第2話 ノーティスとアルナー
道を進んでいると大きな唸り声が聞こえた
「なんだろう・・・ブラックウルフに似てる?」
アルナーが聞いてくる
「もう少しでかいな」
「・・・なんか近付いてきてない?」
「いや・・・来たぞ!」
目の前に巨大な狼型の魔物が立っていた
「速くね?」
「しかも、音しなかったよね・・・」
「でかくね?」
「さっきのブラックウルフの3倍はあるね・・・」
「勝てなくね?」
「僕でもキツイかな・・・かなり・・・」
「マジかよ・・・」
「ちなみになんて魔物か分かる?」
「直接見たことはないけど、多分アサシンウルフだな」
「うん!知らない!」
アサシンウルフ
体長は3メートル近くにもなり、常時消音効果を持ち、即死魔法を使う魔物
ギルドが定めた討伐ランクはB+にもなる
「ライトニング!」
アルナーが先制を仕掛けた
雷撃がアサシンウルフ目掛けて襲いかかる
初めから全力で行かなければ・・・いや、どの道勝ち目などないのだが・・・
アサシンウルフはその場にいなかった
気が付くとアルナーとノーティスの背後にいる
「危ない!」
「え?」
アルナーが叫んだが、既に相手の魔法が発動していた
「グルルル!」
上級即死魔法「デス」
即死耐性や即死無効の装備や魔法を持たない敵単体を問答無用で即死させ、即死耐性があったとしても、耐性の度合いにもよるが数秒から数時間の間気絶させる
どの道、自分よりも格上の相手の前で意識を失うことは死に直結する
弱い方だと判断したのだろう
まずはノーティスが狙われた
「ぐっ!?」
心臓を鷲掴みにされたような感覚がノーティスを襲う
今までの17年間という短い人生が走馬灯のように駆け巡った
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ノーティスが10歳の頃両親は同じ病にかかり亡くなった
父が最期に渡してくれた剣
白と金を基調に装飾された一振りの見事なショートソード
祖父が若い頃に魔物に襲われた際に助けに来てくれた「全能の勇者」から貰ったという
「ノーティス、この剣をお前に・・・きっと、守ってくれるはずだ」
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両親が亡くなったあと、自宅で一人暮らしをしていたが、アルナーの両親にあたるストローおじさんとペチュニアおばさんに良くしてもらい、畑仕事を手伝ったり夕飯をごちそうになったりしていた
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(ペチュニアおばさんのシチュー食べたかったな・・・魔物学者にもなる夢も・・・まだ何にもしていないのに・・・)
(まだ何にもなれてないのに!)
「こんな・・・ところで死にたくない!」
薄れゆく意識の中でノーティスが叫んだ
・・・瞬間、身体が軽くなる
心臓を鷲掴みにされたような感覚も消えた
アルナーが驚愕の表情を浮かべる
「ノーティス!大丈夫!?」
「ああ・・・何とかな・・・」
それ以上に困惑したのはアサシンウルフだ
今まで出会った敵の中で即死魔法が効かなかった相手はいない
即死しなかったとしても意識を奪った相手を食い殺せたからだ
結果的に上級魔物としての本能が戦闘を避けた
アサシンウルフは素早くその場から去っていった
「危なかったね!」
「ああ、死ぬかと思った・・・」
「ノーティス何かした?」
「いや?何も・・・」
友人が生き残ってくれたのは素直に嬉しい
だが、腑に落ちない違和感をアルナーは感じていた
状態異常無効魔法など高位の上級魔法
ましてや魔法を使えないノーティスが使えるはずもない
・・・と、なると
「もしかして、剣かな~・・・」
「ああ、これか?」
「僕は鑑定魔法が使えないから、村に戻ったら調べてみない?」
「鑑定か・・・そうだな」
2人は再び村を目指す