~四回戦前 幕間~
ジルの魔法とリザベル、ミーシャの活躍によりバルバロッサ=ワインズマンが拉致していた空の王ローガン=クロムウェルの娘エリス=クロムウェルが救われた。バルバロッサは負けた怒りよりも、ザザンの策略を意図も容易く看破し、空の王ローガンの娘を救出したジルを是非とも手元に置きたい気持ちが勝っていた。この代表戦の行方によってバルバロッサはジルをはじめシリウス、ローガンはもちろん、ミーアの騎士やインザスの魔導師など多くの優秀な人材を手入れ、周辺の大国が一目置く一大国家を誕生させることが出来る。四回戦、ジル=ヴァンクリフとザザン=ダンの闘いは、バルバロッサの目論見にとって最も重要な闘いになるのであった。
「ザザン、あの小僧、貴様の浅知恵など簡単に拭いよったぞ。」
「我が王よ、申し訳ありません……。」
「貴様より、奴の方が一枚も二枚も上手だったな。」
「私が勝てば、問題ないでしょう…。」
「出来るのか?貴様に?」
「はい。いまからご覧に入れます。」
「ほう…。ならば、見せてみろ。勝てば此度の失態は許してやろう。だが負ければ直々に我が槍で貴様を介錯してやる。よいな。」
「はっ。」
ローガン親子の救出により三回戦は終わりを告げた。二回戦の竜王の来襲や三回戦での大公爵同士の闘いで会場は損傷していたが速やかに片付けが行われた。そして三回戦の結果と四回戦の開始の合図が進行役により、会場内に宣言されようとしていた。
「三回戦は両者、戦闘放棄により引き分けとします。よって現時点で互いの勝敗は一勝一敗一分です!」
その言葉を聞いた観衆達よりまたもいち早くラゴールが進行役の女に食って掛かっていった。
「ちょっと待てぇ女ぁー!!引き分けだと?!ふざけんじゃねぇぇぇぇぇーーー!!」
「また、あなたですか!!一体なんなのよ!!!」
「どうみても、シリウスの大旦那の勝ちだろうがー!」
「はぁーー??んなわけないでしょうが!!二人とも武器を収めてんでしょーが!!」
「アホか!お前!頭おかしいんじゃねぇのか?!」
「うっさいわね!さっき、これ以上ふざけたこと言ったら敗けにするって言ったわよね!本当にするわよ!!」
「うっ……。」
二回戦後と同じ様なやり取りをする二人を見ている観客達は、それが滑稽でいまにも笑い出しそうになっていた。幕間の賑やかしにはもってこいの余興になりつつあった。
『敗けにする』という進行役の言葉にまたしても言いくるめられ、ぐうの音も出ずに引き下がっていったラゴールに、ジルが言葉をかけた。
「ラゴール、ありがとな。けど、大丈夫だ。俺がカタをつけるから。」
「けどよ、旦那。旦那は勝てると思っちゃいるけどよ。王さんまで回っちまうけどいいのかよ?」
「ラゴール、アルディ王を心配しすぎだ。そんなに弱くはないさ。」
「なら、いいけどよ。それより、旦那。ひとつ頼まれてはくれないか?」
「ん?何をだ?」
ラゴールは小さな声でジルにある頼み事をした。万が一の事を考えての対策を立てる為らしく、ジルはラゴールからの話を聞き頷いた。
「なるほど。確かにありえるかもな。」
「だろ?用意しとくに越したことないからな。グランベルに出る前に言い伝えてあるから後は流れを見て行動するかどうかだけどな。」
「わかった準備はしておこう。だが、様子を見てから実行するかどうかだな。じゃあ、そろそろ俺の番だし、その事を敵に悟られないよう闘技場にいる、他の奴等にも知らせておいてくれよ。」
「了解だ。」
ラゴールは、元山賊大頭。戦場での乱戦を何度も経験している。だからこそ、このような時において考えられる敵の行動に対しての対策を常日頃から考えるようになっていたのだ。普段とは違い、戦場でのラゴールは脳筋ではなかったのだ。油断をすれば隙を生む事を戦いながら学んできたのだろう。
「四回戦を始めます。両陣営代表者前へ!」
悩ましき事はラゴールに任せ、ジルは準備を済まし闘技場中央へ出ていく。もちろん相手は、ザザン=ダンである。ザザンは準備万端でジルよりも先に中央で待ち構えていた。ザザンは、勝てば生き、負ければ死。運良く、生き残ればバルバロッサの手により死ぬことになるのだが、焦りや不安などなかった。ジルが本気を見せていないようにザザンもまた本気を見せていなかったのだ。
「さぁ、はじめようかジル=ヴァンクリフ。」
「そうだな、ザザン。お前とは、この闘いで決着だ。」
「我が王が惚れ込む力、品定めしてくれよう。」
「勝手に言ってろ。さっさとやるぞ。」
進行役がジルとザザンの会話が終わるのを確認し、開戦の合図を出した。
「それでは四回戦、はじめぇーー!」
その掛け声により、四回戦ジルとザザンの闘いの火蓋が切って落とされたのだ。




