくない……?」

「ヒヒ……そうだねぇまさか天の矛の次は地の盾とは……」


 あたし達の前方にはさっきまでの天の矛を搭載した戦艦はいない。

 正確には動き出す前に、戦艦そのものを破壊したんだけど……


 破壊した中から現れたのが鉄壁を誇るという巨大な自動魔人形(オートマタ)──ユウの世界で言うところのロボットだった。


 しかも、先程まで戦艦の底に付いていた天の矛が頭部に搭載されている。


 一つ目の巨大な自動魔人形はあたしの攻撃を物ともしない。

 大昔にもあいつには苦しめられたんだよネ……


「セレント!何か案はない!?」

「んー……とりあえずあいつほっといて周りの戦艦を屠るくらいしか……」

「そうだよねぇ……でも聖国の艦隊はもうアデラートが大分片付けてるっぽいし、結局こいつを倒さないと意味が無いんだよね……」


 これはいよいよユウの魔力砲に頼るしか無さそうかな……

 あたしも使えるけど魔力足んないし。


 そこまで考えた時だった。

 地上からとてつもない魔力の塊が接近して来ている事に気付いた。


「ユウ!!」

「待たせたなルーク!」

お読み下さりありがとうございます!

いよいよ第二部クライマックスになりそうです!

また次回もよろしくお願い致します!

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