~最終戦~
ロッサ王国現国王バルバロッサ=ワインズマンとシガー王国前国王アルディ=オズワルドの最終戦一騎討ちが今始まった。挑発を返されたバルバロッサは逆上し、アルディに攻撃を仕掛けるが、大振りの槍撃など難なくアルディは躱しては流していく。海上戦を得意とするバルバロッサに対して地の利は明らかにアルディにあるのだがそれだけではない。金製の全身鎧を着用したのが仇になってもいる。更にアルディが持つ聖剣アイナの宝珠効果のひとつ風嵐系魔法《疾風》によりアルディ自身の素早さが底上げされている為、その状態てはバルバロッサが攻撃を何度繰り返そうともアルディに当たるわけはなかったのだ。
「息が切れているぞバルバロッサ。」
「ハァハァハァ。逃げ足だけは一人前だな。」
「こっちはまだまだ余裕なんだが。」
「やかましい!少しでも長く観客に貴様の無様な姿を見せるため、遊んでやっていたがもう止めだ!!一思いに殺してくれるわ!我が愛用の英雄級武器『渦潮の槍』。回転することにより武技を繰り出せる代物だ。かわせるものならかわしてみろ!」
バルバロッサは、両手に持つ三叉槍を頭の上でグルグルと廻し始めた。すると槍に大気が吸い寄せられ、渦を巻くように形成されていった。
だがその大気の渦は徐々にだが確実に消えていったのだった。
「ほう。これは中々、良い武器を持っているのだな。」
アルディはバルバロッサの槍を手に取り眺めていた。バルバロッサはアルディが持つ自らの愛用の槍を見て、訳が分からずにいた。何故、アルディが渦潮の槍を手に持っている?ならば今自分が回しているのは一体なんだ?そのような疑問がバルバロッサの頭の中に矢継ぎ早に巡っていく。バルバロッサは回転を止めてみたら、自らの両手には槍など何も持ってなどいなかった。
「一体、何をした!」
「何って、お前から槍を奪っただけだが。」
「奪っただと?そんなバカな!」
バルバロッサの長い講釈を垂れている間に、アルディは風嵐系魔法《疾風》による素早さ強化を最大限にし目にも止まらぬ速さで『渦潮の槍』を奪っていたのだった。アルディのあまりの速さにバルバロッサは槍の残像を振り回していただけだったのだ。
「槍が私の手にあるのが何よりの証拠だ。」
「きっ 貴様ー!!」
「今度はこちらから行くぞ。」
アルディは聖剣アイナを両手に握りしめ、顔の横に柄を持っていき、剣の切っ先は自身の後方に向け腰を少し落とした
。
「『紫電一閃』!」
アルディが繰り出した代々王家に受け継がれてきた一子相伝の固有スキル『紫電一閃』。剣に迅雷魔法を纏わせた斬撃で、腰の捻りと剣の重みで相手の肩から反対側の脇に向かい、剣を振り下ろす一撃必殺の袈裟切りだ。
「ガハァッ!」
バルバロッサはアルディの一撃に膝を着いた。だが斬られてはいなかった。金の全身鎧がバルバロッサの命を救ったのだ。剣の腕が立つ者ならば今の一撃で鎧ごと斬り伏せ決着が着いたのだろうが、まだまだ未熟なアルディの腕では金の全身鎧を看破するには至っていなかった。だからといって痛みがないわけではない。『紫電一閃』の剣撃が走った鎧の場所は大きく凹んでおり、それほどまでの衝撃だったのだ。
「終わりだ、バルバロッサ。」
「認めん!認めんぞ!!貴様のような者になど負けを認めてなるものかー!」
「認めないか…。お前に情けを掛けるつもりもない。王家転覆を目論み実行し民を窮地に陥れたのだ。死してその罪を償え。」
「ぬかせ小僧!槍さえあれば貴様なぞに…。」
「そうか…。ならば返してやる。さっさと拾え。」
アルディはバルバロッサの足元に渦潮の槍を投げ捨てた。バルバロッサは傍らに転がった愛用の槍を拾い上げ、それを杖がわりにしながら立ち上がりアルディに向け構えた。
「これで最後だ。かかってこい。」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!!!」
槍を両手でしっかりと持ち、鬼気迫る面持ちでバルバロッサはアルディに向かって突っ込むのであった。だが……。
「さらばだ、バルバロッサ。」
アルディはバルバロッサの最後の槍撃を寸でのところで躱わし後ろに回り込んだ瞬間頭部に一撃を浴びせた。バルバロッサの首は胴体を離れ宙に舞い上がり地面に落ちたと同時に胴体も崩れ落ちた。
アルディは血に濡れた剣を拭き鞘に納め何事もなかったようにジルの元へ戻っていった。
ジルの前に着いた瞬間アルディは膝の力が抜け落ち凭れるようにジルにしがみついた。ジルもまたアルディに肩を貸すのだった。
「お疲れさん、アル。」
「ははは。足に来てるなんて、まだまだだな私は。」
「そんなことはない。良い闘いだった。」
「俺たちは勝ったんだよな?」
「ああ。この闘いオズワルド王国の勝ちだ。」
闘技場内は静寂に包まれていた。やがて場内の一部や場外からは大歓声が上がっていく。アルディ=オズワルド、ジル=ヴァンクリフ、シリウス=ヴァンクリフ、グレイ=ミーア、インシュミット=ハイマンを称える拍手や喝采が沸き起こり、進行役女史も高らかに声を上げた。
「三勝一敗一分により勝者、オズワルド王国ぅーー!!」
勝利者宣言がされ改めて会場は大歓声に包まれた。だが、それに水を差す奴等が闘技場内に我が物顔で降りてくる。バルバロッサの直属の兵士や海賊、約200名。闘技場出入口は観客達が危険を感じ闘技場から慌てて出ようとし大混乱が生じていた。
「弱ったお前らを倒せばこの国は俺たち海賊のもんだ。バルバロッサには悪いが俺たちがいただくぜ。」
海賊の頭領らしき汚ならしい髭面の男が喚き散らしているが、こうなることは三回戦が終わった頃に予測しており、ジルとラゴールが前以て対策を立てておいたのだ。
「ラゴールの予想が的中したな。」
「期待を裏切らないアホばっかりだな。ちょっくら呼んでくるわ。」
ジルはラゴールに頼まれ予め闘技場を転移玉の拠点登録していたのだ。ラゴールは、転移玉を使い一度グランベルに戻り、城に待機していたラゴールの部下30名と共に再度、闘技場に現れたのだ。その中にはネロに負けた猪頭族とゼネガーに鼻を蹴られた巨躯族もいた。
「旦那、連れてきたぜ。」
ラゴールの部下達はいつでも戦えるようにすでに臨戦態勢をとっていた。闘技場内や観客席にいた全ての仲間達を集めジルは号令をかけた。
「オズワルド王国、最初の戦だ。遠慮はいらん。俺たちの恐ろしさを教えてやれ。行け。」




