~三回戦 前編~
グレイ=ミーアとルイス=ハーケンとの闘いは以外な乱入者、十大竜王が一角『紫炎竜王ファフニール』の登場により、呆気なく幕引きとなった。一回戦に引き続き二回戦もオズワルド王国の勝利に終わったかと思っていたジル達だったのだが……。
「二回戦は勝者はロッサ王国とします。よって勝敗は一勝一敗の五分になります。」
進行役の女の一言により、会場中が騒ぎ始めるよりも先にラゴールが騒ぎ始めた。
「ちょっと待て女ぁー!どう見てもこっちの勝ちだろうが?!」
「なんですかあなた!文句は受け付けませんよ!!」
「説明しろ!説明を!!」
「そんなもの、反則負けに決まってんでしょ!いきなり竜が来て殺しちゃったんだから!!」
「勝手にきた竜をどうしろってんだよ!」
「と、に、か、く、敗けは敗けです!これ以上騒ぐなら先の一勝も無しにしましょうかー?!」
「ぐっっ。」
ラゴールが、女に言い負かされている姿を初めて見たが中々新鮮な感じがした。
とにもかくにも納得しないと仕方がなく三回戦を勝つしかなく中堅戦はジルが出ようと前に出る。その矢先、シリウスに行く手を遮られた。
「ジル、次は俺が行く。」
「構いませんが、何故です?」
「ただの我が儘だ。竜王にも見初められた我が息子に父の背中を見せたくなったんでな。」
「わかりました。譲りますよ。」
「すまんな。」
シリウスは愛用する両手斧を担ぎ上げ闘技場中央に歩き、着いた途端両手斧を地面に突き立てた。観客達は陸の王が次の戦いに出ると分かった途端会場中が大きく騒ぎだした。陸の王の戦いを自分の目で見れることに興奮し高ぶっているのだ。
「さぁ、俺の相手は誰だバルバロッサ!!」
「慌てるなシリウス。間もなく来る。」
バルバロッサ=ワインズマンの後方よりジャラジャラと音を立てながら兵士に連れられ歩く人影が現れた。その者は両手を鎖に繋がれた男だった。
「お前、生きていたのか?」
無精髭を生やしたその男は、誰もが知る大公爵、空の王ローガン=クロムウェルその人であった。監禁されていたであろう、その容姿はあまりにも惨めなものだった。
バルバロッサが高笑いをしながらシリウスにむけて言い放った。
「お前の相手は、裏切り者のこいつがする。どうだ?面白い余興であろう?」
「貴様!!」
バルバロッサは、ローガンを連れて歩く兵士に、手錠の解錠と、予備の剣を渡すように命令した。
「さぁ。楽しませてもらおうか。陸の王と空の王の決闘など、簡単には見れない一戦だからな。観客達も大喜びだ。さぁ戦いの合図を出せ!」
バルバロッサの怒号に進行役の女は即座に開始の声を上げた。
「そ、それでは三回戦始め!」
合図と共に、ローガンはシリウスに詰め寄り剣を振り下ろしたが、すかさずシリウスは両手斧でそれを防いだ。
「ローガンやめろ!」
「すまん、シリウス……。仕方がないのだ…。」
二人は武器を交差し押し合いを続けながら、廻りに聞こえないような小さな声で話している。
「何があった?」
「娘が人質に取られた。俺には、家族と呼べる者は、もうあの子しかいないのだ……。」
「そう言うことか……。ジル、聞こえたな?」
『ええ。その子は、こちらで助けます。ですから戦いを出来る限り延ばして下さい。』
「わかった。頼んだ。」
戦いの前、ジルは密かにシリウスにある物を渡していたのだ。伝達ナイフの上位互換の品である、念話を誰でも利用可能にする指輪『念話指輪』。試作品の為、数は二つしか無いが、ジルが密かに作っていた新たなる道具である。
シリウスの相手だけがわからない事に嫌な予感がしたジルは、万が一の時の為に渡していたのだ。
シリウスはローガンにジルが娘を助けに動いた事を伝え、知り得る情報を全て話すようにローガンに言ったのだった。
「すまん、シリウス。」
「おい、顔をあげろ。バレてしまう。」
「あぁ……。」
「気持ちは分からんでもないが、俺達は道化を演じ戦いを長引かせなきゃならん。いいな?」
「わかった。」
シリウスとローガンはバルバロッサの前でバレたら終わりの茶番劇を演じる必要があるため、本格的だが死なない程度の戦いをする事を決めた。しかも延々とだ。
その間に、ジルはその場をこっそり抜けだし斥候に出ているゼネガー、ラベンダー、ガーネットに伝達ナイフで経緯を説明しローガンの娘を捜しだした。ローガンによると、闘技場までは共に連れてこられたらしい。最悪なことにザザンの妖術により彼女は心臓に呪いをかけられ、ローガンがバルバロッサに歯向かったりザザンが死ぬとその呪いは、作動し心臓を止める。その状態で、ローガンの娘は闘技場のどこかで捕まっている可能性が高い。時間との勝負になっていった。




