~授与~
アルディ=オズワルド国王からの頼みとは、伝達ナイフ、念話指輪を王国だけに販売する独占販売契約の締結と移動手段に便利な転移玉に代わる物の作成だった。もちろんこれまで同様に転移玉を利用するが使用する度に壊すのは理にかなっておらず壊さずに使用できるものが良いとの事だった。実際、道具袋の中で割れるなどの問題点も少なからずあったので、これを快くジルは引き受けた。
「もちろん創るのに掛かる金は国が負担する。よろしく頼む。」
「他国に売れば戦争の道具になりかねませんからね。」
「人材不足を補う為に転移がすぐ出来るというのは助かる。シリウスやローガン達の負担を減らすためにもよろしく頼む。」
「わかりました。そのように取り計らいましょう。」
「それと、ジルにはバルバロッサ亡き今、あいつの領地を引き継いでもらいたい。」
「えっ?海の王の領地全てですか?」
「ああ。不服か?」
ジルは悩みながらアルディ国王の申し出の返答をした。
「有難い話ですが。お断りいたします。」
シリウス以下居る者全てが驚きの表情でジルの方を見た。バルバロッサの領地はオズワルド王国の中でシリウスの次に広い面積で、上を目指す者ならば是が非でも手に入れたいだろう。
「何故、断るのか理由を聞かせてくれるか?」
「オズワルド王国は四方を海に囲まれていますよね。他国からの侵略を考えると、唯一陸続きなのは、ミーアと隣接しているインザス共和国からと考えられます。幸いにもインザスとは友好関係ですが、他国がインザスに攻め入り、我が国へ仕掛けるやもしれません。その時は我が国の重要拠点がミーアとなるでしょう。私が日頃より駐留しておけば、緊急事態にも何かと対処が可能かと考えます。王都を海から船での襲撃も考えれますが、父上やローガン大公、インシュミットさんがいらっしゃれば問題ないでしょう。それと…。」
「それと、何だ?」
「それと、仲間がミーア出身ばかりですから、私一人離れた場所に居たくはありません。」
「なるほどな。あえて『火中の栗を拾う』というわけか…。わかった、ジルの思いを尊重しよう。」
「我儘、言って申しわけありません。」
「いや、王国の為を思っての事だ。謝る必要はない。しかし、そうなるとバルバロッサ領地を誰に任せるかだな?」
「インシュミットさんが、いいんじゃないですか?近衛騎士団全てが裏切ろうとも最後まで王の側で戦ってくれたのですから。」
いきなりの指名だったがインシュミットは冷静にその話を断ってきた。
「近衛騎士団を束ねる者として不甲斐ない所為で王に御迷惑をおかけました。それなのに、その様な申し出をお受けする訳には参りません。それに騎士としての才しかありませんから領地運営など、とても出来そうにありませんよ。」
「しかし、お前の家族のためにも、そろそろ領地くらい持たなくてはいけない年齢だぞ。」
「インシュミットさん、結婚していたのですか?」
「ジルは知らなかったか。奥方に、子供5人の大家族だ。」
「そうなんですか。それならば、この話、受けた方がいいですよ。」
アルディとジルの言葉による圧力に次第にインシュミットは押されていった。家族の為と言われては、言い返す事が出来ないでいた。
「わかりました、わかりましたよ。そのお話、有り難くお受け致します。ですが、さすがに広すぎます。ですのでミーアに隣接する領地北部分はジル殿にお願いしたい」
「北部分ですか?」
「それはいい。バルバロッサ領地4割ほどの面積だ。ミーアと併せればちょうど同じくらいの面積になるな。」
「わかりました。インシュミットさんに無理を言った手前、受けないとは言えませんね。」
これからは亡き海の王バルバロッサ領地をインシュミット=ハイマンがその6割を、残りの4割とミーア全域をジルが領地として栄えさせていくことになった。
「新たな領主として二人共頑張ってくれ。そこでジルに、新たなる爵位と称号を授与したい。」
アルディは、神妙な面持ちになり、王の言葉使いになりジルに向け感謝の意を贈ると共に今回の働きによる授与報奨をおこなった。
「インザス共和国との戦争では、いち早く察知しインザスを退け、バルバロッサの企みに対してもただならぬ活躍をし、また古の魔法、ロストマジックを復活させローガン大公の御息女エリスを救出、妖術士ザザン=ダンを新たなる魔法で撃退し、何度も世の命を救ってくれた事を感謝する。これらの多大なる功績により、ジル=ヴァンクリフに旧ミーア国全域と旧バルバロッサ領北部の新たなる領主と認め、それを与え、爵位『辺境伯』を名乗る事を許す。そして称号『大魔法士』を共に与える事とする。他のグランベルの者達には後に褒美を贈る。これからも、その名に恥じぬ働きを期待する。」
「はっ!」
今回の騒動での働きにより、シリウスは『将軍シリウス=ヴァンクリフ大公爵』となり、ローガンは『元帥ローガン=クロムウェル大公爵』、インシュミットは『騎士総長インシュミット=ハイマン公爵』、ジルは『大魔法士ジル=ヴァンクリフ辺境伯』となったのだった。『大魔法士』の称号を与えられたジルはオズワルド王国にその人ありとまで周辺国に言われ、後にオズワルドの魔法使い。『オズの魔法使い』と後世にまで名を残すことになる。




