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ある銃術師の建国記  作者: 実茂 譲
1.銃術師
10/39

隠れ荷

 三日目の早朝、銃術師が恐れていたことが起きた。

 昼には目当ての町に着くというところで盗賊たちに襲われた。四人の護衛は頭巾の上に兜をかぶり、馬から降りて、窪地に伏せると、それぞれのライフルを手にして、襲ってきた盗賊たちに撃ち返した。盗賊たちは東から昇る陽光を背にして丘の上の潅木の茂みから巧みに撃ってきた。馭者が一人、肩を撃ち抜かれた。ブラットはすっかり慌てて、荷車の下に潜り込んでいた。これまで銃術師と四人の護衛が最後の日が危ないと何度も言ってきたのに、それを無視したのだ。ブラットが雇い主でなければ、盗賊との内通を疑ったところだ。

 先頭の撃ち合いはなだらかな丘の上り道を八十ヤードほど挟んでいる。銃術師が一人/殿しんがりに残された。銃術師は少女を馬から下ろすと、荷車の下に隠れさせ、後ろのほうへ馬を進めた。散発的な銃声と駄獣のいななき、肩を撃たれた馭者の手当てを頼む叫び声がきこえる。

 荷馬車の最後尾までやってきた。深い轍をこさえた乾いた泥の道の両側には背の高い雑草が生えている。襲撃者の姿を隠すのに持ってこいだと感じた銃術師は後ろから二番目の荷馬車まで戻ると、馬から降りて、荷馬車の杭に手綱を結んだ。そして、また最後尾まで戻っていった。

 ケタケタケタと笑うような声で吠えながら盗賊たちがいっせいに草むらから姿を現わした。何もなかったはずの茂みからまるで手品のように姿を見せた盗賊たちはみな略奪品で着飾っていた。宝石や銀の首飾り、それに絹の服。ブラットよりもいいものを着ているように見えた。

 銃術師は一番最初に目についた坊主頭の盗賊をショットガンで撃った。血が雑草に飛び散って、その男は仰向けに倒れた。その隣にいた二人組の足を狙って撃つと、次の瞬間には裂けた肉から骨をむき出しにした盗賊二人が道のわきの溝に転がり落ちていた。

 ショットガンを捨てて、リヴォルヴァーを抜くと、荷馬車に隠れながら銃術師はきらめく服を着た盗賊たちを次々と撃ち殺していった。弾が命中して独楽のようにくるくるまわるものもいれば、足を上に突き上げて派手に引っくり返るものもいた。最初は十五人いたのが十二人に減らされて、さらに八人に減らされると、盗賊たちが浮き足立った。逆に銃術師は荷馬車の陰から飛び出して、両手の銃で動くもの全てを撃ちながら、盗賊たちのほうへ走っていった。全部の弾を撃ちつくしたころには十五人の盗賊が道のあちこちに転がっていた。最後の五人は逃げる背中を撃たれて死んでいた。人を背中から撃つことに関して、生理的嫌悪を感じるものもいるが、銃術師は別にどうとも思わなかった。今は背を向けていても、こちらが背を向ければ振り返って撃ってくる手合いなのだから撃ち殺せるうちに撃っておけば間違いない。空っぽになったリヴォルヴァーをホルスターに入れて、盗賊たちのリヴォルヴァーを拾って、前に戻ろうとすると、荷馬車の荷台にきらりと光るものが見えた。盗賊たちの銃弾で鉄鉱石を入れていた箱が壊れたらしい。その光るものを引っぱり出してみると、それはずしりと思い、銀の延べ棒だった。

 あのブラットとかいう若造は荷馬車二十台分の銀を運ぶのに、クライン金貨五枚で済ませようとしていたのだと知れると、まあ、そんなやつだと思っていたという冷めた感想しか心に浮かばなかった。

 だが、他の四人は違うだろう。

 途中、少女が隠れているはずの荷馬車の下を覗くと、少女が無事に隠れているのが分かった。銃術師は少女を外に出すと、そのまま先頭のほうへ歩いていった。

 先頭の盗賊たちは逃げ去っていき、盗賊の襲撃は無事退けられた。

「一人やられたよ」

 サムがそう言って、そばの地面を指した。ピート・レンジリーだった。顔の真ん中に白い揉み上げと下顎の歯で縁取られた大きな穴が開いていた。

 銃術師は首をふりながら、例の銀の延べ棒を放り投げた。地面に落ちた延べ棒を見ると、三人の護衛が怒った犬のような呻り声を上げた。そして、鉄鉱石が入っていると教えられていた荷箱に飛びついた。ブラットが止めようとしたが、ヘンリーが長銃の銃身で殴って、荷馬車から遠のけた。

 案の定、荷箱のなかには銀の延べ棒が敷き藁と一緒に入っていた。

 夕方、都に着くと、ブラットは護衛たちに追加料金でエステル金貨三枚を支払うはめになった。

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