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ある銃術師の建国記  作者: 実茂 譲
2.王なき地
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少女の名前

 銃術師は自分は王なんかではないといろいろなやり方で説得を試みた。伝統的、経済的、軍事的、権威的など様々な側面から自分は王ではなく、一介の銃術師に過ぎないのだと教えたが、少年にはさっぱり通じず、ただ「王よ。ご命令を」と言い続けた。

 こうして殊勝に命令を待っているくせに、じゃあ、と銃術師が自分を王と呼ぶことをやめるよう命じてみると、王を王以外の称号で呼ぶことは許されていません、と言ってきた。しばらく、少女が銃術師と三白眼の少年の問答を客観的に観察した結果分かったことがあった。

 一つ目は先代の王がいて、その王の命によって少年は柱に封じ込まれたということ。

 二つ目は少年を封じ込めた理由で、その理由は滅びてゆく王国と魔法を再興するため、王にふさわしい存在が現れるのを待つためだったということ。

 三つ目は少年は人間ではなく、魔法によって作られた人工生命であるということだった。

 そして、今、王にふさわしい人物によって自分の封印が解かれた以上、自分は王のしもべとなって仕え、王国と魔法の復興のためにこの命を捧げるということだった。

 銃術師が子どものころ、読んでもらったおとぎ話にはこのように突然、主人公が王様なりお姫様なりになる話があるにはあった。だが、そのときの主人公は勇敢な少年だったり、心優しき少女だったりで、疲れ果て人を撃つことを屁とも思わない中年の銃術師が王になる話は聞いたことがなかった。

 地下から外へ出て、砂漠で馬にまたがっているあいだも、少年はひたすら銃術師のそばに仕えた。少女は銃術師がうんざりした顔をしながら、目配せをしたのを見逃さなかった。二人は鞍にまたがるや、拍車を利かせて、膝で動物の胴を締めつけ、一気に走って逃げた。まるで捨て子のようなやり口だが、きっと魔法で作られた人工生命体は普通の人間よりも頑丈にできているという根拠のない楽観で罪悪感の処理を済ませた。

 だが、少女が後ろを振り向くと、少年は難なくついてきていた。その足は宙を浮いていて、ただ体を少し前に傾けるだけで風を切って飛ぶことができたのだ。

 一番近いオアシスで諦めて、止まり、馬とフレイに水を飲ませているあいだ、銃術師は仕方なく、王と呼ばれることを認めることにした。

「だが、お前のことは何と呼べばいい?」

「ただ、しもべとお呼びください」

「じゃあ、ボリスと呼ぶことにする。それが今日からお前の名前だ。それと、こっちは――」

 銃術師は少女に、お前の名前はなんだっけ?と言いたげな視線を向けた。

「アリソン」

 少女は答えた。こうして銃術師は連れ立って一年にしてついにとうとう少女の名前を知ることになったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 遅読ですみません。 魔法でできた人工生命は、そそりますね。 ガンファイトの世界とどう噛みあってゆくのか、たのしみです。
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