第7話 アルナーとギュギュ
村を出た時には既に夕方頃だったので中間地点ほどで野営を挟んだ
起きてからの一行は特に危なげな戦闘も無く順調に進んでいく
ギュギュがスピードで撹乱し重力魔法で動きを封じ、アルナーとノーティスがトドメを刺す
ノーティスはギュギュとの1戦以降、魔物との戦闘に参加するようになった
ショートソードについて調べることが出来たのが大きな理由だ
今までは形見だと思って、壊さないように大切に持ち歩いているだけだったが、アダマンタイト製だけあって壊す方が難しい
鞘に岩を叩きつけても岩が砕け、刃先に叩きつけても岩を貫通する有様だ
ということが分かったのも、ノーティスやアルナーが寝ている間に「どれだけ硬いか試してやろう」とギュギュが要らんことをしたからだ
・・・その後、音で目覚めたアルナーが怒りの形相でこっぴどくお仕置きしたのは言うまでもない
ノーティスとしては実用可能なのが分かったのであまり怒る気にはならなかったが
鞘は鈍器としても使い、盾としても活躍する
剣は凄まじい切れ味だ
刃こぼれ1つする事がなく、小型の魔物ならほとんど抵抗を感じずに両断出来る
ただノーティス自身の身体能力は一般人より少し高い程度なので、主な近接戦闘はギュギュが担当している状態だ
2人があまりにも強いため、「俺いらなくね?」と言ってみたが「いや、いるでしょ!」「誰のための調べもんだよ!」と揃って言われたため、歯がゆい思いもしながらもリーダーを務めた
ノーティスは気づいていないが、2人にとってノーティスは大事な「つなぎ」である
アルナーにとっては親友であり、一緒にいると楽しい仲間だ
ギュギュは退屈な日常から旅立つ機会を得たため感謝をしている
だが、アルナーにとってギュギュはただのガキ大将であり、すぐ弱者に絡むため仲間としては認めていなかった
逆にギュギュは退屈しのぎに片っ端から村人達や冒険者などに力比べを挑み、それがアルナーの目に止まった場合、問答無用でボロボロにされるためアルナーに苦手意識がある
つまり、ノーティスがいなければパーティが成り立たない
ちなみに、明確な線引きは無いがあえて数値的な言い方をすると2人の強さはほぼ互角である
それでもアルナーとギュギュが本気でやり合った場合アルナーが毎回勝つのは相性の問題である
ギュギュの使う身体強化魔法も重力魔法も射程が短い
対してアルナーは遠距離からの範囲魔法を使えるためだ
分かりやすい例えだと、一流のボクサー対一流の銃火器使いの遠距離戦という所だろうか
もちろん、ギュギュが不意打ちや寝込みを襲った場合、圧倒的にギュギュが勝つだろう
だが、ギュギュは卑怯な手は一切使わない
アルナーの得意な距離で戦い、一方的にボロボロにされるのである
そしてアルナーは相手によっては卑怯な手を厭わない
弱者のために戦い、時には戦略的な意味で卑怯な手も使うアルナー
自分の退屈しのぎのために戦い、卑怯な手は使わないギュギュ
仲が良くないのは自然なことであった
そんな2人だが、ノーティスがいると不思議に歯車が噛み合う
連携を取りながら、ついに王都〖メランジェ〗へとたどり着いた