小説家なら一ヶ月に短歌100首くらい作れるよなぁ? ~痕苦裏塊和歌集・春下・初夏~
1.
川のべに 鯉を模した幟たつ
水を模して風も流るる
(h.31・4月26日 金曜日)
2.
夕暮れ時は 風みなぎりし西の国
夢見るままにこい待ちいたり
(h.31・4月26日 金曜日)
「こい待ちいたり」の「こい」は
「鯉のぼり」と「恋」をかけてる。
同音異義語を利用した掛詞である。
3.
子どもの日 花も驚く鯉のぼり
つつじの色の気にふくれたり
(h.31・4月28日 日曜日)
4.
晴れなれど 風強かにて鷹の声
山藤の花を于とたたきけり
(h.31・4月28日 日曜日)
寺山修司がよく鷹を俳句に詠み込んだというから
俺もやってみたよ。
どうですかね、寺山さん? 私の歌は?
何? 季違いだって?(鷹は冬の季語)
じゃあこうしよう……
4-1.
晴れなれど 風強かにて五月の鷹の
叫びは藤花を于とたたきけり
(h.31・4月28日 日曜日)
于……『荘子』は『斉物論』の
「前者于と唱ふれば随者喁と唱ふ」より。
感動詞の「嗚呼」と同義の言葉でもある。
『五月の鷹』が季語ならこれは季重なりかな……あちゃぁ
5.
瞑目し脳裏によぎるは影法師
五月の鷹の風下にこそ立つ
(h.31・4月28日 日曜日)
寺山修司「目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹」に
意趣返し。
歌合わせと行こうじゃねえか、サヨク様よぉ。
6.
ちはやふる五月の鷹は見晴るかす
故郷のみどりに消ゆれけるかも
(h.31・4月28日 日曜日)
アナーキーな大衆運動の末路を詠ってみたが、
どうかね寺山さん?
産学共同体粉砕とか家族制度反対とか言ってた連中も
結局は普通に就職して普通に家庭を持って
国の歯車の一部となっていってるのだよ。
それでもいまだに小数残存している革命派は
非人間ぶりの徹底に救いがあると思ってるんだから、
救われないよな。
彼らは「運動が生き甲斐だ」と公言している。
やっぱり出来損ないの人間なんだな。
この歌の肝は「ちはやふる」だ。
アナーキーな寺山君としては、大好きな鷹を詠む歌に
こんなThe.伝統的な、しかも神的なものや
歴史的なものにかかる枕詞を使われることは
甚だ屈辱的なことかもしれないねぇ?
7.
青い風萌ゆ花を解す五月の鷹は
稀な形したはかなき雲かな
(h.31・4月30日 火曜日)
花鳥を解する偉大なクリエイターである『五月の鷹』
(=寺山修司)は
めずらしい形をした、雲のように儚い存在であった。
私は党派的なものはあんま好きじゃないから
これくらいにしてやる(五月の鷹って歌いづれぇし)。
8.
五月の媼 田に侍らせししらさぎに
豊穣の月を祈らせしめるかな
(h.31・4月28日 日曜日)
「媼」はおばあさんのことだね。
田植えの女手だよ。
9.
我は倦む 春も過ぎれど凍えるばかり
挽けよ風よ綿毛の花を
(h.31・4月28日 日曜日)
綿毛の花、すなわちタンポポ。
10.
指先で戯る白い花こくこくと
実にすずらんは裸の君かな
(h.31・4月29日 月曜日)
鈴蘭を詠んだ歌ってあんまりないんですねぇ
いかにも歌詠みが好きそうな花なのに。
こくこく=|刻々。
時間がどんどん過ぎていくイメージ。
こくこくと小さく揺れる、という意味も
かかっているのだ。
10-1.
すずらんをさるよこくこく朝まだき
実にかの花は裸の君かな
(R.1・5月14日 火曜日)
「さる」の部分に
手でいじるという意味の「戯る」と
朝の時間が刻々と去る、の「去る」の
二つの意味を持たせようとした改変版。
11.
朝ぼらけ窓辺に佇むすずらんよ
大自慰者たる我の妹たれ
(h.31・4月30日 火曜日)
古語で言う「妹」は妻とか恋人の意味ね
シスコンじゃねえから
12.
休日の予定なき身は性ほとばしる
我が槍で散れすずらんの花
(R.1・5月1日 水曜日)
自分で書いておいて言うのもなんだが
なんか犯罪臭する
13.
日出ずる草木深し君が代は
あかねさす縁の色にぞくくれり
(h.31・4月30日 火曜日)
前作に投稿した歌。
以下その時のメモ。
「平成から令和へ、
新天皇陛下御即位心よりお慶び申し上げます。
「草木」ってのは民草、つまり国民の暗喩だよ。
「くくれり」はくくり染め、
絞り染めにするって意味だよ。
「あかねさす縁の色」(=紫色)が
大小の草木に乱反射して
モザイクと言うか、綾を為している、
みたいなイメージです。
しかし、枕詞が第四句に来ちゃったなこれ」
では気を取り直して詠み直そう……
13-1.
あかねさす縁の色の君が代に
黄に和ぐ日出て草木をくくる
(h.31・4月30日 火曜日)
枕詞は初句か第三句に来ないと駄目らしいんですよね。
13ー2.
あかねさすむらさき野の果て君の星
にっぽんの顔草木くくれり
(R.1・5月6日 月曜日)
『あかねさすシリーズ』じゃこれが一番いいかな
14.
剣を取れ玉を着飾れ印を押せ
錦の御旗は神のまにまに
(h.31・4月30日 火曜日)
前作に投稿した歌。
以下その時のメモ。
「※神のまにまに……神の随意に。神の思召すままに。
神のみぞ知る、みたいな感じ?
