~世継ぎ~
ジルの活躍を称えアルディは爵位『辺境伯』と称号『大魔法士』を与え、元はシリウスの領地だったミーアと、隣接するバルバロッサ領の北部を貰い受け、代理から領主となる。シリウスもジルにならばと言い快く了承し、本当の意味でジルは領主となったのである。これからは、領地内の全ての問題はジルの考えや行動によって決め解決していかなくてはならない。
「すいません。俺から提案があるのですが。」
会議が終わろうとしていた時、ジルは小さく手を挙げアルディにある提案をするのであった。
「提案?言ってくれ。」
「シリウス、ローガン両大公にインシュミット公それに私が領地に戻っているときに、今回のように王を直接狙う輩がまた現れたときの為に我が弟ライル=ヴァンクリフとローガン大公の御息女エリス嬢をアルディ王の側近として常に側に置くというのはどうでしょう?」
近衛騎士団として王の側にいたインシュミットの代わりをライルとエリスにさせるというものだった。だが、シリウスはジルに、その話には少し無理があると言ってきた。
「ジルよ。ライルはまだ12才だぞ。エリスもだ。さすがに早くはないか?」
「ですが、ライルは剣の腕は俺より上ですよ。エリス嬢も、槍と魔法をある程度使えますし。」
「いや、剣と魔法ではなくてだな。勉学と貴族の嗜みのほうだ。」
「それならば問題ありません。剣や魔法は、王宮騎士や神殿魔法士に習えば問題ないでしょう。時間を見て私やインシュミット公も稽古をつけますし。勉学などは秘書長のサルビアさんにお任せすれば問題ないでしょう。いかかです?」
ジルの提案についてアルディは、険しい顔をして俯いていた。だがそれは嬉しさを隠すためのものである。転生前の愛する弟と過ごせるなどと思ってもいなかったからだ。しかも妹と思っているエリスと一緒に。ジルのアルディへの気遣いに有り難さに痛み入る思いで一杯になった。
「ジルの提案、本人次第だが採用しようと思う。シリウス、ローガンどうだ?」
「王の側で仕えることが出来るのは何よりの誉れ。有り難く思います。」
「同じく。」
「では、一度二人の口から本人達に打診してくれ。」
「わかりました。」
こうして、ライルは剣をエリスは槍と魔法を扱う護衛騎士として王の側で仕えることになった。この二人が武功たて名を挙げるのに時間がかからなかったが、それはまた別の話。
「王よ、提案ならば儂からも一点あるのですが。」
おもむろに、法務大臣 フィフス=ゴードリック辺境伯が新たなる提案をしてきたのだ。このゴードリック伯は、法務大臣とは名ばかりでアルディにとっては爺みたいな存在の一番の年長者だった。
「爺の提案とは何だ?」
「お世継ぎですじゃ。」
「なっ!!まだ俺は18だぞ?!」
「なにをおっしゃいますか!もう18ですぞ!婚約者の一人や二人居てもおかしくない歳ですじゃ!」
「いや、しかしだな……。」
「しかしもへったくれもありません!インシュミット公には後継ぎがおりますし、王の護衛の後継者まで決まったというのに、肝心の王の世継ぎがいないのは大問題ですじゃ!!」
アルディのたじろぐ姿を見た、シリウス、ローガン、ジル、インシュミット、サルビアは笑いを堪えるのに必死だった。だが、その矛先はジルにまで向いてきた。
「ジル殿!お主も笑い事ではない!正式に領主となった今、早く婚姻を結びなされ!聞けばインザス共和国の王女とは懇意の中だとか?」
「待ってください、ゴードリック伯。俺には、誓いあった者がおりますのでリザベル王女とは無理ですって。」
「ほう。ジル殿は、そういう方が居なさるのか。ならば安心じゃな。」
「そうですよ。俺よりも王ですよ。あっ!そろそろ帰還準備をしなければ。ということで俺は行きますね。」
(すまんアル……。ゴードリック伯を任せた。)
「俺は、ライルに王の側近の話をしに行かなくては。」
「そうだな。俺もエリスにその事を言いに帰ろう……。」
「領地を与えていただいたことを家族に報告に……。」
「そういうば。秘書の仕事が残っていたのでしたわ…。」
「ちょっと待てって!」
(そりゃないよジル……。皆も逃げやがった……。)
ゴードリック伯にアルディを差し出して、やり玉にあげられた矛先を返した。ゴードリック伯はアルディに向け、世継ぎや婚姻についての説教に近い話が長々と続けられていくのであった。ゴードリック伯をアルディに押し付け、ジルは会議室を後にし、そこにいた他の者達も、とばっちりを受けたくはないので何かと理由をつけ、その場を後にしたのだった。




