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無効の勇者  作者: 武田 瑛
8/21

第8話 図書館と書記官

「まずは図書館に行こう」

ノーティスがそう言った


国立図書館には膨大な書物、つまりは情報がある


もしかしたら「無能」に関する記述も見つかるかもしれない


いざ図書館に入ると3人は固まった


「多すぎる・・・」


そう、書物が思いのほか多すぎた

そしてその中から歴史の表舞台にはない「無能」の記述を見つけるのは至難の技だ


雪原の中からコンタクトレンズを見つけるくらいの難易度だろう


3人がかりで見つけようとしても、何十日、いや何年もかかるかもしれない


・・・と、そこに1人の人物が通りかかった


「何か探してるのかい?」

この人こそ、人間国宝であり王の書記官を務める〖我は辞書なり〗「ディクショナリー書記官」である


瞬間記憶能力を持ち、今まで見たことのある書物は全て記憶している人物だ


ノーティスが答えようとした時、ギュギュが前に出た


「ディクショナリー書記官ですね?お初にお目にかかります。私はイナホ村領主ギュスターヴの次男、オーギュスト・ギュスターヴです」


ノーティスもアルナーも耳を疑った

(さっきまで自分達と一緒にいた男は別人だろうか?)



「この度は友人のアビリティについて調べる用事で同行致しました」


とりあえず2人とも黙っておくことにした


「ほう、ギュスターヴ家の・・・そうか、よく来たね。私は今日はお休みを頂いてね。久しぶりに国立図書館の本を読みに来たんだ」


ディクショナリー書記官にとっての読書とは開いて閉じるだけである

その行為だけで全て記憶出来るのだ

つまりは国立図書館において、新刊以外は頭に入っていることになる


「ところで友人のアビリティについてということだったか。何を調べたいんだい?私で良ければお手伝いするが」


「ご自身の用事はよろしいのでしょうか?」


「構わないよ。既に新刊の半分は読み終わったんだ。まだ午前中だし息抜きも必要だろう」


渡りに船であった

雪原の中でコンタクトレンズを探す作業だったものが、全体型の探知機を手に入れたようなものである


「ありがとうございます。・・・こちらの友人が実は魔法適正が無いものでして」


ディクショナリーはノーティスをじっと見た


「ということは「無能」か・・・君の名前は?」


「ノーティスと言います」


「そうか・・・ノーティス君、少し待ってくれ」


そう言うとディクショナリーは額をトントンと叩く仕草をした


「全能の勇者第3巻?いや、違うな・・・外伝か?」


ブツブツと何かをつぶやいている

どうやら、頭に入っている膨大な情報の引き出しに検索をかけているようだ

「外伝・無能の勇者・・・あったあった」


「今から約500年前に存在した勇者がディナイアルと言う名の無能だったと書いてあった」


「無能なのに勇者だったんですか?」


「ああ、君と同じく魔法は使えなかったようだが剣術は素晴らしかったようだ」


勇者と呼ばれるのは1つの国に1人

他の魔法を使える凡能ローアビリティ有能ハイアビリティはおろか、全能オールまで差し置いて勇者の称号を獲得している

剣術1本では無理な話だ


しかも、仮にピッタリ500年前なら現在の〖全能の勇者〗ディアウスが27歳になるまでの年とも被っている


それを差し置いてというのは考えにくい内容だ


「あ、そうそう、ディナイアルは筋骨隆々のスキンヘッドだったそうだ」


「ブフーッ!」

アルナーが以前のように吹き出す

そして、笑いをこらえているようだった


ノーティスはアルナーをじろりと見たあと会話を続けた


「何か特殊な力を使えたとかはありませんでしたか?」


「ふむ・・・ほう、これ以上は閲覧制限に引っかかるな」


「閲覧制限ですか?」


「ああ、ギルドの定めた冒険者ランク、あるいは国王陛下直々の許可が無ければ読むことは出来ん。私は全ての書物の閲覧を許されているが、それを君たちに教えて上げることは現時点では不可能だ」


「なるほど・・・では私たちも冒険者ランクを上げれば閲覧が可能になるんですね」


「そうだな。その項目の閲覧に必要なのはBランクだ」


「分かりました。ありがとうございました」


「健闘を祈っているよ」


ディクショナリーと別れ、3人は街の広場で今後について相談を始めた


アルナーが口火を切る

「どうする?これから」


「俺は自分を知りたい。そのためにはあの本を読むしか無いと思う」


「俺様は兄上から許可を貰っているからな。ノーティスの目的が終わるまでは着いていくぜ!」


「ということは2人は冒険者になるんだね・・・僕は・・・」


アルナーの迷いは魔法学院をどうするかである

魔法学院に入り、ゆくゆくは国王直属の近衛兵団「ハイガード」に入るのが目標だからだ


「ハイガード」に入る条件は2つ

魔法学院での成績が次席以上、つまり一学年から2人だけに入団の権利が与えられる


もう1つは何かしらの活躍を見せ、国王から直にスカウトをされること


現時点では有能ハイアビリティのみで構成されているが、必ずしもそうである必要はない

単純に入団出来た極わずかな人間が有能ハイアビリティだったというだけだ


「ごめん・・・今すぐには答えは出せないや。明日まで考えさせて貰ってもいい?」


「もちろんだ。アルナーが決めたことなら文句は言わない」


この日は結論が出せず、次の日まで自由時間となった

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