表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪いフランス人形

作者: euReka

 引越しの荷物の中から、見知らぬフランス人形が出てきた。

「ここは日本なのだから、ボンジュールじゃなくて、こんにちはですね」

 フランス人形は衣類に埋もれた体を起こし、青い瞳で私を見つめながらそう言った。

「突然のことでびっくりしているかもしれませんが、わたしにも色々と理由がありまして……」

 彼女は、悪いフランス人形に追われていて、急に身を隠した場所が、ちょうど私の引越しの荷物だったということを説明した。

「そこでお願いがあるのですが、しばらくわたしを、この部屋でかくまって欲しいのです」


 それから、数時間かけて荷物の整理を終えた頃、玄関のドアをコンコンと叩く音が聞こえた。

 ドアを開けると誰も居ないので変だなと思いながら部屋に戻ると、黒い服のフランス人形がそこに立っていた。

「ここに青い瞳の女の子がいるはずなのだけど、あなた知らない?」

 ああ、これが例の悪いフランス人形か、と思って部屋を見渡したが、最初に会ったフランス人形の姿は見当たらなかった。

「まあ、この部屋のどこかにいることは分かっているのだから、そのうち出てくるでしょ」


 さらに三日後、近所のゴミ捨て場に行ったとき、私は、青い瞳のフランス人形がゴミの中に埋もれているのを見つけた。

「こんなぼろぼろの姿になってしまいましたが、またお会いできて嬉しいです」

 仕方なく青い瞳のフランス人形を保護して部屋に戻ってくると、悪いフランス人形はこちらを一瞥し、素っ気ない態度でおかえりなさいと言った。

「せっかくその子を痛めつけて追い出したのに、また連れ帰ってくるとはね」

 私はその言葉を聞いて溜息をついた後、悪いフランス人形を部屋から追い出した。

 彼女たちの喧嘩に介入するつもりはなかったが、まずは安全を確保しなければならないと思ったからだ。


 私は悪いフランス人形がいなくなると、ぼろぼろになった青い瞳のフランス人形の、服や体をキレイにしてやった。

 彼女は私にお礼を言った後、ぜひ自分に名前を付けて欲しいと頼んできたので、適当に可愛い響きのする名前を付けてやった。

 するとその瞬間、青い瞳のフランス人形は眩しい光に包まれながら体が変形していき、人間の女性の姿になった。

「わたしの封印を解いてくれて、ありがとう」

 それは、どうも。

「実はわたし宇宙人で、地球を侵略するために派遣されたのですが、あなたは良い人なので宇宙人に改造してあげます……っていうのは嘘で」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