第9話 出会いと決意
自由時間になったノーティスは特にやることも無いまま、ディクショナリー書記官に言われたことを考える
(あの感じだと、無能の勇者・・・ディナイアルだっけか・・魔法は使えなくても剣術以外の変わった力がありそうだった)
(とりあえず宿を確保しに行くか・・・)
ノーティスは宿へと向かった
その頃、アルナーは王都内にある魔法学院を見学しに行った
一般公開はされていないため外観のみだが・・・
すると入口から、1人の少女が肩を落としながら出て来るのが見えた
歳はアルナー達と同じくらいだろうか
栗毛の髪を後ろで束ねていた
「はぁ・・・また入学試験落ちちゃった・・・」
アルナーとしても入学試験の内容は知っておきたい
声をかけてみることにした
「あの~・・・すいません。入学試験ってどんな内容でした?」
「あなたも入学希望ですか?」
「まだ迷ってるんですが、受けるとしたらどんな物が来るのか知っておきたくて・・・あ、僕はアルナーです」
「私はミントといいます。同じくらいの歳ですか?」
「17です」
「あ、私も17なんですよ!敬語使わなくて大丈夫ですよ」
「・・・ミントさん、入学試験の内容を教えて欲しいんだけどいいかな」
「「さん」も要らないよ。学科と実技の2つがあって、学科は魔法理論などについての一般教養レベル、実技は的に攻撃魔法を当てて壊すテストがあるんだけど・・・」
「どうしたの?」
「学科は合格点だったんだけどね・・・私、攻撃魔法を使えないの・・・はぁ・・・」
深いため息をついていた
なるほどとアルナーは思った
剣術の試合で剣を忘れたようなものだ
論外というか、当然不合格だろう
もちろんアルナーの実力ならば、問題無く突破出来る
「ミントはどうして魔法学院に入りたいの?」
「私のお父さんがハイガードにいてね。憧れて私も入りたいなぁって」
「!!」
アルナーは自分とミントが同じ目標を持っていることに驚きながらも冷静に考えた
この子はきっと魔法学院に入ることは出来ないだろう
仮に入れたとしても、ハイガードになるためには次席以上の成績が必要だ
「・・・僕もハイガードに入るのが夢なんだ」
「うわぁ!同じだね!」
「ミントの魔法適正は?」
「私はギリギリの有能で最大で3種類の属性に適正があるの。既に3種類使えるんだけど・・・」
「凄いじゃん!僕はまだ・・・」
「まだ?・・・アルナーくんの適正は?」
「・・・一応7つに適正があって、今は雷属性、泡属性、光属性の3つ」
「そっちの方がすごいよ!有能の中で最大数だもん!いいなぁ・・・」
「あはは・・・早く残りも覚えたいんだけどね。ところでさっき何か言おうとしなかった?」
「その・・・私・・・回復魔法しか使えないの。風属性、水属性、光属性のどれも・・・」
(こういうパターンもあるんだ)
魔法属性の適正については諸説あるが、血筋だったり、先天的なもので決まる
その中でどういう魔法を覚えるかは本人の努力や強い意志などの後天的なものだ
(きっと誰も傷つけたくないんだろうなぁ・・・)
アルナーの優しい性格がミントを見捨てることを許さなかった
同じ目標を持つ人間として・・・
「ミント、この後時間ある?」