剣、玉、印は三種の神器、
錦の御旗は帝の軍旗。
天皇が古来より持っているアグレッシブさと信心深さを
讃える気持ちで詠みました。」
15.
人のためうつし世のため破魔のため
勇み立てるや五月人形
(h.31・4月30日 火曜日)
「勇み立てるや」は疑問形。
勇ましい五月人形よ、君は五月病にはならないのか?
って言ってる。
疑問形の使い方あってるか自信ないけど。
※うつし世……現世、浮き世
16.
あの歌は五月の朝にぞたてまつる
過去より出ずる恐怖の鏡
(h.31・4月30日 火曜日)
Fate/stay night [Heaven's Feel]
II.lost butterfly 主題歌を聴いた感想。
映画は見てない。
映画見た方は感想欄で映画の感想お気軽に
呟いていってくださいね。
私は見てないから多分話についていけないだろうけど。
あ、ちなみに上映は5月のマチアソビに
合わせりゃ良かったのにって気持ちも
この歌にはこめてる。
17.
あの歌は五月を越え出ぬ迷妄の
魂を捕らふ憂き世憂き世と
(h.31・4月30日 火曜日)
18.
詩を求め雨傘ついて行く山は
楝散らばる黒猫の道
(R.1・5月1日 水曜日)
楝=栴檀。あふちとも言う。
小さい白い花をたくさん咲かせてる木です。
「詩」は「死」とかけてる。
近所の山道を散歩していますと
輪っかを作ったロープのかかった木を見つけまして、
それで誰かが自殺するのかもしれないという予感に
駆り立てられるようにして詠みました。
その近くでは近所の人が飼ってる黒猫ともすれ違うので
この猫も歌に詠みこんでみました。
「し」、散る花、黒猫。
いずれも死を連想させる素材。
しかも栴檀は春の終わりに盛りを迎える花だしね。
春の終わり。
19.
石垣に雨が残したかたつむり
何をか語る銀の碑文は
(R.1・5月3日 金曜日)
20.
雨あがり黒あでやかなる石垣に
苔を食みたる蝸牛の親子
(R.1・5月3日 金曜日)
20ー1.
雨あがり黒あでやかなる石垣に
何をか語る蝸牛の碑文
(R.1・5月3日 金曜日)
これは没かな。
21.
五月病散文調たる吾の日々は
窓の日差しをただただ見る日々
(R.1・5月3日 金曜日)
22.
破滅なり優しい女を夢に見る
己に優しい男の本能
(R.1・5月3日 金曜日)
23.
阿千田は竹を挽きたる旧街道
猪も眠れる静の阿波道
(R.1・5月3日 金曜日)
24.
藪ゆかば鉄でこしらえしおおあはき
登頂せりとの悪友のうわさ
(R.1・5月3日 金曜日)
あはき……樫の木の古名。
「鉄でこしらえしおおあはき」は
電線を張ってる鉄塔のこと。
25.
人の子は酸いも甘いもひとときに
火の中でさえなやみたらたら
(R.1・5月3日 金曜日)
26.
汝が道は峠を越えてなお続く
肥香ばしかりし記憶のかなた
(R.1・5月3日 金曜日)
おじいちゃん家がまだ楽しかった頃。
なんかだんだん作る歌が感傷的になってきたな
良くない傾向だ。
27.
バイパス沿い雨ざらしの萱の下
炊飯ジャーです拾ってください
(R.1・5月6日 月曜日)
お願いしますひろってください
きれいにしてます拾ってください
あなたのごはんを焚かせてください
よろしくよろしくお願いいたします!
YO!
28.
人みなにその名も隠れなき住友は
牛を引きたる杉を挽きたる
(R.1・5月6日 月曜日)
29.
踏んじゃった乾いた音したかたつむり
ごめんねの念は虚空に渦巻く
(R.1・5月6日 月曜日)
渦。かたつむりの殻だけに。
……とまあこんな調子で100首を目指しましたが
あえなく時間切れを迎えてしまいました。
駄目でした。
力不足、感性不足を痛感しました。
私よ、書を読んで街に出よう。
皆様、これからますます暑くなったり、
大雨が降ったり、雨の影響で寒暖差が激しくなったり、
色々大変な思いをするでしょうが、
これからも根気強く各々のお仕事お勉強頑張っていってください。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
最初に「29首しかないよ」って表記すべきですかね?
R.1 10 19 (土)修正
以下の文言を削除
「30.
我が足のしびれのリズムに倣ならうもの
鱗雲 鯉のぼりの尾 夏へ続く日々
瀬戸内の潮 団地の家並み 無限の山脈やまなみ
陽炎の揺らぎ 悪魔のささやき 「眠っちまえよ!」
「楽になれるぜ」「嫌な今日もそれで終わる」
「何も言えないままで何が悪い?」
「何も言えない男で何が悪い」
「今日一日一言も喋らずに」「眠っちまおうぜ!」
「人生ずっと黙ったままで」
「忘れ去られながら生きていこうぜ!」
「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
「生きるは死ぬ、死ぬは生きる」
「この世は極楽、この世は地獄」
「信じろ、みんな永らえる」「信じろ、それはみんな嘘」
俺は来た 俺は見た 俺は知った
俺はあいつであいつは俺
鱗雲 鯉のぼりの尾 夏へ続く日々
瀬戸内の潮 団地の家並み 無限の山脈やまなみ
陽炎の揺らぎ 悪魔のささやき 全部俺
全部しびれる俺の足だ
しびれるリズムを胸に刻んでしびれた足で歩き出す
星のように回るんだ そうだったんだ 知らなかった
世界の中心なんてなかった
俺が世界だったんだ!
(R.1・5月31日 金曜日)
YOYOYOYO! 短歌じゃねぇYO」