第6話 教会と文献
教会に到着した2人は神官の元へ行き、まずはノーティスの傷を癒してもらった
改めて回復魔法の有難みを知る
「早いな!あっという間だ」
「そりゃあね。王都ならもっと凄いヒーラーもいるんじゃない?」
続いて魔法適正の石版でそれぞれの適正を調べてみる
まずはアルナーからだ
7つのオーブが光る
そして石版には現在の適正が泡属性、雷属性、光属性と出た
「うーん・・・やっぱり新しい魔法は出てないな~・・・」
「いやいや・・・7つ光るだけでも凄いだろ・・・」
次はノーティスが調べてみる
やはりと言うか、オーブは1つも光らなかった
「・・・・・・」
「ドンマイ!」
「1つだけ言っていいか?」
「何?」
「羨ましい!」
アルナーが爆笑を終えた頃、図書室へと向かった
「まずは過去の「無能」に関する文献からだね」
「ああ、手分けして探してみよう」
ほとんどの人は凡能、稀に有能として生まれる中、無能に関する文献はほぼ無いようなものである
1巻を通して無能に関するものが書かれている書物は存在しない
つまりあらゆる書物の中から、部分的に漁るしか方法は無かった
ノーティスは「全能」という本を手に取った
全能持ちも数少ないが、大体は歴史の表で活躍をするので英雄譚として残りやすい
場合によっては自身で本を書いたりもするのだ
実際、現在の〖全能の勇者〗であるディアウスは527年という時を生き、余裕があれば取材にも応じる気さくな人間である
材料などいくらでもあるという訳だ
ノーティスが手に取った本には無能に関する記述は見つからなかった
「ブフーッ!」
遠くからアルナーが吹き出すのが聞こえた
ノーティスが向かうとアルナーがゲラゲラ笑い転げていた
「どうしたんだ?」
「アハハハハ!無能で生まれた人って頭髪の色素が無いか、頭髪が無いかどっちからしいよ!ノーティスも髪の毛真っ白だから信憑性高いかもね!」
「お前なぁ・・・人が真面目に探してるのに」
と言ったが内心、頭髪が無い方じゃなくて安心したノーティスであった
「ブフーッ!ごめんごめん!そっちはどう?」
「今のところは見つからないな」
「もっと大きな図書館に行かないと見つからないかもしれないね」
「もう少し探して無かったら国立図書館に行ってみたい」
「了解!特にやることも無いし一緒に行くよ」
しばらく漁ってみたがやはりそれらしいものは見つからなかった
2人は国立図書館のある王都へと向かうことにした
出発前にアルナーの家に寄った
「母さん、しばらく留守にするから」
「おばさん、畑仕事出来なくてすいません」
「大丈夫よ!アルナー、ノーティス、気をつけていってらっしゃい!」
「「行ってきます!」」
村の入口で2人の行方を遮るものがいる
・・・ギュギュであった
先ほどコテンパンにされたからか、しおらしい顔をしている
「どこか行くのか?」
「うん、国立図書館にね」
「そうか・・・」
本当はギュギュも行きたいのであろう
村では自由奔放とはいえ、準男爵の次男
さすがにお供も連れずに村を離れることは出来ない
ノーティスはいいことを思いついた
「さっきの条件だが、俺が勝てば1つだけ何でも言うことを聞くんだったか?」
「あ・・・ああ、そうだな。出来る範囲でだが約束は守る」
粗野にして暴、だが卑にあらず
貴族とは思えない程に口は悪く、村で問題が起きたら大体こいつのせいだが悪人では無い
その証拠に自分より弱いはずのノーティスにもしょっちゅう絡む代わりに、自分よりも強いはずのアルナーにも決闘を挑み毎回負けている
相手が弱かろうが強かろうが全力を出す男
いい意味でも悪い意味でも・・・
ノーティスはギュギュが苦手ではあったが嫌いではなかった
「じゃあ、このパーティに入れ」
「・・・え、ノーティス本気?」
アルナーがこちらを見る
「ああ、戦力は申し分無いし、もしかしたら貴族じゃないと調べる許可が降りない場合もあるかもしれない」
「よっしゃー!任せろ!」
オーギュスト・ギュスターヴが一向に加わった
アルナーの中・遠距離魔法に頼る戦いをしていたノーティスのパーティにとって、近接戦闘・牽制が可能なギュギュは大きな戦力となるだろう
「ところでリーダーは誰なんだ?」
「そりゃあ、強さから言ってアルナーだろ」
「え?ノーティスじゃないの?」
「2人共やらないなら俺様が・・・」
「「お前(君)は無い」」
結局、目的は無能のルーツを探るためだったため、ノーティスがリーダーをやることになった
「すまんが、一応兄上に確認を取ってくるから着いてきてくれ」
ギュギュがそんなことを言い出したので、一緒に屋敷へ向かう
(一応こいつも貴族だもんな・・・)
そう思いながら歩いていると、ギュスターヴ家の屋敷に着いた
「兄上はいらっしゃるか?」
「はい。オーギュスト様。執務室にいらっしゃいます」
メイドが案内してくれた
執務室のドアをノックする
「オリエント様。オーギュスト様がお会いしたいと」
「入りなさい」
静かな声が聞こえた
入ると、ギュギュとは似つかない・・・いや、顔などはどことなく面影を感じるが身長は頭1つ分ほど低く、肌は白い男がいた
この人物こそギュスターヴ家の次期領主である「オリエント・ギュスターヴ」である
また、ギュギュの実兄でもあった
病で療養中の父に代わり、ほとんどの仕事をこなす人望厚き次期領主
そう、横暴貴族なのはギュギュだけであって、父と兄は実に立派な人物である
いつもは荒い言葉使いのギュギュも家では大人しい
ギュギュが口を開いた
「兄上、しばらく村を離れます」
「ふむ、どこに行くんだい?」
「王都です、こちらにいる友人のノーティスの調べ物を手伝いたいと思いまして」
「ふふ、本当は遊びに行くつもりなのだろう?」
「・・・はい、実は友人と王都に行くのは初めてでして」
「分かった。父には「貴族としての見聞を深めに旅立った」と伝えておこう」
「ありがとうございます!」
こうして、許可を貰った
屋敷を出た途端、ギュギュはいつもの調子に戻った
「さて!行くか!」
「なんか・・・凄いよく出来たお兄さんだったな」
「しかも兄上は5つの属性に適正がある有能持ちなんだぞ!」
「次期領主なのも納得だね。ギュギュとは大違い」
「当たり前だ!兄より優れた弟など存在しねぇ!」
「どっかで聞いた事のあるセリフだけど、それは弟側が言わない奴だぞ?」
そんなことを言いながら村を出ようとすると、ギュギュの腰巾着であるボーンとリバーが現れた
仲間になりたそうにこちらを見ている
「ボーン!リバー!しばらく出かけっから、アルナーの家の手伝いをしてろ」
ギュギュにしては気の利く考えだとノーティスは思った
「・・・へい!お気をつけて!」
これで力仕事とかは任せられるだろう
ノーティス一行は王都へと向かう